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航空輸送量は2023年に再上昇:2024年、業界回復の次に来るものは?


航空業界は遂に復活しました。出そろった2023年の実績関連の数字を見ると、世界の輸送旅客数、そしてそれ以上に重要な輸送旅客収入が、ようやく4年ぶりに過去最高を記録したことが明らかになっています。


筆者:Kevin O’Toole, Chief Strategy Officer at Cirium

航空業界は遂に復活しました。出そろった2023年の実績関連の数字を見ると、世界の旅客数は明らかに新型コロナウイルス感染症のパンデミック前の水準に近づいており、年末までには2019年のピークよりわずかに3%少ないというところまで来ました。しかし、それ以上に重要なのは、旅客収入が遂に4年ぶりの高水準に達したことです。問題は、この力強い収益回復がどこまで続くか、さらに需要の回復が業界の収益力強化につながるかどうかです。

業界の最近までの不況が前例のないものであったことは、記憶しておくべきでしょう。2020年初頭に世界的パンデミックとなった新型コロナウイルス感染症の発生により、旅客輸送量は60%減少し、2年後の2022年に需要が回復しても、輸送量はコロナ禍前の水準に比べてなお約27%減少したままでした。2001年に9・11アメリカ同時多発テロが発生したときのことを振り返ると、当時の世界の旅客輸送量は最悪時でも3%減と変動幅は比較的小さく、その数年後にはアジアでSARSが発生したにもかかわらず回復を果たしました。

世界の四半期別旅客輸送量と収益 – 2023年

四半期旅客数旅客収入旅客輸送量
 vs 2022vs 2019vs 2022vs 2019vs 2022vs 2019
Q153%-7%84%2%63%-11%
Q234%-3%43%6%39%-6%
Q325%-1%22%6%28%-2%
Q426%-1%21%6%28%-1%
Year 202333%-3%37%5%37%-5%

それとは対照的に、今回の景気後退は過去に例を見ないほど長く、深刻なものでした。 ちなみに、旅客輸送量は第二次世界大戦中でも毎年増加していました。したがって、2023年に収益(収入)と輸送量が回復したことは、市場がようやく正常に近い状態に戻るという歓迎すべき兆候となります。

CiriumのDiio FM輸送・運賃モデルでは、世界の旅客数が2023年夏のピーク期にパンデミック前のレベルを僅差で上回ったことを示しています。通年で前年を上回るには至らなかったとはいえ、これは運賃の堅調な回復を伴うものでした。追跡された旅客収入はほぼ年間を通じて過去最高を記録し、2023年末時点で前回のピークから5%増加しました。そのような楽観論には、注意すべき点もあります。ドルのインフレ率は2019年からの5年間で約20%の上昇となったため、昨年の旅客収入の総計は実質的に減少したままでです。

その回復ぶりも一様ではありません。出張旅行は相変わらず低迷しており、企業はコスト管理面だけでなく、二酸化炭素排出量の目標の達成も迫られています。

これはアマデウス(Amadeus)とセーバー(Sabre)からの収益にも表れており、GDS代理店を通した予約は2023年中、パンデミック前の水準を約30%下回り続けていました。このGDSの水準低下には他の要因もありますが、搭乗した旅客数の回復と比べると対照的です。

長距離路線の需要も回復が遅れていていますが、パンデミック時に国境を越えた旅行が制限されたことを考えれば、驚くには当たりません。2023年の世界の有償旅客キロメートル(RPK)は、リージョナル(地域)・国内市場は活況だったものの、長距離路線が伸び悩んだことから、5%減少しました。

この地域路線需要を牽引してきたのはアメリカの国内市場で、2022年半ばからコロナ関連規制が解除され始めて以来、輸送量の伸びが着実にペースを上げています。その集計値は2023年、すべての月で2019年を上回りました。旅客数は前年のピークを4%上回り、旅客収入は同じく17%増という好調な結果となりました。

西ヨーロッパは、2022年夏のやや混乱をきたした市場再開以来、出遅れを示しながらもアメリカ市場の上昇軌道に追随している状態です。路線網の拡大が続いたため、この域内のRPKは6%増加した一方、旅客数はなおパンデミック前より2%低い水準だったものの、旅客収入は堅調に伸びて9%増となりました。

先導市場であるアメリカ―西ヨーロッパ間の北大西洋航路も、同じ軌道を辿っています。その旅客輸送量は2023年夏のシーズン以降、パンデミック前のレベルを常に上回りましたが、旅客収入は年間を通じて伸び、2023年末には6%上回りました。

passenger walking through airport

欧米市場では回復ペースが定着し始めていますが、アジア太平洋市場はまだこれからです。新型コロナウイルス感染症のもともとの発生源であった中国の市場は、2022年前半の都市封鎖の第2波で再びブレーキがかかり、中国人の旅客数を再び減少させ、アジア太平洋地域全体の成長を鈍化させました。

中国本土とインド亜大陸を計算から除外しても、その他の東アジアおよび太平洋地域における需要回復は時間がかかっています。

この地域内の旅客数は2019年の最高値を12%下回っており、おそらくアメリカ国内市場やヨーロッパ域内市場からは6~12ヵ月、回復が遅れています。それでも、回復傾向自体は定着しつつあり、旅客収入は2019年並みで、運賃水準も順調に推移しています。

アジアの市場回復が続いていることから、世界の輸送量は2024年を通して上向き傾向を続けることでしょう。 より大きな問題は、特に投入コストが上昇し続ける中で、航空会社が需要と供給のバランスを保つことができるかどうかだと思われます。2024年に入って以降のCiriumの将来予測スケジュールを分析すると、年間の座席キャパシティの伸びは4%程度の微増にとどまり、2023年と同様、需要の伸びよりも1~2ポイント低くなる可能性が高くなっています。

しかし、それもまだ変わるかもしれません。 9・11テロ後のような過去の回復サイクルでは、需要回復の見込みによって市場シェア争いに火が付き、業界の利益を圧迫したものでした。今回は違うかもしれないのです。この業界は20年前よりも企業統合が進んでいます。今後もハワイアン航空、ITAエアウェイズ、SAS、TAPポルトガル航空などがさらに大きなグループに加わる予定です。前例のないパンデミック、ヨーロッパと中東で勃発した武力紛争、持続可能性に関する圧力の高まりといった要素が合わさり、不透明な市場に座席キャパシティを再び加えようとする意欲を減退させる可能性があります。2024年にどうなっていくのか、ぜひ注目しておきましょう。

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