筆者:Richard Evans, Senior consultant at Cirium Ascend Consultancy
2週間前に、まったく異なる2つの航空機研究プログラムにおける2つの重要な節目となる発表がありました。いずれも最終的には、シングルアイル機または小型ツインアイル機市場の既存のタイプに取って代わる、急進的で新しい商用機材プラットフォームに繋がる可能性がある内容です。
ボーイングはプレスリリースを発行し、ボーイング・NASAの機材であるX-66Aサステナブル・フライト・デモンストレーターへの改造作業を開始するため、8月15日に自社所有のMD-90型機(N931TB)をアメリカのビクタービルからパームデールまで飛行させたと発表しました。これは、遷音速トラス支持翼(TTBW)プログラムとも呼ばれています。
この機材は最終的に、新しいトラス支持構造の超高アスペクト比(縦横比)の主翼と、主翼から前方の部分が短縮された胴体を有することになります。エンジンについては、胴体搭載型のV2500から主翼搭載型のプラット・アンド・ホイットニーPW1100Gに変更されます。
このプログラムに対し、ボーイングは既に総額7億2500万ドルの拠出を約束しており、NASAもさらに4億2500万ドルの資金を提供することになっています。初飛行は2028年の予定です。
では、このデモンストレーター(実証機)は、いずれ737Maxの後継機に発展していくのでしょうか?確かにその可能性はあります。ボーイングは、デモンストレーター機では燃料消費量を30%節約できるとしています。
しかし、抜本的な翼の変更にもかかわらず、燃料節約の実現についてはなお、まったく新しいエンジンを組み込むことに依存しています。そのエンジンは、CFM RISE技術のデモンストレーターをベースとしたものになる可能性があります。これらすべてのスケジュールを考慮すると、新型機が2035年または2036年よりずっと早く商用運航を開始する可能性は低いと思われます。
念のため補足しておくと、シングルアイル機市場におけるボーイングの確定受注残の市場シェアは現在37%に低下しています。一方、エアバスは現在、大型シングルアイル機部門(A321neo対737 Max 9/10)で85%という圧倒的なシェアを誇っています。この問題については、長期的にはTTBWが解決に役立つ可能性があります。
今週行われた2つ目の大きな発表も、中規模市場サイズのカテゴリーにおける将来の解決策として注目されている航空機に関するものです。それは、米空軍省(DAF)が、「新興企業(スタートアップ)」であるJetZeroに2億3500万ドルの契約を付与し、同社の翼・胴体一体型のブレンデッドウィングボディ(BWB)機の開発資金を援助するという内容でした。米空軍のプレスリリースには、「この取り組みは、BWB技術を成熟させてその能力を実証することにより、米空軍と民間業界に対し、将来の航空プラットフォームの選択肢を増やすことを目的としている」と記されています。
JetZeroは以前、その機材デザインについて、座席あたりの燃料消費量を約50%削減した767サイズの航空機としてアピールしていました。
ところが、近い将来を見据えたもっと現実的な狙いは、「次世代空中給油システム」(NGAS)の計画に表れているようです。このプログラムは、2030年代までに、米空軍にステルス性のタンカー機を提供することを目的としています。
JetZeroは既に、ノースロップ・グラマンの完全子会社であるスケールド・コンポジッツと提携関係を結んでいます。初飛行は2027年とされていますが、これは極めて楽観的な見通しと言えるでしょう。とはいえ、この機材は2030年代後半には、将来の商用機としての応用に繋がっていく可能性があります。その本格的な実証機にはプラット・アンド・ホイットニーのPW1100Gエンジンが使用される予定です。これは、(双発機であると仮定すれば)小型機か767サイズのBWBのいずれかについて、実際に重量や推力を大幅に軽減できることを示唆しています。
eVTOL(電動垂直離着陸機)、ハイブリッド電動航空機、水素エンジン搭載航空機のプロジェクトはここ2年間、メディアで大きく取り上げられ、投資も行われてきましたが、まだ運航サービスの開始には至っていません。
無数に提案されているそれらの機材タイプへの投資額は、X-66AやBWBのプログラムに関する投資額をはるかに上回ります。しかし、そうした代替燃料機関連のすべてのプロジェクトは、今日の商用機市場の活動において、ほんの一部分を占めるに過ぎません。
トラス支持翼やBWBの新しい航空機は、従来の推進技術を使って、さらにもう一段の技術の飛躍を生み出すことができるでしょうか?これは魅力に満ちた展望であり、先進航空モビリティ(AAM)や島々を短距離ルートで飛び回る水素航空機とは対照的に、航空業界における現在のカーボンフットプリントの大部分に関係してくるものです。
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