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Airbus in flight above a building

Ascend Consultancy, 航空専門家の視点, 航空機業界の動向予測

Ascend Consultancyによる今後の展望:縮小する世界―時間と燃料

June 9, 2022

カンタス航空が発注した12機のA350-1000ULRは、コロナ禍後の成長の兆しとなるものです。

Richard Evans, Ascend by Cirium

筆者:Richard Evans, Senior consultant at Ascend by Cirium

カンタス航空が2025年にロンドンおよびニューヨーク行きのフライト「プロジェクト・サンライズ」を就航させるために発注した12機のA350-1000ULRは、コロナ禍後の成長の兆しとなるものです。これにより、超長距離路線の市場に再び注目が集まりました。

20年前に開かれたファーンボロー国際航空ショーでは、エアバスがA340-600のテスト機材を展示しました。その機体にあしらわれていたスローガンは「Longer Larger Farther Faster Higher Quieter Smoother(より長く、大きく、遠く、速く、静かに、滑らかに)」でした。ジェット時代の幕開け以来、こうした新機材の追求は、常にペイロード(有償搭載量)を増やし、飛行距離を伸ばし、飛行速度を高めてきました。より大型で速い機材の追求は、A380とコンコルドの性能がピークに達した後に失速してしまいましたが、超長距離路線への挑戦は2002年からずっと続いていました。

2000年代には、長距離に特化したA340とボーイング777のバリアントが就航するようになりました。この2機種ともに、非常に重量が重く、相対的に燃費が低かったため、成功を収めることはできませんでした。商用としての販売数量は、777-200LRが計60機、A340-500が計29機に過ぎませんでした。ごく最近では、 787-9またはA350-900の標準型機材を使用して超長距離に挑んでいます。ただし、座席数が少なくなったり、離陸重量や燃料の容量が増えたりするのが課題となっています。以下の寸評を読むと、最長距離フライトの推移が分かります。

A340-500と777-200LRの運航のピークは2011年でした。当時の最長飛行距離の2路線は、シンガポール―ニュ-アーク線(15,260km)とシンガポール―ロサンゼルス線(14,100km)で、使用機材は100座席のA340-500でした。このシンガポール発ニューアーク行きの便の予定ブロックタイムは、18時間55分でした。

シンガポール便のA340-500のフライトが休止された後の2015年の最長距離フライト(Ciriumスケジュールデータに基づく)の状況は、以下の通りとなります。

  • カンタス航空がA380を使用して運航したダラス―シドニー線の距離は13,800km、ブロックタイムは16時間50分
  • デルタ航空が777-200LRを使用して運航したヨハネスブルグ―アトランタ線の距離は13,570km、ブロックタイムは16時間40分
  • エティハド航空が777-200LRを使用して運航したアブダビ―ロサンゼルス線の距離は13,490km、ブロックタイムは16時間15分

2018年、シンガポール航空の最大離陸重量(MTOW)280トンのA350-900LRが就航しました。客室構成は、ビジネスクラス67席、プレミアムエコノミーが94席でした。しかし、これに先立ち、ユナイテッド航空とカンタス航空が、標準MTOWの787-9を使用して、いくつかの超長距離路線を運航していました。

新型コロナウイルスによるパンデミックが始まる直前の2019年12月時点では、以下の通り、再びシンガポール航空が最長距離のフライトを運航していました。

  • シンガポール航空がA350-900LRを使用して運航したシンガポール―ニューアーク線の距離は15,260km、ブロックタイムは18時間30分
  • カタール航空が777-200LRを使用して運航したオークランド―ドーハ線の距離は14,500km、ブロックタイムは18時間5分
  • カンタス航空が787-9を使用して運航したパース―ロンドン・ヒースロー線の距離は14,465km、ブロックタイムは17時間55分

カンタスが236座席(ビジネスが42席、プレミアムエコノミーが28席、エコノミーが166席)の787-9を使用して運航した便は、非常に高い人気を誇りました。これにより、カンタスは路線計画、追い風の利用、燃料管理の面で経験値を高めて、長距離路線の信頼度の高い周年運航ができるようなりました。パンデミックの最中は、オーストラリア西部の国境封鎖のため運航ルートがダーウィンに変更されましたが、ロンドン―パース線は2022年5月23日に再開されることになっています。

Ciriumの2019年の追跡利用状況データによると、パース発ロンドン・ヒースロー行きの便のフライト時間は、平均17時間4分でした(16時間16分から18時間4分の間で変動)。ロンドン・ヒースロー発パース行きの便は、16時間4分でした(15時間10分から16時間44分の間で変動)。

カンタスは2019年11月14日に一度、ロンドン・ヒースローからシドニーに向けてテストフライトを実施しました。使用機材は787、輸送人数は40人でした。このフライトは大円距離17.020kmを飛行し、フライト時間は19時間19分でした。

前述した2002年のA340のスローガンには、一つ欠けているものがあります。それは、燃料消費量の少なさを示す言葉です。航空業界は運航コストを減らすため、常に燃料燃焼と重量の低減を追求してきました。しかし、超長距離フライトでは、燃料燃焼は増大し、それゆえに二酸化炭素の排出量も増えてしまいます。この燃料燃焼やCO2排出量の水準は、低密度の座席配置で、コスト負担を分け合う貨物がわずかだったり、まったくなかったりする場合、一座席あたりで換算すると特に高くなります。 

Ciriumの世界航空機排出量モニター(Global Aircraft Emissions Monitor)の計算では、ロンドン発パース行きの各フライトは平均約95トンの燃料を消費します。約125トンの燃料を消費すると推定されるA350-1000ULRは、より長いフライト時間と、より大きな機体を考慮すると、ロンドン発シドニー行きのフライトに適しています。

A350がオーストラリアに向かう途中で寄港する場合、分割された2つの運航区間を合わせた燃料消費量は、直行便の場合よりも約10%少なくなります。これは、後半のフライトに必要な燃料の実重量を搭載していることによるものです。カンタスは、同社の新機種A350-1000ULRには、より小型の787-9よりもわずかに2席多い238席を搭載するとしています。標準の約330席の座席配置であれば、経由便とした場合の1座席あたりの節約規模はずっと大きくなるでしょう。

2025年のシドニー行きの直行便就航は、超長距離の追求において最終章となるものであり、寄港地をなくすことにより、速度も確実に速まります。しかし、これは燃料と二酸化炭素排出というコストをかけて実現するものです。旅客1人あたりのCO2排出量は、ワンストップのフライトと比べて最大50%多くなります。カンタスは、各フライトは最初からカーボンニュートラルで運航されるとしており、環境意識が高まる今の時代においては、超長距離フライトが正当化され得るということを実証する必要性を強調しています。

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