By Ascend by Cirium チーム
2022年が始まった今、航空業界にはこの先明るい未来が待っているだろうという希望と期待があります。パンデミックの苦境から抜け出すにつれ、市場は引き続き回復していくと考えられます。とはいえ、感染拡大しているオミクロン変異株の逆風により、危険なウイルスに対処するにあたっては何も保証ができないということを、誰もがいやというほど思い知らされていることと思います。
私たちは、国際的な渡航制限がさらに解かれていく中で、飛行機の利用を取り巻く厄介な要因が、今年には軽減されると期待しています(少なくともワクチンを接種した人にとっては)。しかし、渡航の事前要件に関する各国の協調については、本格的な進展が見られない可能性があります。
夏にはレジャー需要が大きく高まる可能性がある一方、国際線を利用した出張については、回復の見通しがはっきりしないままです。 企業が国際線を利用した出張を許可したとしても、その予算は2019年の水準を大きく下回るでしょう。ロードファクター(有償座席利用率)については、格安航空会社が牽引して引き続き改善すると考えられます。今年のロードファクターは、2019年の水準と比べて2~3パーセンテージポイント差の範囲内に収まる見通しです。
各航空会社は今後、路線網の回復という課題に取り組むなかで、環境面の圧力の高まりにも直面することになります。そのため、多くの航空会社が、二酸化炭素(CO2)の排出レベルの追跡について、数値目標を打ち出すと思われます。今年後半に開かれるICAO(国際民間航空機関)の第41回総会では、意義ある合意の達成に向けて、大きな重圧がかけられることになるでしょう。
世界のGDP(国内総生産)の伸び率は、2022年には4%ほどになるとみられます。インフレ圧力は少しずつ弱まり、サプライチェーンが回復してくる見込みです。私たちの現在の基本的な回復シナリオでは、世界のRPK(有償旅客キロ)は2022年に50%弱になると予測しています。同年末までにはすべての主要国内市場が2019年の水準に達する見込みで、ヨーロッパ域内(国際)市場もそれにごく近い状況になると考えられます。
しかし、長距離の太平洋横断およびヨーロッパ~アジア間市場の回復は遅れるでしょう。これらの市場が十分に回復するまでは、旅客機貨物室キャパシティの継続的な不足により、現在の貨物輸送機に対する高い需要も維持されるとみられます。
機材製造の観点で言うと、今年はエアバスとボーイングの計1,450機の機材が納入される見込みです。これは、2021年と比べると50%高い数字です。とはいえ、昨年のように、この機材総数は最終的に、737Maxの納入率と、ボーイングが在庫滞留分の機材を十分に捌けるかどうかにかかっています。787の納入の早期再開も、非常に重要な要素です。
Eコマースに牽引された貨物コンバージョンのブームは、短期的には続く見込みで、今年は再び記録を更新しそうです。2022年は、提案されている777Xの貨物機バージョンが市場に投入される可能性があります。
運航オペレーションの観点で言うと、航空各社は今年、自社フリートの1日当たりの利用率を向上させ、2019年の水準との差を5~10%の範囲内に収めるとみられます。稼働中のシングルアイル機の数は、2022年上半期中に2019年の水準を超えるでしょう。大型ツインアイル旅客機市場の回復がなお遅れている一方、今年末までには100機超のA380が現役に戻る見込みで、A330と777-300ERの保管数も減少しそうです。
昨年は減少傾向だったオペレーティングリース部門の市場シェアは、2022年には再び少しずつ増え始めると予測されます(2020年のシェアの伸び率は前年比で2.1ポイント増だったのに対し、2021年はわずか0.2ポイント増でした)。企業合併のトレンドは今年も継続し、GECAS、Goshawk、AMCKに続く合併・買収案件が見込まれます。その際、より小規模な企業は市場から退場することになるでしょう。
取引可能な中古機材の在庫は、2022年には安定する可能性が高くなります。フリートの回復が進んで活用が増大し、オーナーがより多くの機材をパーツアウトできるようになることで、使用可能な中古の材料やスペアエンジンに対する需要が拡大するためです。
市場価値の点から言えば、シングルアイルタイプの機材の価値は、2021年には底を打ちました。その一部の価値は既に回復し始めており、今年はさらに上昇に向かうと期待されます。シングルアイルタイプの貨物機のコンバージョン市場、そしてフィードストック(供給材料)となる旅客機の取引も同様に、引き続き好調を維持する見込みです。機齢中期および後期のシングルアイル機における初期の価値回復の一つの牽引役は、スペアエンジンの需要増だった可能性があります。この需要増は、MROが最大のキャパシティに達し、結果としてパーツアウト活動が増大したことによるものです。
ツインアイル機カテゴリーは、今年も価値がいっそう減少する可能性があります。在庫が依然として非常に高い水準で、需要も低迷しているためです。今年下半期、ひょっとするとそれ以降までは、ツインアイル機のリース料が改善する見込みはありません。ツインアイルの価値やリース料が回復するには、アジア太平洋地域の渡航制限が緩和され、長距離路線網の再開が可能になることが極めて重要です。
地域航空の機材価値とリース料は、過剰在庫があてがわれるため、引き続き回復する見込みです。しかし、一部の機材タイプの在庫水準が非常に高くなっていることから、その回復の歩みは遅いものとなるでしょう。
というわけで、初期の兆候を概観すると、2022年は期待できる年になりそうです。とはいえ、新型コロナウイルスの新たな変異株が現れて、市況の回復に影響を与える可能性はなお否定できません。
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