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Ascend Consultancy, 航空専門家の視点, 航空機投資, 航空機業界の動向予測

2022年の総括:Ascend Consultancyの最新のウェビナーで得られた知見

December 16, 2022

今年最後となるAscend by Ciriumのウェビナーでは、当社の専門家パネルが2022年の旅客・貨物市場の主要トレンドを評価しました。

Ascend by Ciriumの今年最後のウェビナーは、Rob Morris(グローバルコンサルタント統括)が、Chris Seymour(市場分析統括)、Richard Evans(シニアコンサルタント)、Connor Diver(シニア航空アナリスト)を迎えて開催しました。

パネリストは、旅客・貨物市場の回復状況や、2023年以降の見通しについて、それぞれの立場から見解を述べ合いました。Ciriumの最新データを活用しながらライブ配信で行われたこのウェビナーでは、主に以下のような知見が得られました。

2022年は需要回復が持続した年であり、アジアでも緩やかながら着実な成長が見られた。

Connor Diverはまず、Cirium Schedulesのデータをもとに、パンデミック突入以降のキャパシティの動向を検証しました。2022年のヨーロッパ域内市場とアメリカ国内市場は、空港の人員不足など、キャパシティを制約するいくつかの要因があったにもかかわらず、2019年の水準まで回復し、活況を呈しました。

このほか、アジア域内市場は新型コロナウイルスのパンデミックによる2年間の混乱の後は、一貫して改善してきました。この傾向は2023年まで続くとみられます。「アジア域内市場は2022年、2019年比60%減でスタートしたにもかかわらず、年間を通じて緩やかながら着実な成長を遂げ、現在は同40%減の水準となっています」と、Connorは指摘しました。アジア地域では、新型コロナウイルス関連の規制により中国の国内市場が不安定な状況となっています。その影響は甚大ですが、地域全体の回復傾向は持続しており、それが2023年まで続くと予想されます。

長距離路線を見ると、2021年第4四半期に始まった大西洋横断路線の回復傾向が今も続いています。現在の輸送量は2019年の水準に近づいており、年明けには同年比プラスに向かうと予想されています。太平洋横断市場とヨーロッパ―アジア線の市場は遅れをとっていますが、アジアの継続的な需要回復に伴い、ゆっくりと着実に活性化してきています。Connorは、この2つの市場が2023年に注目すべき市場であると結論づけました。

Source: Cirium Schedules, data filed 13 November 2022

ツインアイル機の市場価値とリース料は最悪の時期を脱した

Connorは、一年を通じて市場価値(マーケットバリュー)がどのように推移してきたかについても評価しました。2021年から始まったシングルアイル機の価値回復は2022年に入っても続き、現在も堅調に持続しています。2022年は、長距離路線の需要回復に伴い、ツインアイル機の価値が上昇する転機となりました。Connorは、一部の新しいタイプのツインアイル機は現在、しっかりとした回復基調にあり、古いタイプの方も転換点を過ぎて再び上昇していると指摘しました。こうした傾向はリース料にも反映されています。一部のシングルアイル機は既に2019年の水準を上回っており、ツインアイル機もパンデミック前の水準に向かって回復し続けるとみられます。

Connorはリース市場について、ワイドボディ機(ツインアイル機)のリース件数が記録的な水準に達しており、2022年には、これまでの回復サイクルのどの年よりも数多くのリース契約が発生していると言及しました。「基調としての市場の回復に加え、リース料、特にワイドボディ機のリース料は、パンデミック前の水準と比較してまだかなり魅力的な水準となっています。つまり、現在は安価で確保できる機材キャパシティが存在しているということです」と、Connorは説明しました。「また、航空会社にとっては、他にどのような選択肢があるかということも考えなければなりません。OEMの生産率は非常に低いままです。現在生産されている機材はサプライチェーンの問題に直面しており、対応すべき受注残が存在しています」

一方、Fleets Analyzerのデータは、このような記録的なリース件数にもかかわらず、リース会社が抱えるツインアイル機の遊休フリートが安定しており、シングルアイル機の在庫が減少しているのとは対照的であることを示しています。Connorによると、これは駐機・保管されているワイドボディ機の機齢水準が高いこと、さらには資本コストが上昇し、機材価格が簿価水準に回復するのを売り手が待っているために取引市場が低迷していることを反映しているそうです。こうした状況は、パーツアウト市場が予想以上に低迷していることにも関係しています。この市場も、リース会社が自社のポートフォリオのバックエンド(後端)からの機材を取引するのに苦心していることから、2023年に注視すべき分野の一つとなっています。

Source: Cirium Values AnalyzerCirium Fleets Analyzer

貨物機の受注が積み上がる中、貨物市場の成長は鈍化している

Chris Seymourは、まず輸送量(トラフィック)とキャパシティの動向から貨物市場を詳細に考察しました。貨物部門の2020年の落ち込み具合は旅客部門より小さく、貨物専用機の輸送量は2021年に力強く回復し、前年比6%の伸びを示しました。しかし、2022年に入ると成長は鈍化し、年初の明るい見通しは翳りを見せています。ウクライナとロシアの紛争、中国でのロックダウンの継続、 顕在化してきた景気後退が貿易動向に悪影響を与えたためです。

世界の航空貨物輸送キャパシティは現在、依然としてパンデミック前の水準を8%下回っており、長距離路線の旅客機下部貨物室(ベリー)の輸送キャパシティは、まだ完全に元に戻っていません。それでも、貨物専用機の数は大幅に増加しています。ナローボディ機の数は、eコマース(電子商取引)の成長と新規市場参入に牽引されて、パンデミック発生当初に比べて22%増加しています。この2年間で新造貨物機の受発注は増加し、貨物機へのコンバージョン(改造)も盛んになっています。この間、Ascendは700件以上の受発注を追跡しており、2022年は過去最高の納入数になる勢いです。

需要が減退する中で貨物専用機のキャパシティが増大する一方、ベリーのキャパシティが復活すれば、供給過剰が発生するのではないでしょうか?Chrisは、「確かに、供給過剰になる可能性はあるでしょう。今がコンバージョンの発注のピークだとすれば、2020年代半ばから後半にかけて、長期的なトレンドに戻るかもしれません」と話しています。同時に、2020年代半ばまでは、市場に見合わないほどにコンバージョン機材の供給が過多になる可能性があると警鐘を鳴らしています。しかし、電子商取引の活発化、サプライチェーンの問題、労働問題は今後も続くとみられ、パンデミック前の状況が戻ることはないと考えられます。

Source: Cirium Fleets Analyzer and Fleet Forecast

2023年と2024年は回復の年になる

Richard Evansは旅客市場について分析し、まずAscendが更新した回復シナリオについて説明しました。有償旅客キロ(RPK)で換算した輸送量でみると、現時点でAscendは、2022年の世界の輸送量は2019年の水準を30%下回り、2023年10月になってパンデミック以前の水準に回復すると予測しています。旅客フリートの機数は、来年5月にはパンデミック前の水準に達する見込みです。輸送量を上回るペースで増大しており、全旅客フリートに占めるシングルアイル機の割合が高くなっています。

有償旅客キロ(RPK)で換算した輸送量と旅客フリートの機数は、2023年にはパンデミック前の水準に達するものの、輸送量の成長率が「通常」に戻るにはさらに時間を要するでしょう。Ascendは、2019年から2041年までの輸送量の年平均成長率(複合成長率)を3.6%と予測しています。2018年から2038年までの予測値の4.5%から低下し、2040年代までに3~4年分の輸送量が失われることになります。「私たちが予測した旅客輸送量の年平均成長率は当初5%だったのですが、それが4%台となり、今では3%台にまで下がっています」と、Richardは説明しました。

成長率予測を引き下げる要因には、短期的なものと長期的なものの両方があります。航空会社はまだ回復段階にあり、負債を増やしながらキャパシティを決定しなければなりません。長期的には、GDPの成長とコストの低下が旅客数増加の二大要因となりますが、成長率予測は下方修正され、コストは上昇しているのです。Richardは長期的な重要課題として、航空業界の脱炭素化を挙げています。「大きな論点は、テクノロジーがもたらす燃料消費の削減によってコストが相殺されるかどうかですが、私たちの見解では、そうならない可能性があります」とRichardは述べ、航空業界が気候変動にどう取り組むかが長期的な成長の鍵になると結論付けました。

Source: Cirium Fleet Forecast

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