筆者:Connor Diver, Senior aviation analyst at Cirium Ascend Consultancy
ヨーロッパのいくつかの航空会社がここ数週間、相次いで好調な第2四半期決算を発表しています。航空業界は2019年以来初めて純利益を計上し、黒字に復帰する見込みです。
IAGは先週、今年第2四半期に過去最高の12億5000万ユーロの営業利益と16.3%の営業利益率を計上したことを発表しました。その同じ日、エールフランス-KLMも、同四半期に7330億ユーロの営業利益と9.6%の営業利益率を計上したことを発表しました。
格安航空会社のライアンエアーとイージージェットも、好調な決算を発表しました。これは、経済が全般的に逆風に晒されているにもかかわらず、ヨーロッパにおける航空輸送需要がなお旺盛であることを示しています。各国中央銀行がインフレ抑制に取り組む中で、欧米主要国が景気後退に陥るという懸念は弱まりつつありますが、その可能性は依然として残っています。それでも、こうした最新の決算は、航空各社の収益担当マネジャーが、それぞれの座席からできる限りの価値を引き出すのに成功していることを示しています。
ライアンエアーは平均運賃が前年同期比で42%上昇し、イージージェットは座席あたりの売上が同23%増加したと報告しています。
また、アメリカの主要な航空会社はいずれも、今夏の繁忙期を通じて、海外旅行の需要が引き続き旺盛であると報告しています。
低い燃料コストも大半の航空会社の収益を押し上げており、年初から6ヵ月間の平均スポット価格は、2022年同期と比べて約25%安くなっています。ロシアのウクライナ侵攻により、燃料のスポット価格は2022年に1ガロン(米液量ガロン)あたり5ドル超のピークに達しており、同年上半期の平均価格は3.5ドル前後でした。しかし、今年上半期のスポット価格は2.5ドルにかなり近づいています。当然ながら、ここでは価格変動リスクを回避する航空各社の姿勢も一役買っています。イージージェットなど一部の航空会社は、損益の改善と同時に燃料単価の上昇についても報告しています。
国際航空運送協会(IATA)は今年6月、2023年の純利益の見通しを47億ドルから98億ドルに上方修正しました。これは1.2%のマージン(利幅)に相当し、1800億ドルを超える累積損失を被っていた3年前と比べると著しく改善されています。
このような状況が続く一方で、新造機材の供給は制限され続けています。これが一部の航空会社の成長計画を阻害し、運賃の上昇をもたらしています。すべての主要OEMを悩ませ続けているのは、サプライチェーンの問題です。現在、新造機の6ヵ月の納期遅延は、航空会社やリース会社にとって織り込み済みとなっています。しかし、旅行者は依然として、飛行機を利用するためにより多くの現金を支払う用意があることから、航空各社の幹部は少なくとも2023年を通して、力強いイールド(収入単価)を見込んでおくことができます。
旺盛な需要を背景に航空各社が追加のキャパシティを求めざるを得ない一方で、新規機材の供給が制限されていることも、既存機材の価値とリース料を支える一助となっています。すべてのナローボディ機の市場価値(マーケットバリュー=MV)は現在、フリート加重平均ベースで基準価値(ベースバリュー=BV)を上回っています。長距離路線の需要が回復していることから、ワイドボディ機でも、市場価値は基準価値とほぼ等価となっています。
Cirium Ascend Consultancyの価値評価委員会は、継続的にすべての主要機材タイプを監視し、急速に変化する市況をその価値に反映すべく調整しています。同委員会は最近、長距離路線市場の回復とアジア太平洋市場での需要回復を受け、A330の価値を最大30%上方修正しました。
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