世界で最も長い航空路線は?
ニューヨークとシンガポールの間を飛行機で移動するのであれば、本を持っていくとよいでしょう。とても長い本を。
米JFK空港とシンガポールのチャンギ空港を結ぶシンガポール航空のフライトの運航距離は9,487マイルあり、現在のところ世界最長の路線となっています。機材は超長距離路線用のA350-900を使用しており、所要時間は約19時間です。
このように長い距離を飛行機で移動することは、最近ではそれほど珍しいことではありません。世界中のすべての定期便を対象としたCiriumの「Diio」のデータベースによると、運航距離8,000マイルを超える路線は、2019年までに30路線に達しました。この30路線のうち、シンガポール航空が運航していたのは4路線です。具体的にはニューアーク、ロサンゼルス、サンフランシスコ、シアトル行きの4路線でした(2019年の時点では、ニューヨークJFK路線はまだ就航していませんでした)。パース―ロンドン線、ドバイ―オークランド線、ドーハ―オークランド線など、オーストラリアとニュージーランドの発着路線がランクインしているのが目立っています。北米の航空会社が運航する直行便の中では、ユナイテッド航空のヒューストン―シドニー線が最長でした。一般的に、超長距離フライトは香港、ASEAN諸国、オーストラリア、ニュージーランドを含む地域と最も関連性が高くなっています。
2015年には、航空会社が運航する8,000マイル超の路線は、わずか17路線でした。その5年前は、10路線しかありませんでした。さらにその5年前(2005年)は6路線しかなく、いずれもシンガポール、バンコク、香港のいずれかの国・地域の発着路線でした。
超長距離フライトの増加には、さまざまな要因があります。一つは航空機メーカーの技術です。エアバスやボーイングは今、経済性の面で魅力のある長距離用機材を継続的に発表しています。こうした機材には、ボーイングB787ドリームライナー(2014年就航)、エアバスA350(2015年就航)などがあります。超長距離便が増加するその他の理由としては、経済成長、市場の規制緩和、グローバル化の進展、新しい大陸間路線をサポートできるハブ空港と機材フリートを有する中東の航空会社の台頭などが挙げられます。
旅行需要がパンデミックから回復してきた今、状況はどうなっているしょうか。今年7~9月期において、航空会社が運航する8,000マイル以上の路線は22路線で、2019年同期の30路線からは減少しています。例えば、ドーハ―オークランド線は運航が停止されています。ドバイ―オークランド線も同様に停止されました。ヒューストン―シドニー線も今はなくなり、ユナイテッドのサンフランシスコ―シンガポール間の直行便が現在、最も長い北米路線となっています。今年新たに就航した8,000マイル超の直行便は、前述のシンガポール航空のJFK便に、ドーハ―サンフランシスコ線(カタール航空)、パース―ローマ線(カンタス航空)、オークランド―JFK線(ニュージーランド航空が9月に運航開始)を加えた計4路線です。
では、超長距離路線の便数は、パンデミック前の成長軌道に戻るのでしょうか?超長距離用のA350-1000を使用するカンタス航空の「プロジェクト・サンライズ」のような各社の取り組みを考慮すれば、その答えは「イエス」のようです。一方、ボーイングも、B787-10型機の航続距離の延長に意欲的なようです。もちろん、こうした動きは今後の燃料価格にも大きく左右されます。燃料が安くなればなるほど、超長距離フライトの魅力は増していくでしょう。
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