筆者:Chris Wills, Head of consultancy operations at Cirium Ascend Consultancy
いかなる不況からの回復であっても、その機材資産に与える影響はさまざまです。ただ、その典型的な傾向を観察することは可能です。一般に、最も流動性の高い低機齢の機材資産は、市場が好転した際、より迅速に利益を得ることができます。そうした若い機材は、比較的高い稼働率が維持され、駐機・保管されているフリートの割合が少ないため、市況悪化の影響が最も小さく、通常の稼働水準に戻るのが最も早くなるのが普通です。
機材の市場価値(マーケットバリュー=MV)とリース料についても、市況の変化よりわずかに遅れをとりつつも、大抵は市場が変動する需給状況を解釈するにつれて、稼働フリートと同様の傾向をたどるようになります。
最近のA330の価値とリース料の変動を踏まえると、そのミディアムツインのワイドボディ機は再評価すべき代表的な機材グループです。新しいCirium Ascend Value Trendsツールでは、前述したトレンド、特に機材世代間の差違を迅速に視覚化します。当然ながら、機材タイプや機齢の組み合わせは無数に考えられます。
機材タイプについてある種の文脈を加えるとすれば、過去3回の不況のたびに、駐機・保管機材の割合が大幅に上昇したことがみてとれます。なかでも、直近の市況低迷時の上昇ぶりが最大です。それでも、すべてのケースで、最新鋭の機材については、駐機・保管フリートにおける機数の割合が最も低かっただけではなく、通常の稼働水準に復帰するのも最も早かったのです。
このような機材タイプにまつわるフリートの力学を知るには、リース料を見ることが有効です。なぜなら、リース料は市場価値を先導する傾向があるからです。
複数の機材世代を横断して比較することは難しいかもしれませんが、一定機齢ベースのデータは、長い生産期間にわたる傾向を把握する良い方法です。最初の例は、機齢5年の機材です。この場合、767-300ERの最近のリース料の推移を見る上では限界がありますが、A350-900の市場リース料の低下具合が、A330-300(HGW)に比べていかに小さかったかを示しています。 A350-900の市場リース料についても、回復が早かった可能性があります。さらに遠い過去の景気低迷期を振り返ってみると、当時の新世代機の市場リース料が、より迅速に回復したことは明らかです。767-300ERとA330-300HGWの2009年以後の回復状況を比較すると、それがよく分かります。この例では、767-300ERは基本的に低い水準へと恒常的にシフトしていますが、一方でA330-300HGWは実質的に、767が生産サイクルの同じような時期に経験した水準へと戻っています。
先に述べたように、最初のリース料のグラフでは、767-300ERの最近のリース料について、その全体像は示されていません。このため、今度は機齢9年の一定機齢で見ると、A330のリース料が、旧型機に先行して回復を始めていることが分かります。その水準はA350には遠く及ばず、2009年以後に見られた水準よりも基本的に低い水準での安定化が予想されます。これは、ある機材タイプが生産ライフサイクルを経ていく際の典型的なトレンドです。それでも、A330が今年、市場価値とリース料の両面で上昇傾向にあるのは明らかです。
今年2月、Cirium Ascend ConsultancyはLinkedInでの投稿で、A330-300(HGW)のリース料が19%も上昇したことを公表しました。当社のダブリンを拠点とするアナリストであるConnor Diverが動画で説明したように、3月にはリース会社の遊休フリートが2022年6月からほぼ半減しました。直近では、私の同僚であるLalitya Dhavalaが自身の最新報告で、A330-300のさらに力強い回復ぶりについて指摘しました。そのリース料は、ヴィンテージ(年式)により最大30%上昇しています。
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