筆者:Henk Ombelet, Head of Advisory Operations at Ascend by Cirium
今週、航空業界とサステナビリティ(持続可能性)に関する2つの報告書が公開されました。
まず一つ目、コンサルティング会社CE Delftが行った調査は、Ciriumのフライト追跡データを使用して、ヨーロッパにおけるプライベート航空セクター(プライベートジェット輸送など)の規模を測定したものです。同社は2020年、2021年、2022年のデータを調べた結果、おそらく誰もが想像できるように、この3年の期間にプライベート航空輸送が大幅に成長を遂げたと結論付けています。この調査は、2020年を基準年としているのが残念な点です。というのも、これでは非常に高い成長率が、(商用航空部門が実際にそうであったように)新型コロナウイルスのパンデミック後の回復ぶりによってもたらされたことが明白となり、そのため成長を疑う人々に対して調査結果を軽視する口実を与えることになってしまうからです。
ヨーロッパビジネス航空協会(EBAA)が案の定、この点を指摘しました。CE Delftの数値は不正確であり、ビジネス航空部門は2019年から2022年にかけて7%しか成長しておらず、いずれにせよ同部門は民間航空輸送全体の0.04%しか占めていないと述べたのです。CE Delftが使用している数字は、確かに間違ってはいないのですが、少し誤解を招くかもしれません。それでも、EBAAが引用している0.04%という数字は、まさに誤解を招くものです。どちらのケースでも、イギリスの政治家ベンジャミン・ディズレーリの有名な言葉、「世の中には3つの嘘がある。嘘、大嘘、そして統計だ」が証明されています。
CE Delftによるプライベート航空のCO2排出量データと、Ciriumによる商用航空用の排出量算出手法を使用すると、イギリスからヨーロッパ(ヨーロッパ域内におけるプライベート航空輸送の最大の単一市場)へのプライベート航空輸送は、イギリスからヨーロッパへのフライトの航空関連のCO2総排出量の5.6%以上を占めていることが判明します(いずれも英国国内便を含む)。特にプライベート航空輸送が全乗客の0.7%しか占めていないことを考えると、これは相当な数字です。そして、2019年からの7%の成長は、2050年までの排出量実質ゼロの目標に対しては、間違った方向への7%となります。
2つ目の報告書は、米国政府説明責任局(GAO)によるもので、航空業界が長年にわたって掲げてきた持続可能性の目標について、すべてとは言わないまでも、そのほとんどを達成できていないことを強調した内容となっています。この報告書は、2022年6月にグリーンピースが行った、航空業界のいわゆる「グリーンウォッシュ」を非難する内容の調査に続いて発行されました。
さて、今週最後のサステナビリティ関連のニュースは、アムステルダムのスキポール空港から発信されました。同空港は、2025年から夜間飛行を禁止し、今後は滑走路を増設せず、騒音の大きい航空機(ボーイング747を含む)、そしてプライベートジェット機の空港使用を禁止すると一方的に発表しました。オランダ政府は公約として、同空港における発着便数を削減する目標を掲げてきました。現在はオランダの裁判所でその是非について係争中ではありますが、この削減目標に加えて、今回の使用禁止などの発表が行われたのです。
スキポール空港グループの暫定CEOであるRuud Sondag氏は、レリスタット空港などのビジネス航空向けの代替空港案も準備していないと述べました。同氏は「ロンドン、パリ、ジュネーブといったビジネス都市には、商用航空の定期便で容易に行くことができる」としています。同氏は言及しませんでしたが、ロンドンやパリの場合は高速鉄道で行くこともできます。明らかに、彼は顧客を完全には失いたくないのです。
これらのニュースそれぞれを見ると、航空業界の進むべき方向は明確です。業界が持続可能な目標に向かって、自ら継続的かつ顕著な進歩を示さなければ、外部から規制を課されることになるでしょう。好むと好まざるとにかかわらず、それは避けられないのです。
Henk Ombelet, Head of Advisory Operations at Ascend by Cirium
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