筆者:Tim Chun-Hing Li, Aviation analyst, Ascend by Cirium
Ascend by Ciriumは今年4月、Advanced Air Mobility(先進航空モビリティ)とElectric Aircraft Sector Datasets(電動航空機セクターデータセット)の提供を開始しました。私たちは過去5ヵ月間、19の異なるAAMメーカーに対して持ちかけられた、あらゆる顧客からの6700件以上の非拘束的なコミットメント(商談)を記録してきました。
eVTOL
電動垂直離着陸機(eVTOL)分野のタイプ別のコミットメントは下表のとおりです。
これらの発注は、合計48の顧客からのものです。EVE Air Mobility社の「EVE」とVertical Aerospace社の「VX4」という競合2社の機材が、依然として市場を独占しています。EVEは少なくとも19の顧客から2300件のコミットメント、Verticalは10の顧客から1500件のコミットメントを獲得しています。注目すべきは、Verticalがステージ4の本格的な試験飛行(テザーホバリング)を終えたばかりで、一方のEVEはまだ本格的な試験飛行も、本格的なプロトタイプの公開も行っていないことです。
このeVTOLセクターはまだ初期の開発段階にあるため、どのOEMが最終的に認証済みのeVTOL航空機を提供できるか、完全な確証が持てない状況です。ましてや、どのOEMが他より抜きん出ることができるかについて、誰も確信することはできません。一つのOEMに注文を集中させるのではなく、複数のOEMにオーダーブック(注文控え帳)を分散させている顧客も存在します。
最も顕著な動きとしては、最近発表されたユナイテッド航空によるEVEへの1500万ドルの投資と、200機の条件付き購入契約および200機のオプション(予備発注)契約です。その一方でユナイテッド航空は、200機のArcher(アーチャー)社製eVTOLの発注について1000万ドルの納入前支払いを行い、同社製eVTOLへのより一層の信頼度を示しました。この2機のeVTOLは、いずれもLift + Cruise(リフト・クルーズ)の構成で、1人のパイロットと4人の乗客を乗せることができ、自律走行が可能な設計になっています。同じく複数のOEMに発注している英Bristowや日本航空と比べると、これら3社の企業が投資するeVTOLの推進技術や座席構成はあまり似ていません。
Type | Market Grouping | Propulsion | Pax Capacity |
---|---|---|---|
ALIA-250 | eVTOL | Lift + Cruise, Propellers | 6+1 |
Archer | eVTOL | Lift + Cruise, Propellers | 4+1 |
Butterfly | eVTOL | Vector Thrust, Propellers | 4+1 |
Eve | eVTOL | Lift + Cruise, Propellers | 4+1 |
Lilium Jet | eVTOL | Vector Thrust, Jets | 6+1 |
VX4 | eVTOL | Vector Thrust, Propellers | 4+1 |
Volocity | eVTOL | Multi-rotors | 2+1 |
つまり、これらの企業は、AAMの未来を担うという強い意志を持った顧客だということを示唆しています。そして、ある種の波及効果として、そうした発注の多様化に追随する顧客が増えるかもしれません。
ビジネス・リージョナル電動航空機
Heart Aerospaceはこのほど、ES-30を発売(ローンチ)したこと、そしてエア・カナダから30機のコミットメントがあったことを発表しました。この機種は乗客30人乗り、航続距離400kmで、SAF方式の電源を使用すると最大800kmの飛行が可能です。ES-19のコミットメントの多くが、純粋な電気推進ではなく、ハイブリッド推進を採用したこの大型の新機種に変更されました。結果としてこの新機種のコミットメントは426件となっており、他をリードしています。
Ascend by Cirium AAMチームは、今後も市場に関する価値の高い洞察的知見を提供していきます。ご意見、ご感想などがございましたら、お気軽に当社までお問い合わせください。