- 今年の世界の乗客数は2019年に比べて推計で67%減となり、1999年の水準に低下
- COVID-19拡大抑止のための旅行制限により、航空会社はフライト数の49%削減が迫られ、
2019年の3320万便が2020年には1680万便に - 2020年に運航された国際便は380万便にとどまり、全フライトの77%を国内便が占める
- 世界の民間旅客機の30%が待機状態に
世界的航空データ企業のシリウム (Cirium)は本日、新しいレポート「2020年航空会社インサイト・レビュー」を公開しました。COVID-19拡大抑止のために敷かれた世界規模の旅行制限が航空部門に与えた衝撃的な影響を明らかにしています。
レポートによれば、パンデミックとその影響によって旅客機乗客数の21年間の増加分がわずか数カ月で消失し、今年の乗客数は1999年の水準まで低下しました。2020年の乗客数は昨年と比べて67%減少したと推計されています。
4月に運航停止が最も多くなり、4月25日の定期旅客便数は世界でわずか1万3600便へと著しく落ち込みました。年間で一番運航数が多かった1月3日に、シリウムは世界で9万5000便以上の定期旅客便を記録し、この日に比べると4月25日のフライト数は86%減という異例の減少となりました。
航空会社が2020年に運航したフライトは1月から12月までの期間で前年比49%減となり、2019年の3320万便からわずか1680万便(12月20日まで)へと減少しました。
今年の国内便は2019年の2150万便から40%減となり、国際便は前年に記録された1170万便から68%減と劇的な落ち込みを見せました。
シリウムのジェレミー・ボウエン (Jeremy Bowen)最高経営責任者(CEO)は、次のように述べています。「この深刻な後退は、苦戦中の航空部門が直面している困難の本当の大きさを示すものです。航空部門は、COVID-19後の新たな時代における業界の心機一転を模索しています。」
「昨年の今頃は、世界的航空会社の定時運航性を称賛していましたが、今年はまったく異なります。2020年には、ほとんどの世界的航空会社が大部分のフライトを定時運航しましたが、世界の一般旅客、航空会社、航空関連企業がその恩恵を受けられなかったことは残念です。」
「空域と誘導路の混雑や乗客の乗り継ぎ遅れなど、遅延を招く通常の要因は、2020年には発生しませんでした。」
2020年シリウム航空会社インサイト・レビューは、10年以上にわたり最も優れた定時運航実績を残した世界の航空会社と空港を特定してきたシリウムの年次定時運航レビューに代わるものです。
新しい航空会社インサイト・レビュー:運航フライト数が激減
世界の旅客機乗客数は、前年に比べて3分の2以上(67%)落ち込んだことが判明しており、引き続きアジア太平洋が、世界の乗客数の3分の1以上を占めています。
今年運航された定期旅客便の多くは国内便で、合計数は1300万便(77%)でした。国境の封鎖およびビジネス渡航の制限の影響で、国際便はわずか380万便(23%)にとどまりました。
シリウム・データ分析ではサウスウエスト航空が世界(および北米)で最も多くのフライトを運航したことが記録され、合計フライト数は85万4800便でした。一方、中国南方航空(48万7700便)がアジア太平洋で運航数最多となり、欧州ではライアンエアー(20万5000便)、中南米ではアズール・ブラジル航空(13万4000便)、中東・アフリカではカタール航空(8万2400便)が、各地域のトップとなりました。
地上では、アトランタが世界で最も運航数が多い空港となり、2020年に到着便24万5000便以上を受け入れました。一方、世界で最も運航便(往路・復路)が多かった路線は韓国内にあり、ソウルと済州島間を7万700便が運航しました。
航空会社の事前計画は、6~12カ月の運航スケジュールから6~8週間のスケジュールへと大幅に短縮され、航空会社には世界各国の規則と渡航規制の急速な変更に対するさらに機敏で迅速な対応が求められています。
航空機は待機中に(ただし、A320型機を除く)
航空会社は運用する航空機の数を激減させる必要に迫られ、現在稼働中の航空機は運航時間が大幅に減少しています。
たとえば、ナローボディー機の2020年第3四半期の稼働時間は、1日にわずか6~7時間でした。昨年同期間には、1日9~10時間稼働していました。
世界の旅客機の最大30%が待機中となっていますが、回復の兆しも見え始めており、近距離用のエアバスA320neo型機のうち現在待機中のものは10%のみで、ナローボディー機が国内線と近距離区間の飛行機旅行の回復の先陣を切っていることを示しています。
現在の市場の中心は国内線と近距離区間の路線であることから、世界で最も使用されている航空機の機種はエアバスA320型機で、シリウムの記録によれば2020年に549万便が運航しました。
シリウムが突き止めた7つのトレンド
ジェレミー・ボウエンは、次のように述べています。「特に国際線が著しく減少し、主に中国と東南アジアで徐々に回復の兆しが見えているのみであるため、2019年の水準へ回復するまでの航空会社の道のりは、長いことが予想されます。」
「しかしシリウムは、航空部門はこの苦しく過酷な年を乗り切って、より良い形で復活を遂げるだろうと確信しています。経年が浅く燃費の良い航空機と適切なサイズの運用機により、今後数年で回復に向けてゆっくり歩みを進めていくでしょう。」
来年に向けて、2020年航空会社インサイト・レビューが概説する7つの主なトレンドは、以下の通りです。
- 航空会社の整理統合が行われ、特にアジア太平洋では国内線の競合企業の合併や買収が進むでしょう。
- 新世代の航空機(A320neo型機など)や737 Max型機の復活により、運航コストが下がるでしょう。
- 余剰航空機は退役し、ボーイング747型機とエアバスA380型機が、フライト数の多いレジャー市場での需要の高まりを支えるでしょう。
- 第4四半期において、予約数は昨年同期比で78%減となっています。これは当然ながら業界が需要を予測する方法にも変化を与え、オンライン検索と利用者心理が需要を推計する主な指標となりつつあります。
- 運航スケジュールの変動が拡大していることから、航空会社はもっと動的なスケジューリングを導入する必要があるでしょう。予約期間は6~12カ月からわずか6~8週間に短縮しています。
- AI技術の導入が加速して、乗客の体験を自動化し、先を見越したリアルタイムな情報がさらに重要度を増すでしょう。
- 航空機リースが50%を超えて、航空機ファイナンスの主要な手段になるでしょう。
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ボウエンは、アトモスフィア・リサーチ・グループのヘンリー・ハーテベルト氏、太平洋アジア観光協会(PATA)のマリオ・ハーディー博士から成るOTP委員会に対して、2020年航空機インサイト・レビューに寄せられた知見と貢献について感謝を述べました。