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Ascend Consultancy, 航空専門家の視点, 航空機業界の動向予測

Ascend Consultancyによる今後の展望:持続可能性への道―資産と航空会社をどうランク付けすべきか?

December 12, 2022

2050年までに温室効果ガスの排出量「実質ゼロ」を目指すという公約が、航空会社をはじめとするさまざまな組織から毎日のように発表されています。

筆者:Richard Evans, Senior consultant at Ascend by Cirium

第27回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP27)が2022年11月にエジプトで開催され、2050年までにネットゼロを実現するという公約が航空会社をはじめとするさまざまな組織から毎日のように発表される中、どのように航空会社のグリーンクレデンシャル(地球の緑化への貢献度)を比較することができるのでしょうか?

一言で言えば、比較することは簡単ではありません。Ciriumは、航空機や運航状況に関する膨大なデータを保有していますが、今回、フライトごとの燃料消費量とCO2排出量の推定値もデータに含めるようにしました。さまざまな機材の種類やバリアント(変異機タイプ)を比較し、その排出量を特定の指標を用いて表現することは比較的容易です。これは例えば、1フライトあたりのCO2排出量であったり、キャパシティ(座席や貨物室の供給量)やペイロード(有償搭載量)といった単位あたりのCO2排出量であったりします。一般的に使用される指標は、有償トンキロメートル(RTK)または有償旅客キロメートル(RPK)あたりのグラム単位のCO2排出量です。

Ascend by Ciriumは、こうしたデータをもとに資産を赤信号・黄信号・青信号のカテゴリーに分類し、「投資可能性」や「魅力」を見出す手助けとなるようにしています。これは旅客機でも貨物機でも可能な手法で、顧客のニーズに応じてリージョナル機、シングルアイル機、ツインアイル機に区分けすることもできます。

この手法でも、何が「最善」なのかについてはある程度、判断することが必要です。例えば、RPKあたりのグラム単位のCO2排出量が55~70g/RPK(RPKあたり55~70g)のA321neoは、CO2の総排出量が遥かに少ないながらも、同様の指標でおそらく150g/RPKはある小型のリージョナル機よりも、持続可能性が高いと言えるのでしょうか?この場合、たいていの人は前者のA321neoの方が良いと考えるでしょうから、次に航空会社レベルの排出量を測定することになります。

リージョナル機やシングルアイル機のみを運航している航空会社の場合、最も単純な比較はCO2/RPK(RPKあたりのCO2排出量)です。特に格安航空会社(LCC)は、高密度の座席レイアウトとロードファクターにより数値が低くなることから、この指標を使うことを好みます。ツインアイル機、そしておそらくは貨物専用機も運航する航空会社は、旅客と貨物の両方のペイロードを考慮するため、CO2/RTKで排出量を測定する可能性が高くなります。

新型コロナウイルスのパンデミックにより、2020年にはロードファクターが崩壊しました。アジアでは未だに、2019年の水準まで回復していません。このため、私たちは通常、航空会社の2019年の排出量を現時点で比較しつつ、その改善傾向や公約した目標値にも目を向けることにしています。

2019年の排出量が66g/RPKだったライアンエアーは、2030年までにその数値を60g/RTKに減少させることを目標にしていると述べました。2019年の数値は、乗客1人とその手荷物あたりの平均重量を100kgと仮定すると、660g/RTKに相当します。ルフトハンザグループは2019年に、ライアンエアーよりも50%以上高い92g/RPKという数値を発表しています。しかし、これに貨物の分を加えると、860g/RTKという数値になります。長距離の貨物専用便のみを運航する航空会社は、もっと低水準になっています。カーゴルックス航空の2020年の数値は482g/RTKでした。カーゴルックスは、ライアンエアーよりも持続可能性に優れているのでしょうか?

Ascend by Ciriumは、航空会社の持続可能性の実績をより適切に比較するために、公表された排出量や推定排出量だけに頼らない「スコアカード」システムを開発しました。この手法は、11の異なるパラメータに基づき、各航空会社の実績を100点満点で評価するものです。

私たちは、機材フリートのミックス(混合状況)、運航業務指標、排出量データ、排出権取引スキーム(ETS)のエクスポージャー(摂取状況)を考慮し、定量評価を行っています。さらに、持続可能性レポート、排出量削減目標や、持続可能な航空燃料(SAF)およびカーボンオフセットの利用に対する定性評価も組み合わせて評価しています。したがって、定期的にサステナビリティのレポートとデータを公開し、CO2の絶対量と正味重量の削減目標を持ち、SAFに関する契約を締結し、さらには透明で検証済みのオフセットを顧客に提供している航空会社は、そうでない航空会社よりもはるかに高いスコアを獲得します。たとえ後者の「そうでない」航空会社が、当社のGlobal Emissions Monitorのデータセットにおける推定CO2量/RPKが低い場合でもです。

現時点では、当社のスコアカードで最も優秀な成績を収めている航空会社のほとんどは、ヨーロッパを拠点とする航空会社ですが、一部の南北アメリカ、アジア太平洋地域の有力航空会社も好成績を上げています。全般的に、株式市場に上場している航空会社は、非上場航空会社や政府系航空会社よりもスコアが高くなっています。持続可能性に関する社外コミュニケーションや改善目標がない航空会社は、まだ数多く存在するのです。これには皮肉にも、エジプトの国営航空会社も含まれています。それでも、国際航空運送協会(IATA)と国際民間航空機関(ICAO)が実質ゼロに関する長期的な誓約を共に発表したこともあり、今後はそうした状況が変わることが期待されています。


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