- 世界では今後、旅客輸送量の年間3.6%の予測増加率に見合った機材数が納入され、現在稼働している高機齢の非効率な機種に取って代わる見込み
- 2041年までの旅客機納入の70%をシングルアイルジェット機が占める見込み
- 中国の旅客フリートは年率で過去最高の4.5%の伸びとなり、世界の納入機数におけるシェアは19%に達すると予測される
- 2041年までには、現在の旅客フリートの88%が旅客サービスから退役となる
- 今後20年間に、計3,650機以上の貨物専用機が供給されると予測される
2023年1月24日、ロンドン(イギリス):航空データ分析大手Ciriumの最新レポート「Cirium Fleet Forecast」では、今後20年間に世界中で約44,500機の機材(2兆9,000億米ドル相当)が新たに必要になると予測されています。
Ciriumのコンサルタント部門であるAscend by Ciriumが発表したこの予測は、今後20年間の世界の旅客機と貨物機の市場について独自の見解を示したものです。
これは、航空業界と新型コロナウイルスのパンデミックからの復活に関する勇気づけられる長期予測を再確認するものであり、今後20年間の納入機数は、世界的に1年前の予測より1%減少する程度であると予測しています。
ロシアのウクライナ侵攻、中国の渡航制限、エネルギーコストの上昇などが2022年の影響要因として浮上しているにもかかわらず、こうした前向きな見通しが出されているのです。
2020年初頭のパンデミックによる危機からの航空業界の回復ぶりは、地域によってばらつきがあるものの、全体としては極めて顕著になってきています。世界の航空輸送は、今年10月には2019年の水準に達すると予測されています。
Ascend by Cirium グローバルコンサルタント統括のRob Morrisは、次のように述べています。「最新のCirium Fleet Forecastでは、航空業界が長期的に堅調に推移するとの見通しが示されています。この業界は構造的な変化の最中にありますが、2025年までに従来の成長軌道に戻るという方向性を維持しています。」
「私たちは、これから旅客フリートは年率3.6%のペースで増加し、2041年末には47,700機に達すると予測しています。つまり、増加する旅客輸送量に対処するため、世界の旅客フリートは現在より約22,000機増やす必要があります」
「これらの新しい機材は、航空旅客需要に対応するためだけでなく、効率性の低い旧世代の機材を置き換えるためにも必要です」
アジアが新規納入機数の40%以上を占めるようになる
アジア太平洋地域は中国に牽引され、引き続き新規納入機数の点で主要な成長地域となっています。中国は、旅客輸送量の年間増加率が世界最高の6%以上となり、2041年には全納入機数の19%を占めると予想されています。これはアジア太平洋地域の国々の中で最も高い数字です(中国を除く同地域の合計のシェアは22%)。
北米とヨーロッパの航空会社の納入機数は、それぞれ21%と17%のシェアを占めると予測されています。中東の航空会社は全納入機数の7%を占める見込みです。高額なツインアイル機の納入が多いため、金額ベースでは14%を占めることになります。
この予測では、ロシアの座席キャパシティおよび輸送量は短期的に減少するとみられています。ロシア・CISの輸送量は、ウクライナの民間航空事業の完全停止を加味すると、2024年に2019年の70%の水準で安定すると予測されています。
シングルアイル機の需要がフリート増加を牽引する
2022年11月末時点で、シングルアイル機の数は2019年比2%以内の差異に収まっている一方で、ツインアイル機は依然として20%減となっています。長距離路線の回復が遅れているため、ツインアイル機は年率3.2%で伸びるのに対し、シングルアイル機の伸びは3.7%となり、より迅速に成長する見込みです。リージョナル機の数は年率1.1%で緩やかに増加しますが、ターボプロップ機の数はリージョナルセクターの中でもより速いペースで増加すると予想されています。
長期的な輸送量の増加により、世界の旅客フリートは約22,000機増やす必要があり(年間成長率で3.1%増に相当)、結果として2041年末の保有機数は約47,700機になると予想されています。
現役の旅客フリートの数が2019年の水準に戻る時期は2023年半ばになると予想されているため、実質的には最大4年間にわたって「平時の」機数の伸びを達成できないことになります。
エアバスとボーイングは、2041年まで両社合わせて全納入機材の80%、金額ベースで88%を供給すると見込まれており、民間航空機の2大メーカーであり続けるとみられます。しかし、他のOEMや新規プログラムに対する需要も3,600億米ドルあります。
高機齢で効率が悪い機材タイプのリプレース圧力が高まる
今後20年間に、現在の旅客フリートの88%近くが旅客サービスから退役すると予測されています。貨物専用機は旅客機と比べて経済的耐用年数が長く、2041年までに現在の貨物フリートの約70%が退役する見込みです。
全体的には、2021年末時点の旅客フリートのうち約19,000機が退役し、さらに貨物専用機への改造(コンバージョン)により、2,500機の旅客専用機が旅客フリートから退去することになります。
より環境に優しい機材への切り替えの圧力が高まる中、効率の悪い旧世代タイプの機材を置き換えることは、フリートプランニングの点で今後ますます重要な要素となっていきます。新型コロナウイルスのパンデミックによる危機から、比較的低い機齢の機材が段階的に退役する一方で、旧型の機材は最終的にスクラップになるまで駐機・保管される可能性があります。
貨物機ブームは続くが、長く持続しない可能性も
2019年比で、貨物輸送キャパシティ(有効貨物トンキロ=ATK)は年率3.0%増、貨物輸送量(有償貨物トンキロ=FTK)は同3.7%増になると予測されています。この予測では、今後20年間で約3,560機の貨物機が供給されるとしており、そのうち1,060機は1,300億米ドル相当の新造機(シェア30%)、2,480機は旅客機からコンバージョンされた改造機(同70%)となっています。
これらの数量と分析傾向は、前回の予測時と似ています。短期的な旅客機下部貨物室(ベリー)のキャパシティの減少、電子商取引の増大、機材のフィードストック(供給材料)の供給力増大など、新型コロナウイルスのパンデミックによる航空貨物市場の動向に誘発されたコンバージョンの短期的なブームが、依然として続いていることが反映されています。現在のコンバージョンのブームは長続きしないかもしれませんが、効率性の低い旧型機の置き換えを後押ししています。
Cirium Fleet Forecastのエグゼクティブサマリーは、こちらからダウンロードできます。
さらなる詳細情報については、こちらのFleet Forecastページからご覧いただけます。当社にご連絡いただければ、レポートの完全版をお送りすることも可能です。
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