2021年4月にスエズ運河で起きたEver Givenの座礁により、350隻以上の船舶が足止めされ、世界の貨物の12%以上が影響を受けました。また、世界中で異常気象が発生し、陸上輸送が影響を受けています。さらに、現在コロナ禍が旅客機のグローバルフリートに及ぼしている影響が、引き続き航空貨物のスケジュールやルートの選択肢を狭め、残りの積載能力への需要を押し上げています。
航空貨物が持つ強みの1つで、現在その需要が急増している直接的な理由にもなっているのが、危機に対応して遅延の影響を最小限に抑えることのできる能力です。貨物を飛行機で運ぶという空輸が持つ固有の柔軟性によって、航空貨物は重要な物品や高価値品の輸送手段として多く好まれます。しかし、スピードの速さと相対的な信頼性を兼ね備えた航空貨物であっても、貨物利用運送事業者と混載業者は、輸送の最新状況を顧客に逐次知らせる必要があります。荷主は貨物の現在位置や、到着のタイミングを知りたいと考えているからです。それらの貨物が腐りやすいものや、ジャストインタイム生産工程の重要部品であることも珍しくありません。
航空貨物が今後もこの強みを保ち、業界の成長につなげていくためには、柔軟性を維持しつつ、高まる一方の顧客からの期待を常に心に留めて、運航の遅延や欠航、機材の変更といった情報をしっかり把握することが極めて重要になります。そうすることで荷主は、輸送の重大な遅延を避け、代替ルートを見つけ、状況データに基づいて情報をやりとりできるようになります。さらにこれは、明確に可視化された形で貨物の輸送状況を確認したいという顧客の要望に対応するものでもあります。これは、eコマースで消費者が経験している細やかな対応に由来するものです。
航空貨物業界は、貨物を追跡し、その状況や位置についての情報のやりとりに役立てるために、積み荷にセンサーや無線送信装置を取り付けて、位置情報を発信するようになっています。しかし、リアルタイムのフライトデータと組み合わせることなしに、それらのデバイスから状況を知らせるデータや行動につながるような実践的なデータを得ることはありません。遅延や混乱が発生した場合、荷主や受取人との情報のやりとりを行う一方、荷主は代替手段の策定や、新たなルートの決定、新たな到着時刻の算出を行うことが必要になります。適切に管理された良質のデータがあれば、すべての関係者が持つ不安や不確実性、疑念を取り払うことができます。
状況に即したフライト状況データは、以下のようなケースに応用できます。
- 荷主が自分の貨物の現在位置、状況、到着予定時間を把握することにつながる。これにより、荷主は顧客との情報のやりとりが可能になります。
- 貨物利用運送事業者、納期管理者、または混載業者として、混乱が生じた原因を理解する。これにより、より詳細な情報の伝達や顧客のサポートだけでなく、代替ルートの特定も可能になります。
- 受取人として、貨物の輸送状況を把握できればそれに越したことはありません。これにより、荷物が到着しなかったことでより大きな問題へと発展する前に、計画を調整して期待事項をリセットすることが可能になります。
旅客機による航空貨物輸送を追跡する際には、以下のフライト状況データが役に立ちます。既存の追跡システムやスケジュール作成システムに容易に統合することもできますし、潜在的な問題に関するアラートを担当責任者に送信するよう設定することもできます。
- 出発時間や到着時間の変更、ゲートの変更、欠航、運航の遅延など
- 天候に関する最新情報や変更
- フライト経路やスケジュールに影響を及ぼしているNOTAM(空港施設や運航上の注意事項)
航空貨物事業者は、混乱や遅延に先手を打って対応すること、そして顧客と円滑なやりとりを行うことによって、業界の近年の成長から引き続き恩恵を受けながら、収入や取扱量をさらに伸ばすことができるでしょう。
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参考資料:
- Ciriumの航空貨物用ソリューション
- IATA:「IATA Air Cargo Market Analysis」
- 「Ascend by Cirium Viewpoint」(2021年第2四半期版)、71号
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