中国におけるエアバスとボーイングのナローボディ機―Max復帰の不確実性に両社はどう対応してきたか?
筆者:Yuanfei Zhao (Scott), Senior aviation analyst at Ascend by Cirium
最近、ボーイング737Maxの中国での運航再開が大きな話題となっています。この機種の中国での運命は、復帰について好材料が出たり、不利な材料が出たりと、振り子のように揺れ動いています。これは、中国系航空会社に対して、その種の不確実性の中でフリート計画をどのようにすべきか、という問題を潜在的に提起しています。エアバスneoの普及に備えるべきか、それともMaxの早期の復帰に期待して、じっと待つべきか。明確な答えはまだ出ていません。それでも、最近の中国のフリートの動きを見ることで、何らかの方向性を見出せるかもしれません。
CiriumのFleets AnalyzerおよびTracked Utilizationのデータでは、737-800は依然として、中国における単独かつ最大の商用機材タイプです。しかし、直感に反して、コロナ禍前後のほとんどの期間、A320(フリート規模の点で2番目の機種)のフリートが、1機あたりの月間フライト数ベースで最も多くなっていました。
2022年に入ってから現在までの737-800フリートの平均使用率は、2019年の水準の半分強に過ぎません。それを踏まえると、中国がゼロコロナ政策を続ける間は、大幅かつ持続的な需要回復は見込まれず、737ファミリーの機材のキャパシティ不足も差し迫ったものとはならないようです。
また、今年9月末時点では、オペレーティングリース会社が管理する737NGは104機(うち737-800は77機)、A320ファミリーは196機(うちA320ceoは109機、A320neoは5機)が、それぞれ全世界でリース可能な状態となっていました。これらの機材は、少なくとも短期的な需要に対し、余剰のキャパシティを必要とする航空会社の代替の解決策として、稼働させることが可能です(ただし、中国系航空会社は通常、中古機材のリースを好まないため、おそらくその解決策も選択肢には入らないことに留意する必要があります)。
最も注目すべきは、A320neoの動向です。その1機あたりの月間フライト数でみたフリート使用率は、コロナ禍以前は世界第4位の水準でしたが、コロナ禍後は、フリート規模の急拡大に伴って急速に上昇しています。
当面は、中国の3大航空会社や廈門航空がA320neoファミリーを大量に発注したことを受けて、A320neoのフリート規模は引き続き拡大すると見込まれます。さらに、中国系航空会社が今後、neoの納入の波に備えて、機材メンテナンスや運航などの分野に投入するリソースをA320neoファミリーに傾けることを考えると、neoの使用率は、現在と同等かそれ以上のペースで上昇し続けると予想されます。
エアバスが中国市場を支配すると結論づけることはできませんが、Maxが厳しい状況に陥る中、エアバスの方が優位になりつつあるように見えます。そのほかにも、OEMの生産枠(スロット)の問題、C919の商用運航への導入、Maxの最終的な復帰、航空会社によるエアバス機やボーイング機の運用能力など、多くの要素が絡んでいます。今後もCiriumは、あらゆる節目をフォローしながら市場の動向を注視し続けます。
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