筆者:Thomas Kaplan, Senior Valuations Consultant, ISTAT Certified Senior Appraiser at Ascend by Cirium
スタンダードチャータードの航空機リース事業が買収される見込みであるとのニュースは、現在の航空機リース市場における統合の流れが加速していることを感じさせます。しかしながら、買い手とみられている企業は、サウジアラビアのAviLeaseという新規参入企業です。こうした事業統合の動きは、新規参入企業の増加ペースを上回って活発化しているのでしょうか?
新型コロナウイスのパンデミックの間、注目されるリース会社の統合がいくつか実現しました。その中には、世界最大級の2社であるAerCapによるGECAS買収が含まれます。そのほか、SMBC Aviation CapitalとGoshawk、Carlyle Aviation PartnersとAMCKが、それぞれ統合の例として挙げられます。このいずれの企業も、統合前のフリート規模の点では、世界のトップ20に入るとみなされるほどでした。また、StratosによるMagi Partners買収など、小規模な事業・企業統合も行われています。Macquarie AirFinanceは、ALAFCOの保有フリートの大半を取得する予定ですが、ALAFCO自体は売却手続きの終了後もリース会社として存続することになっています。
Cirium Fleets Analyzerのデータによると、2019年末時点では、稼働または駐機・保管中の商用ナローボディ・ジェット機または商用ワイドボディ・ジェット機を少なくとも1機、保有しているリース会社は176社ありました。現在、そのようなリース会社の数は184社に増えています。つまり、実際のところ新規参入企業の増加ペースは、統合の増加ペースを上回っているのです。この間に保有フリートを30機超に増やした新規参入企業の顕著な例としては、アメリカのリース会社であるGriffin Global Asset Management、Vmo Aircraft Leasing、SKY Leasingが挙げられます。アブダビを拠点とするSirius Aviation Capitalは商用ナローボディ機を18機保有するまでに成長しましたが、同じ中東の新興企業で最も話題になっているのは、当然ながらAviLeaseです。AviLeaseの現在のポートフォリオは、FlyNasからの購入リースバック(PLB)により取得した7機で、間もなくAvolonからの13機のポートフォリオにより増強されます。加えて、FlyNasおよびサウジアラビアからのPLBによる25機と、スタンダードチャータードの事業を買収すればさらに最大100機がそれぞれ追加されることになります。
下のグラフは、過去10年間のリース会社の状況の推移を示したものです。
2010年代には、リース会社の数は141社から176社に増え、リース機のフリートは一段と細分化されました。2010年には、わずか21社のリース会社がリース機材の80%を保有していましたが、その10年後には38社にほぼ倍増しました。
パンデミックから始まった2020年代は、これまでのところ、最大規模のリース会社については、トレンドが逆転しています。現在、36社のリース会社がリース機フリートの80%を保有する一方、リース会社上位5社のシェアは30%から33%に増加しています。
パンデミックによってもたらされた厳しい状況にもかかわらず(あるいはそのおかげで)、航空機リース事業への新規参入が続いていますが、大部分のフリートを管理する大手リース会社に関しては、新規参入よりも統合の方がわずかに活発になっているようです。
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