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Ascend Consultancy, 航空専門家の視点

Ascend Consultancyによる今後の展望:AAM Snapshot 2023年7月版 – 国際イベントが機材、路線、受注について紹介する場に

August 8, 2023

前回5月のSnapshot公開以降、500機弱のeVTOL(電動垂直離着陸機)とリージョナル電動機の新規の発注コミットメントが発表されています。その発表のほとんどは、パリ・エアショーの期間中に行われました。

筆者:Tim Chun-Hing Li, Aviation analyst at Cirium Ascend Consultancy

Ciriumは、昨年4月にAdvanced Air MobilityとElectric Aircraft Sector Datasetsを発表した。この市場セクターはますます幅広くなっているため、この分析ではeVTOLとリージョナル電動航空機に分けている。

これまでのデータのカバー範囲をみると、下の表に要約されている機種がますます多く含まれているのが分かります。

Market GroupingTypeComments
eVTOL – UAV/UASALIA-250c 
eVTOL – Urban Air MobilityALIA-250 
eVTOL – Urban Air MobilityANN2 
eVTOL – Urban Air MobilityAero3 
eVTOL – Urban Air MobilityAtea 
eVTOL – Urban Air MobilityButterfly 
eVTOL – Urban Air MobilityCopterPlane CP-01Recently added type
eVTOL – Urban Air MobilityCora 
eVTOL – Urban Air MobilityE20 eVTOLRecently added type
eVTOL – Urban Air MobilityEH216 
eVTOL – Urban Air MobilityEve 
eVTOL – Urban Air MobilityJourney 
eVTOL – Urban Air MobilityLilium Jet 
eVTOL – Urban Air MobilityMidnight 
eVTOL – Urban Air MobilityOdys eVTOLRecently added type
eVTOL – Urban Air MobilityProsperity 1Recently added type
eVTOL – Urban Air MobilityS4 
eVTOL – Urban Air MobilitySD-05Recently added type
eVTOL – Urban Air MobilityVT-30 
eVTOL – Urban Air MobilityVX4 
eVTOL – Urban Air MobilityVoloCity 
eVTOL – Urban Air MobilityVoloConnect 
Business Electric – Multi EngineElectra eSTOL 
Business Electric – Multi EngineAlice 
Business Electric – Multi EngineElectron 5Recently added type
Business Electric – Multi EngineM200 
Business Electric – Multi EngineeFlyer 800 
Business Electric – Single EngineCX300Recently added type,
Business Electric – Single EngineCassio 330Recently added type
Regional Electric – SmallERA 
Regional Electric – SmallES-19Type cancelled by OEM
Regional Electric – SmallES-30 
Regional Electric – SmallMaeve 01Recently added type
Regional Electric – SmallPHA-ZE 100Recently added type

eVTOL – アーバンエアモビリティー(UAM)

前回5月のSnapshot公開以降、500機弱の新規の発注コミットメントが発表されています。その発表のほとんどは、去る6月のパリ・エアショーの期間中に行われました。これらの発注コミットメントは、ノルディック・アビエーション・キャピタル(NAC)、ADAC Luftrettungヴィデロー航空(Wideroe)、Voarなど、いくつかの定評のある企業からのものです。最近では、航空とは関係のない企業の参入も増えています。韓国の大手インターネット・サービス・プロバイダーであるカカオ(VX4を50機)や、大阪最古のタクシー会社「大宝タクシー」の子会社「そらとぶタクシー」がその例です。さらに、このデータには、80以上の異なる顧客から19の異なるAAM(先進航空モビリティ)のOEMに対し、計8,300件以上の拘束力のない発注コミットメントがあったことが記録されています。

New Commitment fromTypeQuantity
NACEVE30
LuftrettungVolocopter Volocity152
WideroeEVE50
VoarEVE70
Kakao MobilityVertical Aerospace VX450
Soratobu, Daiho Taxi Co.Plana CopterPlane CP0150

エンブラエルの子会社イヴ・エアモビリティー(Eve Air Mobility)のプロジェクトである「EVE」は、判明しているだけで20社以上から計2,850機の発注コミットメントを獲得しており、市場でトップの座を維持しています。この機材は、座席数が「4プラス1」で、8枚の電動プロペラと分散型電気推進システム(DEP)を備えた設計となっています。DEPは、機体に複数のプロペラとモーターを搭載し、そのうちの1つが故障しても、稼働している他のモーターやプロペラを使って機体を安全に着陸させることを特徴としています。ランディングギアには、ヘリコプタータイプのスキッド方式を採用しています。

Vertical Aerospace Ltdは、OVO EnergyのCEOであるStephen Fitzpatrick氏によって設立されました。その「VX4」デザインの機材には、11社計1,550件の発注コミットメントが寄せられています。こちらも4プラス1人乗りで、8基の電動エンジンと、DEPシステムを搭載した設計となっています。この機材はEveとは逆に、格納式の3つの車輪のランディングギアを備えています。

「コロナ後」の時代を迎える中で今、大きなスポーツイベントや展示会が世界中で再開されつつあり、そのような場がこうした機材に注目のトップニュースとなる機会を提供しています。パリ・エアショーを例にとると、VolocopterによるVolocityのデモフライトは静かで、モーター音を聞き取るのが難しいほどです。特に、他のすべての航空機が、ジェット噴射音によりその静音を容易に覆い隠せることを考えれば、なおさら静かなものです。しかし、eVTOLは音を立てないことで、かえって周囲を騒がせ、驚かせることに成功したのです。 2024年のパリ五輪と2025年の大阪万博を控え、業界の一部の関係者や関係企業は、単に現場で飛行デモンストレーションを行うだけでなく、そうしたビジネス機会に商用eVTOLのフライトサービスを実際に提供することで、耳目を集めようとしています。

2024年7月26日の「パリ五輪2024」開幕まで12ヵ月を切る中、Volocopterは、eVTOL機「Volocity」の商用運航を開始する計画を改めて発表しました。このバッテリー駆動のマルチローター機は2人乗りで、航続距離は35kmと比較的制約のある設計となっており、その機体はEVEやVX4と比べるとかなり小型です。それでも、Volocopterは広報活動に余念がなく、既に世界中で何度も有人デモフライトを実施しています。 この機種は現在362機の発注コミットメントを得ていますが、これは Volocopterが最初に自社で運航する可能性のある機材を除いた数字です。ドイツに拠点を有するこのOEMのパリでのフライト運航の進捗状況については、フランス民間航空局(DGAC)が最新のプレスリリースでお墨付きを与えており、「順調に立ち上がり、軌道に乗っている」と記しています。

一方、日本では、政府主導のAAM構想が始動しています。

2025年に大阪万博を開催する日本は、夢洲(ゆめしま)と人口密度の高い関西都心部を結ぶ商用eVTOLフライトを運航することで、万博という機会を日本におけるAAM導入の第一歩とすることを目指しています。

この構想は、日本のすべての大手企業とは言わないまでも、その多くの企業をeVTOL分野への投資に駆り立てています。そうした企業は、VX4、EVE、VolocopterといったeVTOL大手との発注コミットメントに加えて、日本のAAM製造OEMであるSkyDriveにも投資しています。 SkyDriveは現在、SD-05というバッテリー駆動のマルチローター機のコンセプトを展開しています。この機材では、3人を15km飛行させることが可能です。 フライト運航という点では、日本の大手航空会社であるANAとJALが指名を受け、2025年の大阪万博期間中にeVTOLを運航することになっています。

こうした前向きなニュースから一歩引いて考えてみると、ある問題が重くのしかかってきます。それは、航空機の認証の取得手続きです。商用eVTOLの旅客フライトを実現するため、必要な期間内に複雑な認証プロセスを遂行することは、可能なのでしょうか?

その複雑さを説明するべく、既に確立されている商用旅客輸送サービス部門を例にとれば、認証は複数、取得しなければなりません。まず、運航会社は、航空機(設計機関承認および製造機関承認を得て設計・製造されたものでなければなりません)の型式認証とは別に、商用フライトサービスを提供するための航空運送事業許可証(AOC)を取得する必要があります。また、特定の路線ごとに運航免許も取得しなければなりません。さらに、航空機の継続的な耐空性を保証するため、ほとんどの場合、運航会社が自ら継続耐空性管理組織となり、承認整備機関(MRO)を通じて航空機を整備することになります。

加えて、まったく新しい資産クラスとして、パイロットの資格だけでなく、離着陸用飛行場に関するeVTOLの新しい規格への準拠も必要となります。

これらはすべて相互依存関係にあるため、日本政府主導で進めることにより、トップダウンの手法を通して、国内においてより良好なコーディネーションとサポートを得ることができます。とはいえ、2年間でこうした作業のすべてを完了させるというのは大きな課題です。ただし成功すれば、AAMの導入を現実のものとするための大きな節目となるでしょう。

ビジネス電動機 – マルチエンジン

ビジネスおよびリージョナル電動機のカテゴリーでは、競合する会社は主に11社あり、これまでに合計で1,700件弱の発注コミットメントを獲得しています。

ハート・エアロスペース(Heart Aerospace)のES-19はES-30に変更されており、現在のES-30の総発注コミットメント数は430機で、このカテゴリーのオーダーブック総数の22%以上を占めています。Aura Aero(オーラ・アエロ)のERAは20%、Electra(エレクトラ)のeSTOLは18%のシェアをそれぞれ維持しています。

このカテゴリーでは、ユナイテッド航空とメサ航空が買い手として市場を先導しています。それぞれHeartのES-30について100機を正式発注し、50機をオプション契約として発注しており、この機種の発注コミットメント総数に占めるシェアはいずれも33%となっています。

BetaのCX300は、新たに記録されている機種です。CX300はBetaのAlia-250のバリアント(変異機種)であり、FAA(米連邦航空局)のCS-23小型航空機カテゴリーとして認定された完全電動式のeCTOL機です。同機種は現在、ブリストウ(Bristow)とニュージーランド航空から計128機の発注コミットメントを受けています。

概観すると、リージョナル電動航空機は、APAC(アジア太平洋)地域ではあまり勢いづいておらず、アメリカのメサ航空のようなリージョナル運航の航空会社から、発注コミットメントをほとんど得られていません。結局のところ、APACのオペレーター(運航会社)は、より大きな機材を運航することを好んでいるのです。一方で電動航空機の設計では、現時点では座席キャパシティが最大30席しかありません。リージョナル路線であっても、40人乗りの航空機が使用されることは極めて稀です。今のところ、この地域で電動航空機の発注コミットメントを行っている航空会社はニュージーランド航空だけです。同社は2027年までに、23機の発注コミットメントを行っているEviationの9人乗りのAliceを使用して、ゼロエミッションの国内線サービスを提供することを目指しています。


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