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燃料不足に見舞われる日本の空港―インバウンドの急増が問題なのか?


日本の旅行業界はいま、回復、復元力、そして課題への対応という複雑な局面に立たされています。

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Joanna Lu, Ascend by Cirium

筆者:Joanna Lu, Head of consultancy Asia, Cirium Ascend Consultancy

日本は豊かな文化遺産、技術革新、さらに風光明媚な自然の美しさで称賛され、世界の観光客を魅了する重要な国であり続けてきました。最近、日本の地方空港や成田のような主要空港で、インバウンド旅行の増加を背景にした燃料供給の危機的な問題が報告されています。しかしながら、よくよく考えてみると、こうした課題は、渡航者数の増加だけに起因するというよりも、日本の高齢化および厳格な移民政策によって悪化したサプライチェーンの混乱や労働力不足に起因するものであることが分かります。

日本政府観光局(JNTO)は、韓国、台湾およびその他のアジア諸国からの観光客が大幅に増加していると報告しています。しかし、中国から日本へのアウトバウンド観光の回復が遅れているため、進化する旅行パターンを検証しつつ、日本にとっての現在の最大インバウンド市場を特定することが不可欠です。今回の分析では、日本の海外旅行の状況、特に今後2ヵ月間に予定されている主要路線の座席キャパシティに焦点を当てて、それらの傾向を新型コロナウイルスのパンデミック前の水準と比較します。

私たちはCiriumのスケジュールデータを活用し、パンデミック後の航空会社のキャパシティ力学の変化を観察しています。中国市場は日本にとって依然として大きく落ち込んでおり、今年第3四半期の座席数は2019年同期比で6%減少しました。それでも、韓国は日本にとって最大の国際線の目的地市場となり、座席数が2019年第3四半期と比較して10%増加しました。

加えて、日本はオーストラリアとベトナムに新たな市場機会を見出しており、2024年第3四半期には、2019年同期の水準に対してそれぞれ29%と9%の増加を予測しています。

都市レベルで検証すると、路線によって大きな違いがあり、需要のパターンが変化していることが分かります。

主要市場が力強く回復

7月と8月にソウル行きの出発便座席数が20%近く増加したことは、日韓間の文化的結びつきとビジネス関係の拡大による力強い回復ぶりを裏付けています。外交努力の強化や渡航制限の緩和も、この座席数急増に寄与しています。韓国と日本の間の旅行は現在、両国が短期訪問のためのビザなし渡航を再開したこともあって、かなり容易になりました。韓国国民と日本国民は、観光または商用目的の90日以内の滞在であれば、ビザなしで両国を往来できるようになっています。

ビジネスと観光の中心地における復元力

台北便の座席数は7月に8%、8月に4%、それぞれ増加しました。これは、国際会議や各種展示会の再開や、日本と台湾のハイテク産業の強固な連携に後押しされ、ビジネスと観光の旅行が復活したことを示しています。上海便の座席数は、7、8月ともに2%の増加となっています。バンコク便の座席数は、7月はなお27%の減少となりましたが、8月には増加し、パンデミック前の水準に達しました。シンガポール便の座席数は7、8月ともに4%増加しています。航空路線における日本との強い接続性と、両国の戦略的なビジネス関係に支えられて地域間旅行が促されており、そこにシンガポールの回復力が映し出されています。シンガポールは、パンデミックの問題に効率よく対処したことで、日本発着の旅行者の玄関口としての魅力が増しました。香港市場は完全には回復していません。主にキャセイパシフィック航空の機材供給不足によるもので、香港便の座席数は約14%減少しています。

伝統的なアウトバウンド市場が抱える課題

その一方、釜山、マニラ、ホノルルといった伝統的なアウトバウンド市場は、日本からのアウトバウンド旅行の減少により、出発便座席数が2019年の水準と比較して減少しています。釜山は接続性が拡大したソウルとの競争の中で需要減に直面し、マニラとホノルルは経済の不確実性を背景に観光客の消費力の減退に見舞われています。

燃料供給の不足の問題については、需要サイドの要因よりもむしろ供給サイドの制約によるものとみられます。

今年第3四半期の日本発の全体的な国際線座席キャパシティはなお2019年の水準と比べて約7%下回っており、国内線座席キャパシティも2%減少しています。

2024年第3四半期の日本発(国際線・国内線)の総座席数は、昨年同期比では6%増えており、現在の座席不足をインバウンド需要の急増によるものとする根拠としては不十分です。

原油精製から生まれるジェット燃料は現在、生産量が減少しています。日本における省エネルギー対策や脱炭素化の取り組みの中で、ガソリンやその他の石油製品の需要が減少しているためです。日本の石油卸売会社は統合を進め、製油所の数を減らしており、1983年には49あった稼働製油所が、2024年6月現在では20しかありません。その結果、燃料は空港に届けるのにさらに遠くまで移動させなければならず、海運業者と陸運業者の双方に影響を及ぼす労働力不足が、この問題に拍車をかけています。さらに、日本最大の製油所であるENEOS鹿島製油所の技術的問題が、状況を悪化させているのです。

燃料不足はすでに日本中の空港、特に地方空港で障害を引き起こしています。Ciriumの空港別のスケジュールデータを見ると、地方空港によって便数の伸び方に大きなばらつきがあることが分かり、特定の場所での問題の深刻度を示しています。Cirium Ascend Consultancyは今後もこの状況を注視していきますが、危機の主な要因は、日本への旅行が急速に回復していることではないと考えています。

日本の旅行業界はいま、回復、復元力、そして課題への対応という複雑な局面に立たされています。これらの問題に対処するためには、進化する旅行力学とサプライチェーンの制約に直面しながらも、持続可能な成長と安定を確保するための戦略的計画と、さまざまな部門間の協力が必要となります。

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