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Ascend Consultancyによる今後の展望:足許の金利上昇がリース料に与えている影響について
インフレが高止まりしている昨今において、米国の長期金利もここ数年上昇/高止まり傾向にある。
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筆者:曽我部 敏光 Cirium Ascend ConsultancyのAviation Consultant
FRB(米連邦準備制度理事会)は昨年2022年3月より11回連続で利上げを行い、その後の5月1日には6会合連続で政策金利を据え置くことを発表した。
金利とリース料についてはこれまで一定程度の相関関係が確認できるため、金利上昇はリース料の上昇にも寄与してきたものと考えられてきた。但し、リース料の上昇幅が十分であったかどうかについては議論の余地がある。
上図を確認する限り、A320NEOとB737MAXに関しては足許月40万ドルの大台に乗ったものと観測されている。特にA320NEOについては、デビュー年である2015年に月40万ドル超のリース料からスタートして以降下落傾向にあったが、2024年にようやく同水準まで回復したことになる。
但し、同期間中の金利水準を確認してみると、足許の米10年債利回りよりも2015年のほうが遥かに低い水準で推移している。
同様に、2007/2008年では新造機価格が数百万ドル単位で低かったであろう前世代のB737NGやA320CEOのリース料についても、当時40万ドル以上と高値圏で推移していたにも関わらず、同時期における米10年債利回りは足許の水準と同等以下で推移していた。
リース料上昇幅は不十分か
過去との対比で足許の資金調達コストが高くなっているにも関わらず、新造機のリース料が過去と同等以下の水準となっている背景として、過去と比較し(i) 航空機ファイナンス需要が過去対比で増加している一方、リース市場において次世代機の供給不足により十分なセール・アンド・リースバック取組機会がないことから、過当競争によりリース料が抑制されリターンが低くなっている、又は (ii) 各リース会社が取引時において、リース満了時の残価設定や重整備調整金及びメンテナンスリザーブの回収額を高めに設定している、或いは(iii)その両方が起きているものと推察される。
上記(i)については、ボーイングとエアバスの直近の月間生産数を確認する限り、明らかに次世代機の供給不足となっている。ナローボディ機の月間初飛行機数を確認する限り、エアバスは2024年第1四半期で月平均46回、ボーイングは2024年の2月・3月に月平均12回であった。既に新造機の発注を行っている一部のリース会社では取組パイプラインを確保できているものの、全体として各リース会社は新造機の取組に苦慮している状況であり、トップライン確保のため中古機取組へ戦略シフトを検討するリース会社も出てきている。(ii)については、次世代機/前世代機ともに整備コストが上昇していること、次世代機の供給が追いついていないことから、リース満了時の残価及びリース満了時調整金の増加を期待した取組が一部で増えているものと考えられるが、供給不足が中長期なトレンドとなるかについては注意が必要である。
将来のリース料の変動や各航空機リース会社の次世代機へのセール・アンド・リースバックの取組スタンス変更については、Cirium Ascend Consultancyとしても今後注視していきたい。