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“静かな”ファーンボロー航空ショーでツインアイル機が際立ちを見せる


260億ドル相当の取引が発表され、ユニット数、価値ともにエアバスが先頭に立ちました。

Aircraft Appraiser of the Year
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Max Kingsley-Jones

Team Perspective

Max Kingsley-Jones
Senior Consultant
Cirium Ascend Consultancy

7月下旬に開かれたファーンボロー航空ショーでは、計260件の新規受注と発注コミットメントが発表されました。 ショーでの発表数としては近年で最も少ない規模だったのですが、Cirium Ascendでは、すべての新規取引の合計額は260億ドル(フルライフ価値ベース)に近いと推定しています。

ショーで発表された取引の大半は”ビッグ2″メーカーに対するもので、その数は245機に上ります。残りの15機は、リージョナル・ターボプロップ機(ATRとデ・ハビランド・エアクラフト)でした。メインライン向け航空機の発注および発注コミットメントの3分の2(164機)は、エアバスの帳簿に計上されていました。

Ciriumのフリートデータによると、今回のファーンボロー航空ショーでは、ワイドボディ機関連の発表が比較的多くなりました。総受注・コミットメント数はツインアイル機(貨物機を含む)がシングルアイル機を少し上回り、その内訳は126対119となっています。ツインアイル機の発注・コミットメントの総額は188億ドルです。これに対してシングルアイル機は70億ドルでした。

ファーンボロー航空ショーにおけるエアバス、ボーイングの航空機カテゴリーおよび金額別の発表内容

bar chart: Farnborough Airbus/Boeing announcements by aircraft category & value
Source: Cirium Fleets Analyzer, *Includes factory freighter. Data includes firm orders and commitments to order

今年、ツインアイル機市場が重視されているのは、シングルアイル機の生産ライン全体にはびこる過度に長いリードタイムを考えれば当然のことです。航空関連業界ではコロナ禍後、ツインアイル機の受注がやや少なくなっていたのですが、現在では10年後にかけて受注残の数が伸び始めています。

エアバスとボーイングは、合わせて91件の新規確定受注と154件の受注コミットメントを発表しました。

ボーイングは、ツインアイル機と貨物専用機(フレイター)の発表比率が比較的高いため、金額ベースではライバルのエアバスに肉薄しています(シェア44%)。

ショーにおいて総機材ユニット数の点で最大規模の発表を行ったのは、サウジアラビアの格安航空会社フライナスです。同社は、A320neoファミリーの75機とA330-900の15機、合計90機の購入を発表しました。いつも多くみられる中東系航空会社の発表は、今回は顕著に少なくなりましたが、カタール航空は3月に777-9を20機発注していたことを明らかにしました。 ほかの中東系からの発表は、エミレーツ航空のみでした。同社は777F(新造フレイター)を新規に5機、確定発注しています。

それでも、アジア太平洋地域の機材オペレーターがそれを補いました。4社合わせて106機の航空機の発注を発表し、ショーにおける取引ユニット数の43%を占めました。この地域のユニット数の中には、JAL(A321neo・11機、A350・20機、787・10機)、大韓航空(777-9・20機、787・20機)、ベトジェットエア(A330-900・20機)、ドルック・エア(A320neoファミリー・5機)が含まれています。

ファーンボロー航空ショーにおけるエアバス、ボーイングの地域および航空機カテゴリー別の発表内容

bar chart-Farnborough Airbus/Boeing  category17
Source: Cirium Fleets Analyzer, *Includes factory freighter. Data includes firm orders and commitments to order

世界の他地域の航空会社からの取引発表は、あまり目立ちませんでした。ヨーロッパからの発表は2件のみで、うち1件はヴァージン・アトランティック航空のA330-900・7機、もう1件はルクスエアの737-10 Max・2機となっています。アメリカの取引は1件のみでした。マイアミを拠点とするナショナル・エアラインズが、777F・4機の発注コミットメントを発表しています。ゴル航空とアビアンカ航空の親会社であるアブラ・グループは、ラテンアメリカ地域で唯一、A350・5機の発注コミットメントを発表しました。アフリカでは、リビアのベルニク・エアウェイズ(Berniq Airways)が、6機のA320neoファミリーを発注しました。

今年のショーでは、伝統的に多いリース会社からの発表はあまりありませんでした。マッコーリー・エアファイナンス(Macquarie AirFinance)のみが発注(737-8Max・20機)を発表しています。

エンブラエルは、ショーでの商業的な受注の発表こそありませんでしたが、E-Jet E1コンバージョン貨物機、E2旅客機バリアント、C-390エアーリフターを展示し、目を引きました。C-390エアーリフターについては、オランダとオーストリアから受注があったとしています。ブラジル系OEMの商業部門のCEOであるArjan Meijer氏はショーの中で、正式発表はしていないものの、少なくとも300機の航空機に関する様々な取引について現在交渉中であると述べました。

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