- 世界の航空会社グループの純損失がさらに2021年に420億ドル、2022年上半期に150億ドル拡大
- 米国の航空業界は2022年に黒字化すると見込まれており、デルタ航空は2022年上半期のランキングで首位を奪還
- 中国は、新型コロナウイルスのロックダウンが運航量に打撃を与えて損失が悪化し、アジア太平洋地域全体の回復が減速
ロンドン — Ciriumが2021年および2022年上半期における世界の航空会社グループの業績ランキングの結果を分析したところ、新型コロナウイルスのパンデミックが始まってからの2年半で、航空会社の収益が急減し、2200億ドル近い純損失につながったことが分かりました。
このランキングで、パンデミックによる被害の全容が明らかになっています。世界の航空会社グループの収益は2020年に50%以上減少し、その後やや回復したものの、2021年末はパンデミック前の水準よりも40%以上減少しています。2021年の5000億ドルという収益は、15年前よりも低い水準のままです。
航空会社のほとんどが2022年上半期の業績を発表しており、深刻な危機から脱した兆しが見られる一方、業界全体では2022年通期で再び損失が出る見通しです。
Ciriumのジェレミー・ボーウェン最高経営責任者(CEO)は、次のように述べています。「純損失が前年比で減少していることは、よい兆候です。収益の減少により、純損失が2020年は1600億ドル、昨年は420億ドルでした。今年の上半期の純損失は、総額が約150億ドルになっています。」
「今年の損失額に大幅な追加がなければ、2020年に入ってからの航空業界全体の損失は約2200億ドルになります。2022年下半期以降、航空業界に大きな損失を引き起こすような要因がなければ、欧米の航空会社グループのけん引により、損益分岐点に達する可能性があります。」
世界中で需要が回復基調にあるため、2022年上半期の世界の収益は前年同期比70%増加、2019年の20%以内達しています。
今回のランキングでは、2022年上半期は北米の航空会社が最も力強い進展を見せており、パンデミック前の水準と比べて5%増加し、小さいながらも営業利益を上げていることが分かっています。
デルタ航空は今年、収益ランキングで首位に返り咲き、収益は事実上、パンデミック前の水準に回復しました。フェデラル エクスプレス(FedEx)の航空貨物事業は、PPE(個人用防護具)とeコマースの需要急増がけん引する堅調な世界航空貨物市場のおかげで、パンデミックの期間中はトップについていましたが、2022年上半期は僅差で2位に順位を落としました。
9月期の決算速報では、米国の大手航空会社6社が今年9カ月間に、過去最高の収益と全体的な純利益を計上しています。この傾向が継続すれば、業界は通年で若干の利益を計上できることになります。
ルフトハンザのような欧州の大手航空会社グループも、上半期の収益が堅調に回復しています。これは、2022年初めに旅行規制が解除され、乗客の需要が引き出されたことによるものです。
西欧における運航量は今年の半ば以降、パンデミック前の約95%の水準で推移しており、収益を押し上げるとともに、最大手のグループは9月期に黒字に転じています。
対照的に、アジア太平洋地域は、主に中国でコロナウイルスのロックダウンが継続したことにより、苦戦を強いられました。中国の航空会社は、2022年上半期に収益が35%減少して純損失が約100億ドルに達し、過去2年のいずれの年よりも高い水準となりました。今年の下半期までの業績をみると、その赤字に拍車がかかる可能性があります。業界でみると、中国の赤字は中国以外の地域の航空会社によってある程度相殺される見通しですが、現在の業績では中国の赤字を補うには不十分だと思われます。
業界が通年の純損失を100~150億ドル程度に抑えることができたとしても、それは9.11テロの後に危機的状況にあった業界の20年前の年間損失額と同程度であることに留意すべきでしょう。
Ciriumの2021年および2022年上半期における世界の航空会社グループの業績ランキングは、Cirium Dashboardで入手可能なプレミアム分析です。
レポートの要点は以下の通りです。
- 2022年1~6月の収益(100万ドル)上位25航空会社グループ
- 2021年の収益(100万ドル)上位100航空会社グループ
- 2022年1~6月期の地域別航空会社グループ財務業績(10億ドル)
- 2022年1~6月期の地域別旅客数
- 地域別および航空会社種類別の航空会社グループ財務業績(10億ドル)
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