筆者: Ascend by Cirium航空アナリスト、ハーマン・チェ
2020年は、多くの課題を抱えた特別な年でした。世界最大のグローバルスポーツイベントである2020年夏季オリンピックは、新型コロナウイルス感染症の影響により延期を余儀なくされましたが、日本において364日遅れで開催され、無事に終了しました。この大会は基本的に無観客で行われたため、大会開催に伴う経済効果は期待できませんでした。開催都市である東京への経済的打撃は14億ドルに上ると言われています。当然のことながら、航空需要は当初の予想ほど高くはありませんでしたが、ほとんどの会場では無観客での開催だったとはいえ(東京以外で開催された一部の競技では、限定的に観客が入場できました)、何万人もの海外の選手、役員、サポートスタッフ、ジャーナリストが各国から日本にやってきました。このような状況下で、日本での航空需要に大きな変化はあったのでしょうか?
選手やスタッフは到着後、ホテルや選手村で隔離期間を過ごし、競技終了後48時間以内に日本を離れることになっていました。到着後の隔離機関があったため、7月上旬から到着便の座席数は増加傾向にありました。
開催中のメインイベントとなる開会式と閉会式の間に、2つのピークが見られました。このピークは、今年のゴールデンウィークに見られたものと酷似しています。
日本への到着座席数の推移
日本の航空会社全体の座席数に占める国際線の座席数の割合は、大会前および大会期間中の平均で、わずか13%でした。これは2021年6月とほぼ同じ水準でした。日本では現在も、旅行の需要があるのは主に国内旅行です。開催都市が東京であったため、東京羽田空港(HND)と成田空港(NRT)が最も利用者の多い空港であったのは自然なことです。また札幌ではサッカーや、マラソンなどが行われた影響からか新千歳空港(CTS)は、沖縄の那覇空港(OKA)、福岡空港(FUK)と関西空港(KIX)を抜いて3位にランクインしました。
日本で最も発着便数の多い空港トップ10(2021年7月15日~2021年8月14日)
間違いなく2020年は困難な年でしたが、2021年にも同じ状況は続くと考えられます。世界的に見ても、私たちは皆、このコロナ禍に対応するため、ますます複雑化する職場や家庭環境の中で、いかに創意工夫して柔軟に対応するかを学んできました。東京オリンピックは、パンデミック下で制限があったとしても、大規模なスポーツイベントを開催することが可能であることを世界に示しました。
2024年のオリンピックは、フランスのパリで(願わくは)パンデミック終了後に開催される予定です。再び多くの観客が選手に声援を送るオリンピックが見られることでしょう。競技の開催地は主にパリであり、航空券の需要は高くなることが予想されます。大会期間中の需要に対応するには、空港や飛行機のキャパシティが不足する可能性があり、お客様に移動の選択肢を提供するために、空港や航空会社は創造的なソリューションを打ち出す必要があります(例えばフライトと列車/バスの接続、二次空港への接続など)。パリ以外の都市(リール、マルセイユ、ボルドー、ナント、さらにはタヒチ)において開催が予定されている競技や関連イベントもありますし、航空会社は適切な交通網を準備・計画することができれば、このような世界的なスポーツイベントがもたらす需要の高まりから再び恩恵を受けることができるでしょう。