筆者:Eric Tamang, Valuations Analyst at Ascend by Cirium
2007年に就航したエアバスA380は、当時の市場に存在したどの商用ジェット機よりも多くの乗客を運ぶことができ、旅行業界の動向そのものを変える可能性を持っていました。
この機種は当初、3つの地域の顧客から大きな注目を集めました。Cirium Fleets Analyzerによると、機材の60%以上は中東の顧客に納入されました。次いでアジア太平洋地域が24%、3番目のヨーロッパが15%となっています。
しかし、初期に大きな注目を集めたにもかかわらず、最終的にこの機体は市場には大き過ぎることが判明しました。エアバス社はわずか251機を販売した時点で生産を終了し、最後のA380は2021年12月にエミレーツ航空に引き渡されました。A380の現在の運航会社としては、エミレーツ航空が最大の120機以上を保有しており、以下、シンガポール航空、ルフトハンザ、ブリティッシュ・エアウェイズがいずれも20機未満で続いています。
Cirium Fleets Analyzerによると、2019年の時点では230機以上のA380が稼働しており、駐機・保管されていたのはわずか7機でした。しかし、新型コロナウイルスのパンデミックの間、感染拡大を抑制するべく世界各地でロックダウンや国境の閉鎖が実施されたことにより、ワイドボディのジェット旅客機の需要は大きく減退しました。その結果、2020年には、A380は217機が駐機・保管されることになり、稼働していたのは24機となりました。その時点で多くの専門家が、A380の将来には暗雲が立ち込めており、数年以内に再び稼働できる機材はほとんどないと予測していました。
ところが、パンデミックからの景況回復に伴い、そうした予測はあまりに悲観的だったことが明らかになりました。A380の稼働機数は既に回復しています。現在、稼働機材は129機となっており、駐機・保管中の機材の109機を上回っています。稼働数の上昇傾向は2023年に入ってからも続いており、より多くの運航会社がこのA380を再び運航しています。
さらに、Ascend by Ciriumが追跡している稼働率を見ても、2022年初頭以降は強い上昇傾向を示しており、追跡された1日あたりのエアバスA380のフライト数は200便近くに達しています。
A380の生産は終了していますが、現在は最悪の事態を脱しているようです。より多くの機材が再稼働し、さまざまな航空会社の路線に配備されることで、機種としての稼働率は引き続き改善すると思われます。
Cirium Fleet Forecastでは、短期的に堅調な稼働復帰ペースが続き、2025年までには全世界の稼働機数は約170機になると予測しています。
その後、稼働フリートは高機齢化に伴って減少傾向が続くと予想されますが、A380の将来は、2020年の暗黒の時代に多くの人が予想したほど暗いものではないでしょう。
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