筆者: Connor Diver, Senior aviation analyst at Ascend by Cirium
米連邦航空局(FAA)が「ボーイング社は787ドリームライナーがすべての認証基準を満たすよう必要な変更を行った」ことを正式に確認したとのニュースを受け、ボーイング787は8月10日に納入が再開される見込みです。
787の納入については、ボーイングが品質に関する問題を確認したため、2020年11月から2021年3月にかけて一時停止され、さらに2021年5月には検査計画へのFAAの同意を得るために再び停止されていました。この後の15ヵ月の間にさらなる製造上の問題が発覚し、ボーイングは、未納機材の在庫を積み上げてしまいました。同社によると、現在その数は120機に達しています。
Cirium Fleetsのデータでは、ボーイング社の在庫に留まっている初飛行日付き(初飛行済み)機材が114機、さらに2018年にロールアウト(出庫)したものの一度も飛行していない機体番号(MSN)付き機材が1機あることが示されています。この787の在庫のうち、787-9が3分の2を、より大型の787-10がほぼ4分の1をそれぞれ占めています。驚くことではありませんが、この比率は将来のオーダーブック(注文帳)をそのまま映し出しており、まだ注文中となっている機材の大半を787-9が占めています。ボーイングは2021年初めに787の生産をノースチャールストン工場に集約しました。ただし、エバレット工場での787の生産終了前に同工場で製造製造した機体も、この受注残に含まれています。
ボーイングにとって、現在、エバレット、チャールストン、サンアントニオ、ビクタービルの4工場で保管されている受注残の未納機の整理を開始できるのは喜ばしいことに違いありません。しかし、ようやく新型機を手に入れることができるようになった顧客はもっと喜んでいることでしょう。アメリカン航空は787のキャパシティ不足のため、2022年第1四半期に運航スケジュールの縮小を余儀なくされていました。同社は、今後数週間のうちに、この機材の受領を開始する最初の航空会社となります。
ほとんどの機材はアジア太平洋地域の顧客向けとなっており、37機が航空会社とリース会社計13社に分散して引き渡されます。
北米の航空会社向けの受注残の大半は、アメリカン航空向けのものです。同社向けの未納機材は16機で、7機がホワイトテール(納入待ち機材)としてボーイング側に留まっています。ヨーロッパでは、ルフトハンザ、ブリティッシュ・エアウェイズ、エア・ヨーロッパ向けに各5機の787が製造されました。中東では、カタール航空が、同地域向け全22機中9機の納入を待っています。
787型機は15ヵ月間に及ぶトラブルを経て、その将来が明るくなりつつあります。Cirium Fleetsのデータによると、オーダーブックは製造済みの在庫機材を含めて409機と健全な状態です。これらの受注分は計50社の航空会社に納入されます。さらにリース会社による30機の未成約の発注コミットメント(発注の誓約)、41機の未公表の顧客向けの機材受注、そして1機のBBJ(787)のオーダーがあります。Ascend by CiriumのValue Review Boardは、最近の市場調査を受けて、世界的な市況回復が続く中で787型機に対する需要が高まっていることを考慮し、787のすべての派生型機の現行市場価値を最大5%、現行市場リース料を最大17%それぞれ引き上げました。787の一定機齢ベースの市場価値は、パンデミック前に比べてなお25%以上低下していますが、現在は上昇傾向にあるようです。
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