筆者:Tony Brooks, Senior valuations analyst
今回は、航空会社や航空貨物の世界でますます増えているコードシェアリングとインターライニングという興味深いテーマについて、簡単に見解を述べたいと思います。世界的な高インフレと高金利の両方に起因するコスト上昇という厳しい時代を迎える中で、コードシェアリングの重要性が高まっているのかどうか、また、運航会社(オペレーター)の資産クラスの規模がパートナーシップの決定的要因となるのかどうか。そんな問いについて考えてみます。
航空会社はコードシェアリングにより、自社が運航していない目的地への航空券を販売することができるため、旅客便や貨物便の路線の選択肢も広げることができます。
しかし、オペレーターにとって重要なのは、機材の購入やリース、乗務員の育成、駐機料などのコストをかけずに、新しい路線にアクセスできるというメリットです。インフレと高金利が航空業界にとってより大きな負担となりつつある今、これは特に魅力的なことです。航空機メーカー、リース会社ともにここ数年来、かつてないほどのコストの上昇に見舞われており、オペレーター各社は、規模の経済性の追求を通じたコスト節減が急務となっています。
そのような環境下、オペレーターが短・中期的なフリートや路線の構成を再考していることは間違いありません。他の航空会社との提携は、その解決策の一つなのです。
2023年第1四半期から現在に至るまで、Cirium Dashboardのニュースに目を通すだけで、以下のように新しく潜在力のあるコードシェア提携の契約が相次いでいる状況を確認することができます。
- エア・カナダ・カーゴ(Air Canada Cargo)とエミレーツ・スカイカーゴ(Emirates SkyCargo)が契約を締結し、両社が保有する旅客機のベリーホールド(機材の下部貨物室)を互いに利用できるようになった。
- 新たなスタートアップのオペレーターであるカナダ・ジェットラインズ(Canada Jetlines)は、契約締結についてカタール航空と協議を進めている。
- ブリティッシュ・エアウェイズが南アフリカのエアリンク(S.A. Airlink)とコードシェア提携を開始した。
- エア・セルビア(Air Serbia)は、中国国際航空との契約を更新、延長した。
これらは、昨年の50件以上の契約締結に引き続いて表面化した動きです。
興味深いのは、こうした提携契約は、ワイドボディ機フリートを保有するオペレーターが、短距離向けのナローボディ機フリートを保有するオペレーターと結ぶ(もちろん、その逆も含めて)ケースが多くなっていることです。 上記の2023年第1四半期における数々の旅客輸送のパートナーシップ契約が、そのような傾向を裏付けています。
このように、現在はコードシェアリングにまつわる多くの活動が世界各地で進行しており、今後さらに活発化することが予想されます。提携により、増収増益に寄与することが期待できるのです。
ではここで、オーストラリアの地域航空会社(リージョナルキャリア)であるリージョナル・エクスプレス(REX)の成功事例を簡単に紹介しましょう。これは、今の資産クラスのトレンドを一層浮き彫りにするものです。REXは、自社路線へのボーイング737-800の大規模な導入に既に成功しており、現在はATRと共に、ターボプロップ機のリプレース(置換)のプログラムを開始しています。また、昨年10月に発効したデルタ航空とのインターライン提携により、REX、デルタの各乗客が両社の互いのフライトを継ぎ目なく乗り継ぐことができるようになったことも、大きな魅力となっています。北米の大手航空会社が、REXのような比較的小規模なオペレーターと手を組むようになるとは、誰が想像したでしょうか。そのような事態が実際に起きているのです。REXの事業は驚異的なスピードで拡大しており、Cirium Dashboardによると、通期で好調に黒字を計上する見込みであることも確認されています。
これから2023年の半ば、後半に向けて、より多くのパートナーシップが生まれることが予想されます。
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