筆者:Andrew O’ Conner, VP of Product; Alexis Brooker, VP of Research, Axel Bensch, Business Development Director at Cirium
航空業界において、持続可能性は決して目新しい課題ではありません。世界の多くの地域の航空会社、空港、航空管制サービスプロバイダー(ANSP)は、少なくとも25年前から、騒音や地域の大気環境への影響を最小限に抑える取り組みを続けてきました。その中で、影響を最小限に抑えるための各種対策をモニタリングおよび導入するための基準を確立してきています。
航空業界の各種団体が実質ゼロ(ネットゼロ)の目標を採択
- ヨーロッパの空港団体であるACI Europeは2008年に「気候変動に関する決議」を採択し、空港からの二酸化炭素CO2排出量を削減することを公約しました。最終的な目標は、カーボンニュートラルを達成することです。決議の採択以降、関連プログラムがグローバルに展開されています。
- IATAは2021年、加盟航空会社が2050年までにCO2排出量を実質ゼロにするという目標を採択しました。
- 2022年には、民間航空交通管制業務機構(CANSO)による「CANSO GreenATM」が開始されました。このプログラムは、航空業界が与える環境負荷の軽減を支援する取り組みに焦点を当てたものです。
- ICAOも最近、モントリオールで開催された会合で、2050年までに排出量を実質ゼロにするという意欲的な目標を発表しています。
世界の温室効果ガスの総排出量のうち、航空業界が占める割合は現在、わずか2.5%であることをご存じでしょうか。 全輸送機関との比較で言えば、道路輸送のCO2排出量シェアが74%であるのに対し、航空輸送はわずか12%にとどまっています。
世界の温室効果ガス総排出量の2.5%というシェアは、全体から見れば大きな数字ではないかもしれません。しかし、私たち全員が未来の世代のために、実質ゼロを目指し、地球を維持する努力に貢献する必要があるのです。
現在の航空機は60年代に比べて80%効率が向上しています。しかし、化石燃料を使用する航空機からのジェット燃料燃焼による排出量は、依然として航空会社の全排出量の79%を占めています。
航空機製造分野では、実質ゼロに向けた動きとして、複数の取り組みが注目されています。これには、短・中期的には持続可能な航空燃料(SAF)の利用拡大による総排出量の削減、中・長期的にはZeroAviaやエアバスZEROeといった水素技術の応用などが含まれます。
航空交通管理(ATM)が気候に与える影響は、飛行経路の非効率性とそれに伴う燃料消費量(および排出量)に大きく起因する運航効率の向上に、密接に関係しています。
排出量削減の改善度の測定は、排出量を把握、測定、管理することによって可能になります。
ANSPは、Ciriumの排出量データを活用することにより、運航面や業務面での改善の取り組みの結果として生じた飛行情報区(FIR)の排出量と、全般的かつ相対的な排出削減量を追跡できます。これにより、排出量削減のためにさらに注力すべき部分について、誰もが理解できるようになります。
また、Ciriumのデータにより、他の関係者も自分たちの排出量を管理、測定、最適化することが可能です。Cirium Emissions Dataを活用すれば、ANSPや空港は、運航効率性が排出量削減をサポートする状況のシミュレーションやKPI(重要業績評価指標)のモニタリングを通して、滑走路、誘導路、エプロン、ランプ、さらにはターミナル空域における航空機の排出量を測定できます。
さらに、航空会社はCiriumのデータを使って、自社のフライトや個人旅行者の排出量を正確に予測するとともに、個人や企業が旅行による排出に対処し、カーボンオフセットの各種プロジェクトに自発的に関与することで気候変動対策を行うことができるようなカーボンオフセットプログラムを実現できます。
Ciriumの排出量データは極めて正確で質が高いため、どうしても避けられない排出に対処して減らすにはどうすればよいか、そしてそれに伴ってどのような影響があるかを正しく理解するための手助けとなります。