筆者:Yiru Zhang, Valuations Analyst at Ascend by Cirium
新技術のギヤードターボファンを搭載したプラット・アンド・ホイットニー(P&W)のPW1000Gエンジンは、大変革をもたらす”ゲームチェンジャー”と称されたものです。 このエンジンファミリーは、前世代モデルと比較して燃費が大幅に改善され、ガス排出量が低減されています。このため、A320neo、A220、E-190/195 E2、MC-21、スペースジェット(SpaceJet)などの主要機材モデルに採用されてきました。しかし、一方でこのエンジンファミリーは、2017年に稼働を始めて以来、技術的な問題をいくつか抱えてきました。
KLMオランダ航空が先ごろ夏期スケジュールの微調整を発表したのを契機として、改めてPW1000G、特に新世代エンジンのPW1500/1900Gの問題点が浮き彫りになりました。KLMオランダ航空は、PW1900G搭載機であるE195 E2の技術的問題により発生したキャパシティ不足を解消するため、エンブラエルE190 E1を複数機、保持しています。P&Wは、供給上の問題やメンテナンス能力の不足により、問題のあるエンジンのアップグレードが出来ていないと報告されています。また、他の運航会社の一部機材も、同様の理由により運航停止状態となっています。
かなり多くのPW1000G搭載フリートが現在、保管状態になっているのです。下のグラフを見ても、P&W搭載のA320neoとA321neoは、LEAP-1A搭載機と比べて駐機・保管率が高いことが明らかです。特にA320neoは、P&W搭載フリートがLEAP-1A搭載フリートよりも13.2ポイント高い駐機・保管率となっています。
最も影響を受けている機種はA220とみられ、その機材数の急激な伸び率が、機材のフライト時間の増加率と一致していません。一部の運航会社は、E190 E1のリース期間を延長した前述のKLMオランダ航空の例と同様、自社の定期路線に機材を投入して定期運航を維持するために、代替機種を探さざるを得ない事態に陥っています。現在、A220の駐機・保管フリートの比率は18%ほどです。
E Jet E2ファミリーは、A220と比べてフリートベースが小規模であるため、全体的に影響は小さくなっています。E190/195 E2の駐機・保管フリート率は現在、16%ほどです。
こうした一時的な運航停止は航空会社に多大な影響を与えており、多くの不利益をもたらしています。P&Wは、技術的な修正やエンジンのアップグレードで対応していますが、この問題が長引けば、今後の受注に影響を及ぼす可能性があります。
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