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機材のファイナンスとリースに関する2023年第2四半期の展望:Ascend by Ciriumの最新のウェビナーで得られた知見

April 23, 2023

Ascend by Ciriumの最新のウェビナーでは、専門家パネリストが現在の市場について見解を共有し、今後数ヵ月の間に注目すべき主要トレンドを明らかにしました。

3月30日(木)、Ascend by Ciriumのバリュエーション統括であるGeorge DimitroffとシニアバリュエーションコンサルタントであるThomas Kaplanは、航空機リースなどを手掛けるDeucalion Aviationの上席副社長兼レッサー・オリジネーション、プライシングおよびストラクチャリング統括であるSarah Conway氏を招いてウェビナーを開催しました。パネリストの3人は、インフレと金利の上昇が進む中、現在の事業環境を評価し、新たに生まれたトレンドを検証するとともに、このセクターの短期的な見通しを探りました。


リース会社の競争により、今のところはリース料は抑えられている

Thomas Kaplanは機材の価値とリース料の状況を評価し、特にシングルアイル機では、リース料が価値よりも相対的に遅れて動いていると強調しました。「シングルアイル機については、リース会社の競争が非常に激しく、価格が低下しています。また、金利やインフレの影響を受けてリース料が上昇する機運も見られません」

リース会社には、遊休機材の過剰在庫がまだあります。これは、需要が非常に少なく、機材配備が今よりも困難だったパンデミックの時期からのものです。その在庫の数が依然として通常よりも多いため、競争が激化し、リース料が低く抑えられています。それでも、リース料が継続的に改善する可能性はあり、現在も改善に向かうトレンドが見られます。

インフレは確実に影響を及ぼしています。Sarah Conway氏は、資金調達(ファイナンス)の観点から、リース会社の間で再調整が行われていると指摘しました。「ここ数週間で、金利が再び動き出しました。この変動性こそが、今、機材の売買を検討する際に私たち全員の頭を悩ませている問題です。そして資金調達の観点から、そうした売買がうまくいくかどうかについて懸命に理解しようとしています」

では、なぜ航空機のリース料は金利と共に上昇していないのでしょうか?「この業界は、20年以上にわたって低金利というドラッグに頼ってきた依存者のようなものです」と、George Dimitroffは述べました。「今は少し禁断症状が出ていますが、なんとか適応しようとしている状態です。業界は新しい金利環境に適応できると思います。ただ、金利上昇分の一部を顧客に転嫁し、調整するのに少し時間がかかるだけなのです」

シングルアイル機における基準リース料に対する市場リース料の比率は、基準価値に対する市場価値の比率よりもやや遅行している。金利上昇と供給減は、徐々にリース料に反映されてきているものの、機材を配備しようとするリース会社間の旺盛な受発注競争により、回復の動きは鈍くなっている

ソース:Cirium Values Analyzer, passenger jets only

今年のパーツアウト市場の復活は期待しない方がよい

駐機・保管されている機材の数が多いにもかかわらず、パンデミック突入以降の数年間、退役機の数は少なく、年間での総計が2019年の水準に達しない状態が続いています。その結果、パーツアウト市場はずっと低迷しています。これについてThomasは次のように説明しました。

「機材の所有者は、航空機を永久に退役させて解体するか、そのまま置いておくかを選択できます。エンジンや機体の価格が下がり、スペアパーツの需要も減るような弱い経済環境下では、解体しない方がいいと考えるでしょう」

Rob Morrisが最近の記事で取り上げたように、パーツアウト市場には復活の兆しがあります。2023年の最初の2ヵ月間、退役機数の水準は2019年と同じ程度でした。しかし、Georgeは、パーツアウト市場が復活する一方で、パーツアウト企業以外のタイプの買い手が、本家よりも高値で機材を買い付けていると指摘しました。

こうした機材は、単に新規納入がなく、航空会社所有の機材の一部がメンテナンスのために非稼働となり、MROのスロットを待っていることから、フライヤー(飛ばす機材)として必要とされているのです」と、彼は見解を示しました。「航空会社やリース会社が機材を売りに出すような大きな出来事がない限り、今年にパーツアウト市場が2019年のレベルに戻るとは絶対に思えません。

Sarah Conway氏はリース会社の立場から、航空会社の間に、パーツアウトされることになっている機材のリースの延長を求める需要があることを指摘しました。「多くの場合、サービスを提供する企業にとっては容易な決断であることは明らかです。特に、機齢20年の資産をもうひと夏延長させることを考えているのであれば、なおさらです」

「市況のサイクルは変わります。ただ、そうした売買取引が検討されていた機齢20年の時点では、誰も延長を受けることを想定しなかったでしょう。しかし、この6~12ヵ月の間に、それが本当のチャンスになったのです」と、Sarah Conway氏は結論付けました。「それでも、そのチャンスは非常に短い期間になると思います」

12月には中国・アジアの稼働機材が増えたため、保管フリートは再び減少した。しかし、在庫率(保管フリートのシェア)はパンデミック前の水準を依然として6~8ポイント上回っている

ソース:Cirium Fleets Analyzer, Western-built passenger jets only. Latest month subject to revision in-line with Cirium’s 30-day rule

リース会社の取引復活の条件は整っている

まだパンデミック前の水準に達していない別の分野として、リース会社間において機材をリース付きで交換する「スワップ取引」があります。この取引は、2019年の600件超から2020年には300件に半減し、それ以降、毎年400件を頑として下回る状態が続いています。2023年は、この流れに抗うのでしょうか?

ライブ視聴者の投票では、取引件数が2019年の水準に達しないまでも400件を超えると予想する人が43%、同程度の数にとどまると予想する人が40%と僅差で分かれました。Sarah Conway氏は、取引成立のために必要な時間枠が長くなったため、取引の進行が阻害され、取引自体が不成立に終わるケースが増えていると示唆しました。しかし、ここ数ヵ月の顕著な変化として、最近の業界イベントで取引に関する話題が増えていることや、ワイドボディ機が取引可能な資産として市場に戻ってきたことを指摘しました。

「高金利の環境下で、資金調達によるブレイクゲイン(清算時の利益)の獲得が可能になっています。ここ数年の簿価の停滞やバリュエーション(資産評価)への効果を考えると、プラスの影響が生じる可能性があります」と、Sarah Conway氏は説明しています。「ワイドボディ機は、特にナローボディ機のポートフォリオとパッケージ化されていない単体の資産なので、検討するのが難しい資産クラスでした。そのため、ワイドボディ機の取引については、年内を通して増加するはずです」

Georgeはこの見解に同意し、2020年に再構築された多くのリース取引の債務返済が完了し、リース契約のボラティリティ(変動性)が低減しつつあると付け加えました。「日々の変動はなお激しいものの、収益源や借入コスト、資金調達コストといった点で、得られるものについての予測が多少しやすくなっています」と、Georgeは述べました。

リース付き機材を取引するために必要となる主な要因のいくつかは、安定し始めていると思います。これにより、もっと多くの取引のためのドアが開かれるはずです。

リース付き機材の取引量は、パンデミック時に大幅に減少した

ソース:Cirium Fleets Analyzer 23 March 2023, commercial usage, age <25 years

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