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Ascend Consultancy, 業界予測, 航空専門家の視点

先進航空モビリティ – 2023年5月の寸評

May 29, 2023

先進航空モビリティ(AAM)市場でいま最も盛んに事業活動が展開されているのは、16種類以上のデザインから構成されるコンセプトの提案数の点から言っても、50社以上の顧客からのコミットメント(発注の約束)という点から言っても、都市航空交通(アーバンエアモビリティー、UAM)のセクター(部門)となっています。

Sara Dhariwal, Ascend by Cirium

筆者:Sara Dhariwal, Senior Aviation Analyst at Ascend by Cirium

本稿では、CiriumによるAAM分野における既知の発注および発注コミットメントに関して、2023年の最初の更新情報をお伝えします。

これまで、23種類のAAMコンセプトに対し、80以上の異なる顧客から計8,000件弱の拘束力のない発注コミットメントがあったと記録されています。

本レポートでは、eVTOL(電動垂直離着陸機、電動エアタクシー)とリージョナル電動機とで記事スペースを分けています。

データの対象は以下の通りです:

Market GroupingTypeComments
Business Electric – Multi EngineAlice 
Business Electric – Multi EngineeFlyer 800 
Business Electric – Multi EngineElectra eSTOL 
Business Electric – Multi EngineM200 
eVTOL – UAV/UASALIA-250c 
eVTOL – Urban Air MobilityAero3 
eVTOL – Urban Air MobilityALIA-250 
eVTOL – Urban Air MobilityANN2 
eVTOL – Urban Air MobilityAtea 
eVTOL – Urban Air MobilityButterfly 
eVTOL – Urban Air MobilityCora 
eVTOL – Urban Air MobilityEH216 
eVTOL – Urban Air MobilityEve 
eVTOL – Urban Air MobilityJourney 
eVTOL – Urban Air MobilityLilium Jet 
eVTOL – Urban Air MobilityMidnight 
eVTOL – Urban Air MobilityS4 
eVTOL – Urban Air MobilityVoloCity 
eVTOL – Urban Air MobilityVoloConnect 
eVTOL – Urban Air MobilityVT-30 
eVTOL – Urban Air MobilityVX4 
Regional Electric – SmallERA 
Regional Electric – SmallES-19Programme cancelled
Regional Electric – SmallES-30 

eVTOLs – アーバンエアモビリティー(UAM)

UAM部門は、16種類以上のデザインから構成されるコンセプト提案数や、50種類以上の顧客からの発注コミットメント数に見られるように、AAM市場のほとんどの事業活動を生み出しています。同部門は、この市場スペースにおけるコミットメント総数約8,000件のうち、75%にあたる6,000件近くを占めています。

eVTOL UAMスペースのタイプ別コミットメント占有率は下表のとおりです。2022年11月に公開した前回の寸評から変化はありません。

ソース:Cirium Fleets Analyzer as at 8th May 2022

エンブラエルの子会社であるEve Air Mobilityがデザインした「Eve」は、20社からの計2,500件のコミットメントが確認されており、引き続き市場でトップの座を維持しています。このデザインの機材は4プラス1人乗りで、8つの電動プロペラと分散電気推進(DEP)システムを備えています。DEPは、機体に複数のプロペラとモーターを搭載し、そのうちの1つが故障しても、稼働している他のモーターやプロペラを使って安全に機体を着陸させることを特徴としています。ランディングギアには、ヘリコプタータイプのスキッド方式を採用しています。

Vertical Aerospace Ltdは、OVO EnergyのCEOであるStephen Fitzpatrick氏によって設立されました。そのVX4デザインの機材には、10社計1,500件の既知のコミットメントが寄せられています。こちらも4プラス1人乗りで、8基の電動エンジンと、DEPシステムを搭載した設計となっていますが、Eveとは逆に、格納式の三つの車輪のランディングギアを備えています。

認証への期待は現実的か?

Vertical Aerospace(バーティカル・エアロスペース)は、英国民間航空局(CAA)が発行するDesign Organisation Approval(DOA、設計組織承認)を取得した世界初の上場eVTOL企業です。DOAとは、端的に言えば、機材デザインの設計・製造プロセスを認証するものです。製品の設計から生産に移行するためには、Production Organisation Approval(POA、生産組織承認)が必要となります。

DOAを取得したことで、Verticalは完全な認証取得までの非常に長い道のりの第一歩を踏み出しました。

しかし、Verticalは最近の2023年第1四半期の株主ステートメント(株主報告)では、完全認証の取得時期を2024年から2026年に延期すると発表しています。

そのような中、OEMの間でもeVTOLにまつわる期待値に差異が生まれているようです。Volocopter(ボロコプター)は、世界で30億人以上が視聴する世界最大のスポーツイベントである2024年パリ五輪を舞台として、エアタクシー「VoloCity」のグランドローンチに向けたカウントダウンを開始しました。五輪まで、わずか400日しかありません。

何が本当に現実的なやり方なのか、という疑問も湧いてきます。

私たちは、ヘリコプター業界がこの10年間、数多くの新規参入を歓迎してきたことは承知しています。それらの機材はいずれも、従来式の推進システムを使用し、過去の先行デザインをさまざまな度合いで採用して運航されています。

Type Formal launch*First delivery
Airbus Helicopters H17520082015
Airbus Helicopters H16020112021
Leonardo AW16920102015
Leonardo AW18920112014
Leonardo AW6091996Not yet certified
Bell 5252012Not yet certified

*正式な発表(ローンチ)とは、機材が公に「お披露目」されることであり、その時点での製品プログラムの設計段階にはばらつきがあったと思われる。

それでも、eVTOLの発注コミットメントは引き続き堅調であるとみられ、総受注数のうちコミットメントの比率が3%を超える企業は3社増えました。その3社とは以下の通りです。

  • Volocopter Chengdu – VoloCity・150機のコミットメント
  • ヴァージン・アトランティック航空 – VX4・150機のコミットメント
  • JetNets – Lilium Jet・150機のコミットメント
*Graph is showing commitments for those with a >3% share of the total number.
*ソース:Cirium Fleets Analyzer as at 8th May 2023.

eVTOLセクターの最大顧客として、かなりの差でトップに立ったのはユナイテッド航空です。 eVTOLの発注数はVertical AerospaceのVX4(400機)とArcher(アーチャー)のMidnight(200機)を含む計800機で、全体の10%のシェアを占めました。この市場スペースで依然として2番目に大きな投資を行っているのは、Avolon(アボロン)です。シェアは8%で、VX4を500機の発注コミットメントを通して後押ししています。アメリカン航空は、450機のVX4の発注コミットメントを行っており、7%のシェアで第3位の顧客となっています。

ビジネス電動機 – マルチエンジン

ビジネスおよびリージョナル電動機のカテゴリーでは、競合する会社が主に7社あり、これまでに合計で1,700件弱のコミットメントを獲得しています。

*ソース:Cirium Fleets Analyzer as at 8th May 2023

Heart Aerospace(ハート・エアロスペース)のES-19とES-30を合わせた受注数のシェアは、40%近くあります。とはいえ、ES-30のプログラムに対して行われたアップグレードに伴い、ES-19への発注コミットメントがすべて新プログラムに引き継がれたかどうかは不明です。Aura Aero(オーラ・アエロ)のERAは20%、Electra(エレクトラ)のeSTOLは18%のシェアをそれぞれ維持しています。

このカテゴリーでは、ユナイテッド航空とメサ航空が市場を先導しています。両社はいずれも、HeartのES-19・100機に加え、ES-30・250機の発注コミットメントを行っており、全コミットメント数の15%ずつのシェアを占めています。


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