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航空会社によるACMIの徹底活用
ACMIというリース形態が主要航空会社にとって不可欠な戦略となっていることを踏まえ、どの航空会社がその専門プロバイダーの機材を徹底活用しているかを考察します。
Cirium Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントによる最新情報の全文をお読みください。Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントは、航空会社、航空機製造・メンテナンス企業、金融機関、保険会社、非銀行系投資家に緻密な分析、解説、予測を提供するエキスパートです。
Cirium Ascend Consultancyのチームをご紹介します。


Team Perspective
Toshimitsu Sogabe
Aviation Consultant
Cirium Ascend Consultancy
航空会社にとって機材、乗務員、整備、保険(ACMI)のリースは、運航面の課題に対処する上でますます不可欠な戦略となっています。新造機材の納入遅延、部品不足につながるサプライチェーンの制約、整備ターンアラウンド時間の長期化、全体的な運航上の制限といった要因が、ACMIソリューションに対する需要を押し上げ続けています。このような状況下で、私たちは、ACMI専門プロバイダーのフリートを徹底して活用している航空会社を評価してみました。
以下の表には、2024年7月(北半球の夏)時点でACMIプロバイダーからの旅客フリートを多く保有していた航空会社上位10社が列挙されています。注意していただきたいのは、Cirium Fleets Analyzerで非ACMIプロバイダーとして分類されている”伝統的な”航空会社は含まれないということです(例えば、フィンエアーは自社保有のA330をカンタス航空にウェットリースしていますし、エア・バルティックはA220をルフトハンザ・グループにウェットリースしています)。
Airlines | Jul-2024 | Fleet from ACMI | |
1 | Lufthansa Group | 35 | E190 E1/E2, CRJ1000, A320 |
2 | THY (Ajet) | 25 | A320, A321, 737 Max 8 |
3 | TUI Group | 24 | A320, 737-800, 737 Max 8 |
4 | VivaAerobus | 21 | A320 |
5 | SAS | 20 | CRJ900 |
6 | Indigo | 16 | A320 |
7 | Air France-KLM Group | 13 | E190 E1, A319, A320, A330-200 |
8 | Condor | 9 | A320, A321 |
8 | Wizz | 9 | A320, 737-800 |
10 | Jet2 | 8 | A320, A321 |
Others | 118 | ||
TOTAL | 298 |
出典: Cirium Fleets Analyzer
上記のリストには、フルサービスキャリア、格安航空会社(LCC)、リージョナル航空会社、貨物を運ぶ航空会社など、多様な組み合わせの航空会社が反映されています。
これとは対照的に、2025年1月(北半球の冬)時点の上位10社には、ACMIの専門プロバイダーからのフリートを増やしたり減らしたりする航空会社がある一方で、完全にリストから外れる航空会社もあり、順位に変動が見られます。
Airlines | Jan-2025 | vs Jul-2024 | |
1 | VivaAerobus | 24 | 3 |
2 | Indigo | 18 | 2 |
3 | Lufthansa Group | 23 | -12 |
4 | SAS | 15 | -5 |
5 | THY (Ajet) | 13 | -12 |
6 | Condor | 7 | -2 |
7 | Air Peace | 6 | 6 |
7 | Air France-KLM Group | 6 | -7 |
9 | Saudia | 4 | -1 |
9 | Air Arabia | 4 | 1 |
9 | El Al | 4 | 1 |
9 | Azerbaijan Airlines | 4 | 1 |
9 | PSA Airlines | 4 | 1 |
Others | 76 | -69 | |
– | TUI Group | 2 | -22 |
– | Jet2 | 0 | -8 |
– | SunExpress | 0 | -7 |
TOTAL | 204 | -94 |
出典: Cirium Fleets Analyzer
ルフトハンザ・グループ、ターキッシュ・エアラインズ(子会社のアジェを通して)、エールフランス-KLMグループ、スカンジナビア航空などのフラッグ・キャリアがACMIプロバイダーのフリートについて、2025年1月にもその数をやや減らしつつ活用を継続している一方で、レジャーおよびツアー系の運航会社がそのようなフリートの使用を大幅に縮小または完全に廃止していることは注目に値します。最も顕著な例はトゥイ・グループです。2024年7月時点では22機の機材を運航していましたが、その大半を2025年1月までにACMIプロバイダーに返却しました。同様に、2024年7月時点ではACMIプロバイダーのフリートを組み込んでいたJet2とサンエクスプレス(それぞれ8機と7機)は、2025年1月までにACMIプロバイダーから調達したフリートの使用を完全に中止しました。これについては、レジャーおよびツアー系運航会社の繁忙期と閑散期の需要の変動が大きいことを考えれば理解できます。これに対し、インディゴは、プラット・アンド・ホイットニー製GTFエンジンの問題に起因する自社所有機およびリース機の継続的な運航停止を補うため、ACMIプロバイダーからのフリートを維持(実際には若干増加)しています。
Operator Region | Jul-2024 | Jan-2025 | Jan-2025 vs Jul-2024 |
Europe | 199 | 87 | 44% |
Africa | 31 | 23 | 74% |
Asia Pacific | 26 | 32 | 123% |
Latin America | 24 | 35 | 146% |
Middle East | 13 | 20 | 154% |
North America | 5 | 7 | 140% |
TOTAL | 298 | 204 | 68% |
出典: Cirium Fleets Analyzer
上記のグラフは、ヨーロッパが、ACMIプロバイダーからのフリートの利用の面でなお最大の市場であることを明確に示しています。興味深いのは、他の大陸に比べて航空部門が比較的小規模であるにもかかわらず、アフリカが第2位の市場になっていることです。アジア太平洋およびラテンアメリカ市場におけるACMI需要の大部分は、インディゴとビバエアロバスが牽引しています。このため、両社を除外すると、これらの2地域におけるACMIプロバイダーからのフリートの使用実績が大幅に減ることになります(トルコは、Cirium Fleet Analyzerでは「ヨーロッパ」に分類)。さらに、ヨーロッパの航空会社は、2025年1月にはACMIプロバイダーからのフリートの使用を大幅に減らしています。 一方、他の地域は全体的に増加していますが、アフリカだけは例外で、わずかに減少しています。これは、航空交通量の季節変動(南半球の国々を含む)や、インディゴのケースで見られたように、ACMIの使用を余儀なくさせる季節以外の課題など、複合的な要因によるものと考えられます。
上述の通り、”伝統的な”航空会社が提供するウェットリースについては評価していないため、この評価が、市場におけるすべてのウェットリース需要の影響を完全に捕捉したものではないという点に留意することが重要です。しかしながら、その範囲内であっても、ACMIの活用に関する航空会社の要件や運航戦略には、明確な違いが見られます。