筆者:Jeremy Bowen, CEO at Cirium
航空業界はコロナ禍の低迷から抜け出し、力強い回復力と弾力性を発揮し始めています。2023年を振り返り、2024年の見通しについて考えてみると、各社ともに単に生き残っているというだけではなく、多くの面で成長していることは明らかです。
2023年の定時運航実績レビューでは、航空業界の業績の回復ぶりが示されています。Ciriumにとっては、こうした復活を果たした業界のリーダーを表彰できることは喜ばしい限りです。
デルタ航空は、84.72%という驚異的な定時運航率を達成し、2023年の「プラチナ賞」(2023 Platinum Award)を3年連続で受賞しました。この栄誉を特に称えたいと思います。
Ciriumの定時運航率分析は、15年以上にわたり業界の定番の目安になっており、航空会社と空港の定時性を評価する上で極めて重要なものです。2023年は、世界の定期旅客便の運航数が3,200万便を超え、業界が大きく成長した年となりました。この増加は、座席キャパシティ(座席数)の急増とともに、航空業界が大きく成長していることを裏付けています。Ciriumは2024年も引き続き、包括的で偏りのない定時運航実績(OTP)データを提供していきます。その情報は、航空会社、空港、民間航空当局を含む広範な情報源から得たものであり、中立的な第三者の見方として提供しているものです。この分野の専門家である独立諮問委員会が、私たちのレポートの精度と公正さを保証しており、業界実績の状況を正確に反映しています。
2023年のレビューでは、世界の旅客数が大幅に回復し、夏のピーク時には新型コロナウイルスによるパンデミック以前の水準をわずかながら上回りました。この回復は地域によってばらつきはあるものの、前例のない難局に直面していた業界にとって極めて重要なものとなりました。回復を牽引したのはアメリカと西ヨーロッパで、アメリカ国内市場の旅客収入は、2023年第3四半期までには2019年の水準を20%上回るようになりました。
しかし、このような需要の急増には、競争の激化や運航コストの上昇など、相応の課題も伴いました。
航空業界にとって重要なセグメントである出張旅行は、継続的なコスト管理の徹底と企業方針としての持続可能性への関心の高まりにより、引き続き回復が遅れています。このことは主要なグローバル・ディストリビューション・システム(GDS)にも影響を及ぼし、代理店経由の予約は2023年を通してパンデミック前の水準を下回ったままでした。
2024年を見通してみると、業界の展望は慎重さを保ちつつも楽観的なものとなっています。ペースはやや緩やかになるものの、回復傾向は続くと予想されます。旅客数はパンデミック前の水準を若干下回るかもしれませんが、収益は順調に伸び、2019年の数字を上回る可能性があると予測されています。とはいえ、この楽観的な見方も、特に投入コストの上昇を考慮すれば、控えめなものとなります。業界が需給関係を効果的に均衡させる必要があるからです。
アジア太平洋地域、特に中国は、遅ればせながら安定した回復の軌道に乗っており、世界的な需要増に寄与しています。この地域的な成長は2024年、世界の業界を牽引するという重要な役割を果たすと予想されます。
それでも、この業界は新たな課題と不確実性に直面しています。パンデミックから学んだ教訓、そして現在進行中の地政学的緊張や環境面での圧力により、航空業界には戦略的思考と運航効率が求められる新時代が到来しつつあります。
航空会社がこれらの要因にどのように対処するかが、来年の成功を左右する重要なポイントになるでしょう。
結論を言えば、2023年に躍進を遂げた航空業界は、回復基調にあります。その一方、2024年については、前向きではあるものの慎重な見通しが示されています。
Ciriumチームは、2024年にさらに重要な航空関連データを提供するのを楽しみにしています。航空業界が急速に変化する世界情勢に適応していく中で、この先にはチャンスと課題が待ち受けていることでしょう。
レポートのハイライト:
- デルタ航空が、グローバルな運航の卓越性を評価するCiriumのプラチナ賞を3年連続で受賞。
- アビアンカ航空が、定時運航の世界的リーダーとして浮上。
- 北米ではデルタ航空がトップとなり、ヨーロッパではイベリア・エクスプレス、中南米ではコパ航空、アジア太平洋ではANA、中東・アフリカではオマーン・エアがそれぞれトップに輝く。サフエア(Safair)が、格安航空会社のリーダー企業に。
- ミネアポリス・セントポール国際空港が2023年、世界の空港の中で実績トップに。