筆者:Herman Tse, Valuations manager at Cirium Ascend Consultancy
中国の国際市場は、世界の航空関連産業の回復のために欠かせないパズルのピースでした。中国文化観光省の発表によると、中国は2023年8月10日、70ヵ所以上の旅行目的地への団体旅行の禁止措置を即時解除しました。旅行代理店は現在、計138ヵ国への団体ツアーの販売を許可されています。中国の団体旅行解禁は大きなニュースであり、航空会社、旅行代理店、そして世界中の旅行目的地に新たな可能性をもたらしています。2022年9月にリベース(基準変更)されたCirium Ascend Consultancyの「回復シナリオ7」では、世界の有償旅客キロ(RPK)は2023年10月に2019年の水準に戻ると予測されています。中国政府が渡航制限を解除した今、この回復は実現しそうです。
グラフ1に示されている通り、Ciriumのデータによると、多くの主要市場は出発便座席数の点で、新型コロナウイルスのパンデミック以前の水準をなお大きく下回っています。中国から主要な観光市場へのツアー団体旅行の解禁は、旅客輸送の大幅な増加を呼び起こす可能性があります。
中国では中産階級と国民の可処分所得が増加したことにより、アウトバウンド観光が飛躍的に成長してきました。
こうした飛行機利用に対する需要急増は、地域的にも世界的にも、間違いなく航空業界に影響を与える要素になります。この需要増を取り込むため、アメリカ、日本、オーストラリア、韓国の航空会社は運航路線を増やし、中国各都市への直行便を増やすでしょう。しかしながら、回復のペースは市場により異なっています。例えば、中国とアメリカは10月29日から、両国間における週24往復の運航を承認します。それでもなお、パンデミック前の150往復をはるかに下回っています。一方で、イギリスに向かう便の座席キャパシティは、個人旅行と留学生の帰国の需要に牽引され、既に2019年の水準を上回っています。
グラフ1:中国から主要市場への出発便の座席キャパシティ
シングルアイル機の供給が逼迫していることから、ツインアイル機の一部が中国国内線に投入され、好調な回復状況を下支えしました。また、今年に入って中国発着の国際線が再開されたことで、より多くのツインアイル機が、高いイールド(収入単価)を見込める市場であるリージョナル路線や国際線に再配備されました。グラフ2に示されている通り、Ciriumの追跡稼働率データによると、中国におけるツインアイル旅客機の追跡稼働機数と1日あたりの稼働率は共に増加しています。国際線を利用する団体旅行の復活は、ツインアイル旅客機の需要の伸びをさらに後押しすると予想されます。
グラフ2:追跡された中国のツインアイル機の機数と毎日の稼働状況
駐機・保管中の機材数は、パンデミック前の水準にほぼ戻っています。エアバスA350やボーイング787を含む新世代のツインアイル機は、その燃料効率の高さから市場での人気が高まっています。A330-200、-300や777-300ERといった中程度の世代の駐機・保管率も、一桁台のパーセンテージにまで減少しています。これは、中国でツインアイル機の需要が回復していることを証明しています。
グラフ3:ツインアイル機の駐機・保管動向(中国の運航会社)
Ascendが評価する機材価値は、ツインアイル機の需要の増加も反映しています。A350-900と787-9は、ツインアイル機市場をリードしています。両型機とも燃費が良いだけでなく、短距離路線と長距離路線の両方に対応できる汎用性があるためです。ここ3年間はパンデミックの影響があったため、投資家からはA330-200、-300と777-300ERの価値に対する懸念が示されていました。
これらの機材タイプは、この1年で目覚ましく改善しました。しかし、市場が完全に回復しても、パンデミック前の水準に十分には戻らないとみられます。
それでも、旅行解禁と、それに続く旅客や機材の需要の急増が、ツインアイル機の価値をさらに押し上げる可能性はあります。Ascendのチームは、市場の動向を細かく監視しています。速やかに価値を再評価して更新し、正確かつタイムリーな情報を提供することを保証します。私たちは、変化し続ける市場動向を常に把握することの重要性を理解しています。お客様に対して、価値ある洞察的知見を提供することをお約束します。
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