筆者:Mike Malik, Chief Marketing Officer at Cirium
新年を迎えた航空業界は、キャパシティ水準の回復への道を歩み続けており、今年は非常に重要な年となることが予想されます。今年第1四半期に公表されたフライトスケジュールで明確になった、2023年に注目すべき10の重要なキャパシティトレンドについて検証してみましょう。ここで示されている洞察的知見は、航空会社向けプランニングシステムDiio by Ciriumから入手した、2023年1月2日時点の運航スケジュールデータに基づいています(スケジュールは変更される可能性があります)。
1.アメリカではリージョナル機のフライトが減少
2023年の幕開けとなる第1四半期、アメリカの航空会社は、座席数ベースで2019年第1四半期より3%多い国内便を運航する予定です。ただし、運航便数ベースでは10%減となります。これについては、600マイル未満の路線のフライトが17%減少したことに象徴されるように、地域運航便(リージョナルフライト)の大幅減が主な要因となっています。また、出発便1便あたりの平均座席数を見れば、中核航空会社(メインライン)が運航する主軸路線への依存度が高まっていることがわかります。その数字は、2019年第1四半期には167席でした。今四半期は177席に増えています。
2.東アジアは回復途上だが、状況に変化も
東アジアでは、長距離便が大幅に減少しています。3,000マイル以上の路線に目を向けると、今年第1四半期の東アジアの空港からのフライト数は、2019年同期比41%減となっています。この数字には、大幅なスケジュール変更が予想される中国の突然の再開の影響も一部あります。実際、2023年第1四半期の中国の運航スケジュールを見ると、出国、入国の座席キャパシティともに、2022年同期と比較して2倍以上に増えてはいるものの、いずれもパンデミック前の水準からは約82%も低くなっています。日本からの長距離便も、パンデミック前の水準と比較すると、やはり大幅に減少(29%減)しています。同様に韓国は14%減、シンガポールは9%減となっています。
3.イギリスでは、ヒースローの実績が完全な回復に近づいている
パンデミック前にヨーロッパで最も利用者数の多かったロンドン・ヒースロー空港は、フライトの運航状況の点で完全な回復に近づきつつあります。今年第1四半期の座席数は現在、2019年同期から5%程度の減少となっています。この減少幅は、ロンドンのスタンステッド空港やルートン空港とほぼ同じです。一方、同じくロンドンにあるガトウィック空港の今年第1四半期の座席数は、2019年同期と比べて17%減少しています。
4.ヨーロッパの空港は、2019年と比較してなお低調
西ヨーロッパの主要ハブ空港はすべて、4年前と比べるとまだ利用が少ない状況です。パリ・ドゴール空港の座席数は13%減っています。アムステルダムは17%減です。フランクフルトの減少率は23%となっています。予定座席数ベースでみて、2019年よりも現在の方が利用が多くなっている西ヨーロッパ最大の空港市場は、リスボンです。リスボン空港の今年第1四半期の予定座席数は、2019年同期比で12%増となっています。このほか、ダブリン、パリ・オルリー、アテネ、マラガなどの各空港も顕著に増加しています。しかし、これらは例外であり、ヨーロッパの大半の主要空港は、まだキャパシティがパンデミック前の水準にまで回復していません。
5.独フランクフルトの飛行機利用減の要因
なぜ、フランクフルトは座席数ベースで23%も急減したのでしょうか?その理由のひとつは、ライアンエアー、イージージェット、ウィズエアーといった代表的な格安航空会社(LCC)数社が、同市内の主要空港から撤退したことにあります。中国国際航空とアエロフロートも、フランクフルトへの定期便運航を停止しました。破産したSAS(スカンジナビア航空)は、フランクフルトへの運航便を大幅に削減しました。しかし、最も重要なのは、ルフトハンザ・グループが今四半期、予定座席数ベースで、パンデミック前よりも運航便を27%減らすことです。たまたまドイツは、レジャー市場が最も好調な時期、非常に活発な市場でもありました。ルフトハンザとその子会社も、回復が遅れているアジア市場に対するエクスポージャー(感応度、露出度)が高くなっています。ウクライナ紛争の前も、ロシアに対するエクスポージャーがかなり高くなっていました。
6.トルコは成長とキャパシティ面で好調
ここで西ヨーロッパの状況と、イスタンブールで起きていることを比較してみましょう。トルコ最大の航空市場であるイスタンブールは今、ブームに沸いています。市内の主力空港は今年第1四半期、予定座席数ベースで2019年同期比11%増となっています。イスタンブール第2の空港の座席数は、同2%増となっています。さらに印象的なのは、フライトの輸送距離も考慮した座席キロベースでの伸びです。このイスタンブールの2空港では、2019年以降の長距離便の増加を反映し、有効座席キロ(ASK)の伸び率が20%を超えています。この市場に恩恵をもたらしたのは、ターキッシュ・エアラインズやペガサス航空の成長、トルコの大規模な観光セクター、そしてロシアとの経済面での関係強化に伴うメリットです。
7.インドのキャパシティは、概ね2019年の水準まで回復
インドの航空市場は、ほぼ4年前の状態に戻っています。今年第1四半期の座席数は2019年同期比1%増、フライト数は同1%減となっています。国内線だけを見ても、その座席数は5%増となっており、少し上向きになっています。インド国内市場を支配する(全座席数の半分以上を占める)インディゴ(IndiGo)は今四半期、座席キャパシティを2019年の水準より31%増やそうとしています。対照的に、エアインディアやスパイスジェットといったライバル航空会社は、キャパシティを大幅に減らしています。また、2019年には有力航空会社だったジェットエアウェイズの消滅も、今回の座席数データに影響を与えています。
8.南半球の回復状況は、今のところまだら模様
南半球全体を見渡すと、中南米が力強い回復ぶりを見せており、今年第1四半期の座席数は2019年同期から7%増加していますが、フライト数は4%少なくなっています。アフリカ発着便の座席数は2%増加し、フライト数も3%増となっています。オーストラリアとニュージーランドの状況はあまり芳しくありません。両国合わせて座席数で16%、フライト数で8%減少しています。これらの国の市場はかつて、香港のような回復が遅れているアジア市場に対して、高い運航サービス水準を保っていました。
9.中東では座席数は減少しているが、LCCが成長傾向
流動性の高い中東の航空市場は、パンデミック危機からまだ回復していません。この地域の座席数は、いまだ約4%減で推移しています。その主な要因は、エミレーツ航空、カタール航空、エティハド航空を中心とした湾岸諸国の主要航空会社が、2桁のキャパシティ縮小を行ったことです。いずれも、香港や上海といったアジアのハブ空港に対するエクスポージャーに影響を受けています。一方、フライドバイ(FlyDubai)、サウディア(Saudia)の子会社フライアディール(Flyadeal)、ヨーロッパのウィズエアー、インドのインディゴを筆頭に、中東全域で国内外の格安航空会社が著しく成長しています。
10.世界で最も利用者の多い空港にさまざまな成功例
今四半期、座席数ベースにおいて世界で最も利用の多い100空港のうち、2019年第1四半期と比較した伸び率が最高となっているのはオースティンです。その座席数は49%増で、驚異的な成長ぶりを示しています。このオースティンに次いで、カンクン、カイロ、ボゴタ、デンバー、ラスベガスの各空港が上位に入っています。他方、最下位となっているのは香港で、その予定座席数はパンデミック前と比較してなお63%も少なくなっています。アジア以外では、ミュンヘンが世界の上位100空港の中で最も急落(30%減)しています。
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