筆者:Taylor Ellis, Cirium Dashboard, Asia Editor
航空業界が世界的に力強く回復しつつある今、中国がこの波に遅れているとはいえ、航空ファイナンス分野は新しい取引に向けて活気づき、その準備を整えています。日本型オペレーティングリースであるJOLやJOLCOの投資家も再び投資意欲を持ち、今年後半には業界のより幅広い範囲で取引が始まろうとしています。しかしMROやOEMのサプライチェーンには限界があり、それが今もバリューチェーン全体の足を引っ張る格好になっていることも事実です。
2019年はもう古い
冒頭のプレゼンテーションを担当したのは、Cirium Ascend Consultancyでグローバルコンサルタント統括を務めるRob Morrisでした。Morrisはここで、「今年の第4四半期」にはキャパシティが2019年の水準以上に回復し、私たちが現在のデータを4年前と比較する時代も終わるだろうと述べました。
また、アジアは北米や欧州ほど回復が進んでいないものの、中国や日本では国内線の利用状況がCOVID前と同等かそれ以上に回復していると指摘しました。
これに続くパネルディスカッションでは、Clover Aviation Capitalのエグゼクティブディレクター兼最高技術責任者を務めるGareth Delaney氏が、Morrisの見解に同意しました。
同氏は「この10月には2019年の同月と比べる必要がなくなるなんて、素晴らしいですね」と述べ、次のように続けました。
アジア太平洋地域間の国際線は回復し始めています。これは非常に良い兆しです。なにしろこの地域の路線は、大陸間路線と合わせて、私たちが再び成長するためのパズルの最後のピースですから
日本市場が戻ってきた – しかし今回は形が異なる
JOLCO(購入選択権付き日本型オペレーティングリース)の投資家市場には、当然ながら多くの注目が集まっています。JOLCOは再び開かれましたが、パンデミックの間には倒産や不払い、ディストレスト債の売却など、多くの困難を経験しました。
2018年および2019年に投資先をティア1の信用格付け以外に伸ばしていった投資家が、JOLCOを活用して資金調達を行った航空会社の倒産、特に南米の航空会社の倒産により、大きな打撃を受けたこともありました。
投資家も、投資アドバイザーも、資産運用者も、このことから多くを学び、再発を防ぐ必要があると、複数のパネリストが指摘しました。
「同じ間違いを繰り返すわけにはいきません。投資格付けラインを下って、回収を行っていない航空会社やJOLCOの専門知識を持たない航空会社、ヘッジファンドに債券を売却している航空会社への投資を避けるようにしなければなりません」と、ABL AviationのCEOであるAli Lmadani氏は述べています。
とはいえ、JOLCOが再び開かれたことは、全体として良いニュースです。BeYoke Capitalの代表取締役である佐藤利穏氏は「COVID前のレベルにだいぶ戻ってきており、入札も活発になりつつあります」と指摘しています。
しかし投資家が注目しているのは、投資格付けが最高ランクにある航空会社のみであり、その強いメッセージが投資熱を和らげる形になっています。このように投資家が高格付けの投資先に集中することで、そのわずかな投資機会を獲得しようとする争奪戦が発生しています。
その他にも、対ドル円相場の最近の乱高下が、JOLCOの投資家へのインパクトとして取りあげられました。円安は投資家に大きな影響を与えていますが、ここで懸念されているのは円の予測不可能性に関するものであり、為替の変動が落ち着けば信頼感は回復するだろうと、多くのパネラーが指摘していました。
取引の増加はこれから
この業界が通常の状態に戻っていけば、今年後半にはセカンダリ市場も通常のペースに近づいていくだろうと、多くのリース会社が予測しています。
今後数年以内に格納庫のリース期間が満了を迎えるリース会社や、より高い金利での機材の借り換えに直面するリース会社によって、この傾向が後押しされる部分もあるでしょう。しかしこれはリース益を圧迫することにもなります。
大手のリース会社はパンデミック中も機材の取引を継続していましたが、その規模は比較的小さなものでした。
「何百もの機材を検討しましたが、最終的に取引に至ったのはほんの一握りでした。ですから回復にはまだ少し時間がかかるでしょうし、多くの努力も必要です」と、High Ridge Aviationのエグゼクティブディレクター兼アジアヘッドを務めるAntony Snelleman氏は述べました。
サステナビリティの重要性は高まる一方
サステナビリティについても多くの議論がなされました。機材のグリーンローンファイナンシングにおいて日本が比較的に先を進んでいることを考えれば、これは自然な流れであるといえるでしょう。
たとえば日本航空は最近、エアバスA350-900 2機の購入においてサステナビリティリンクローンを実施しました。
「日本では、サステナビリティを踏まえた資金調達など、先進的な取り組みが始まっています。リースにおいて非常に賢明なボルトが取り付けられているといえるでしょう」と、Boeing Capital Corporationのマネージングディレクター・キャピタルマーケッツ・アンド・アウトリーチのVasgen Edwards氏は述べています。
Cirium AscendのMorrisは、CO2の排出量削減、特に環境に優しい航空燃料の生産に対する投資拡大で主導的役割を果たせるかどうかは、業界次第であると指摘しています。
「規制当局から指示が出される前に、またはロビー活動の圧力にさらされる前に、私たちは脱炭素化にもっと注力すべきでしょう」
サプライチェーンの影響はすべての分野に
この業界全体が繁栄していくうえで最大の足かせになっているのが、サプライチェーンに関する諸問題です。これはOEMにも、エンジンメーカーにも、さらには出資機会を狭めるという点で投資家にも影響を及ぼしています。
「現在のプライシングは明らかに不適切な状態にあります。おそらくは時期のずれも関係しているでしょうし、供給不足や取引のタイプが限られていることも関係しているでしょう」と、Novus Aviation CapitalのKuzbari氏は述べています。「OEMが供給する機材の数も現在は本来より少ない状態にあります。それもサプライチェーンに問題があるからです」
これについて多くの出席者がまず思い浮かべたのは、Spirit AeroSystemsからの供給に関する問題を理由にボーイングが先日737 Maxの納入を停止したことでした。この納入がいつ再開されるのかについても、あまり情報が入ってこないと、不満を漏らすリース会社の担当者もいました。
しかし問題はさまざまあれど、そこには機会もあります。先日のボーイングの納入延期も、エアバスのA320neoファミリーの増産に関する課題も、前世代の機材にとっては価格およびリース率の引き上げにつながると、広く解釈されています。
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