筆者:Yuanfei Zhao, Senior aviation analyst at Ascend by Cirium
ナローボディ機とワイドボディ機の両方を含めた中国の貨物専用機フリートは、現役の商用貨物機がわずか6機だった今世紀初めごろからは著しく増大しています。2022年末時点では、一転して200機以上もの商用貨物機が稼働するようになりました。
中国が貨物機を増加させた道筋は、「フリートの振り分け」という点で、世界の他の2つの先進国市場である欧州と米国とは異なっています。2000年1月当時から、欧州のワイドボディ機フリートはナローボディ機フリートよりも規模が大きかったのですが、それは現在も変わっていません。
一方の米国では、DC-8、-9や727などの老朽化したナローボディ機の継続的な退役とワイドボディ機の増加という両方の要因により、ナローボディ機のワイドボディ機への置換が進み、フリート構成が根本的に変化してきています。
中国でも、貨物フリートが増大し始めた当初はワイドボディ機の方が主流でした。しかし、2012年以降、初めはボーイング757が、やがてより小型の737-800がそれぞれ導入されるようになり、ナローボディ貨物機の現役フリートが、ワイドボディ貨物機のそれを大きく上回るようになったのです。
この競合する3つの経済圏は、世界最大級の国際貿易市場となっています。中国は現在、世界最大の輸出国であると同時に、3つの経済圏の中で(輸出入の両面における)最大の貿易国でもあります。しかし、そんな最大の貿易国でありながら、貨物専用機、特にワイドボディ機の貨物フリートは非常に少ないのです。そのため、中国独自の国際航空貨物輸送能力が、その国の経済・貿易規模に見合うかどうかが問われることになります。下のグラフが示す通り、Ciriumが追跡した中国発着貨物便の稼働率データでは、キャパシティギャップのかなりの部分が、外国の貨物インテグレーターによって埋められていたことが分かります。
つまり、ワイドボディ機は財務面でも運航面でも市場への参入障壁が高いものの、貨物便運航会社や貨物機への投資家にとっては、中国は長期的なビジネスチャンスも十分に見込める市場なのです。
例えば、中型ワイドボディ機のカテゴリーにおいては、現行のボーイング767Fは、国際民間航空機関(ICAO)が生産中の機種に対して定める新しい規則に準拠したエンジンを搭載していないため、2028年までに生産を終了しなければならなりません。このため、旅客機を改造(コンバージョン)したワイドボディ機であるエアバスA330貨物機は、新型のワイドボディ機である787貨物機の納入前であれば十分に優位性があります。ただ、ボーイングはまだそうした787のバリアント(変異種)の貨物機の開発に着手しておらず、その就航は極めて不透明です。
最新のCirium Fleet Forecastによると、大型ワイドボディ機のカテゴリーについては、新造ワイドボディ貨物機の需要の60%近くがこのカテゴリーに該当すると予測されています。2030年以前に就航するエアバスA350とボーイング777-8X貨物機には、高い需要が見込まれます。747-8Fの生産が既に終了していること、また767Fと同様に777-200LRFも2028年までに生産を終了しなければならないことが、両機種の需要を後押しするからです。
Ascendのフリート予測では、中国は2041年までに、現在の4倍に相当する340機近いワイドボディ貨物機を保有すると見込まれています。
これに対し、ナローボディ機は現在の2.5倍に増加するとみられています。財務面および業務面からみて対応可能な企業は、いずれはワイドボディ貨物機の長期的なフリートプランニングを行うこともできるようになるでしょう。
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