筆者:Rob Morris – Global Head of Consultancy, at Ascend by Cirium
最近、エア・ヨーロッパとコンドル航空が、10機の737Max 8(および5機の787-9)をエアキャップから、19機のA320neoファミリーをエア・リースからそれぞれリースする契約について発表しました。いずれも納入は2024年から始まります。この動きは、航空会社が顕在化する需要回復のサイクルを通して、エアバスとボーイングからの限られた新機材導入枠に直面しながらも次世代航空機のフリート構築を目指す中、オペレーティングリース会社が引き続きその重要度を増していることを示しています。私たちは、リース会社のCEOたちから、市場が継続的に成長しているとの声も聞いています。リース機材は、2020年に世界で50%の市場シェア(オペレーティングリース会社が管理するシングルアイル旅客機とツインアイル旅客機のシェアとして測定。リージョナルジェットやターボプロップに関心のある方には申し訳ありませんが、今後は、そうしたシングルアイル機とツインアイル機を商用機材と称することにします)を獲得して勢いづいており、現在さらに増大し続けているのです。しかし、実際の数字はどうなっているのでしょうか。そして、そのような成長はどこで起きているのでしょうか。
考察するにあたって、今から約15年前の2007年8月に遡ってみましょう。今にして思えば、あれは、2001年9月11日の事件によって引き起こされ、SARSによって引き伸ばされた不況の後に始まった短い景気拡大のサイクルが、ちょうどピークにさしかかったころでした。世界金融危機はすぐそこに迫っていたものの、2010年には再び回復に向かい、長く非常に力強い拡大サイクルに入りました。その拡大期は2020年に突然終わりを告げたわけですが、2019年には市況はすでに減速し始めていました。2007年8月、Ciriumのフリートデータは、全世界で13,972機ほどの商用ジェット機が稼働中および保管中であると記録していました。その全機材のうち、オペレーティングリース会社が管理していたのは5,529機で、市場シェアは40%となっていました。また、シングルアイル機の46%がすでにオペレーティングリース会社によって管理されていたのに対し、ツインアイル機では26%に留まっていたというのも興味深い点です。
当時の航空会社やオペレーティングリース会社は、興味深い状況に置かれていました。このデータには、計699社の航空会社が記録されており、そのうち227社ほどは、機材をまったくリースしていませんでした。しかし、その227社は全機材の6%しかカバーしていませんでした。別の57社のリース比率は25%未満、さらに98社のリース比率は50%未満でした。つまり全体的にみれば、2007年当時、世界の航空会社の45%がすでに、保有機材の50%以上をリースでまかなっていたのです。航空会社の状況説明を締めくくると、当時の最大手航空会社10社は、全機材3,833機のうち652機をリースしており、リースの普及率は17%でした。
2007年が終わるころ、リース会社の競争はますます激しくなっていました。このデータには計133社のリース会社が記録されており、そのうち118社が、少なくとも1機以上のシングルアイル機を管理していました。100機以上の商用機材を管理していたリース会社は、実際には11社しかありませんでした。当時最も多くの機材を管理していたのはGECAS(1,185機)で、その次に多かったのはILFC(977機)でした。
2022年8月まで話を進めると、状況が一変したことが分かります。世界の商用機材のフリートは約64%増加し、現在は22,877機となっています。一方、全世界のリース機のポートフォリオは現在、2倍以上の11,750機で、市場シェアは51%となっています(私がマーケティングモードの状態であれば、小数点以下1桁を加えて51.4%とするかもしれません)。つまり、この15年間で、リースの市場普及率はほぼ12ポイント伸びているのです
ただし、その間に航空会社を取り巻く状況は大きく変化しました。現在の2022年8月には、1機以上の商用機材を保有する航空会社は計687社となり、2007年8月と比較してわずかに減少しています。しかし、その母集団の中の流動性は大きく、2007年8月時点の699社のうち400社はすでにこの中に存在せず、現在の母集団では新たに388社ほどが名を連ねています(この分析の目的のため、各航空会社の名前を単純に個々の航空会社として扱っていることに注意してください。例えば、ライアンエアー、ライアンエアーUK、バズ、マルタ航空、ラウダ・ヨーロッパは5社としてカウントしており、航空会社の名前の変更があれば、もはや存在しない名前、および新しい名前として扱っています)。リースの潜在顧客には多くの変化があるものの、全体の母集団はほぼ同じ規模なのです。
現在の687社のうち、リースしていない航空会社がなお214社ほどありますが、これも全フリートの7%をカバーしているに過ぎません。また、別の36社のリース比率は25%未満、さらに69社のリース比率は50%未満となっています。
これらを総合して計算すると、現在、世界の航空会社の55%が保有フリートの50%以上をリースしており、そのリース比率は15年前に比べて10ポイント増えていることになります。同様に航空上位10社では、現在計5,923機の保有フリートのうち、1,904機がリース機となっています。つまり、上位10社の航空会社におけるリースの普及率は32%であり、2007年比で15%ポイント上昇したことになります。
ここで少々脱線しますが、このトップ10には前述のライアンエアーが含まれており、同グループ全体の保有フリートを合計すると、ボーイングの737-800とMax8-200が計483機あるものの、そのうちリース機は1機もありません。それとは対照的に、ラウダ・ヨーロッパは、保有するA320型機29機のすべてをリースしています。
本題に戻って結論を出す前に、現在のリース事情を簡単に説明しておきます。2007年当時133社だったリース会社の数は、今は167社に増え、そのうち153社が1機以上のシングルアイル機を管理しています。つまり、市場シェアが拡大するにつれて、競合他社の数も増えてきています。2大リース会社について言えば、当然ながらエアキャップ(もちろん、2007年の最大手2社だったGECASとILFCを買収したため、現在の管理する商用機数は1,732機と記録されています)とアボロン(同じく588機)では、互いに事情が異なっています。しかし、100機以上の民間航空機を管理するリース会社の母数は29社に増え、そのうち11社が250機以上を管理しています。
2007年以降、民間航空業界が拡大した中で、それに先行してリース事業が成長してきたことは明らかです。冒頭の話に戻りますが、リース会社はOEMにはない貴重な機材の新規導入枠(スロット)を近い将来、利用できるようになります。さらに、リース会社は今後、事業を続ける中でより効率性の高い資本の利用が可能となり、自社の注文枠に加え、パーチェス・リースバック(購入とリースバック)を通じた航空会社への納入のための資金調達にその資本を活用できるようになります。すなわち、今後15年間は、過去15年間と同様に、リース比率がさらに上昇し続けることが予想されるのです。
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