筆者:Lance Hooks and Harry Chan, Key Account Managers at Cirium
Ciriumにとって2022年は、アイルランドのダブリンとシャノンを拠点とするリースコミュニティへの貢献度を高め、長期的かつ継続的なサポート体制を確立するという点で、非常に重要な年となりました。また、私たちがサービスを提供する商用航空関連市場の回復状況が、引き続き勢いを増した年でもありました。
2022年1月から現在までの期間において、業界の健全性向上を示す心強い指標を数多く目にすることができました。その指標としては、再マーケティング(リマーケティング)活動に関するものや、リース機材の稼働率が挙げられます。
私たちの調査では、欧米製旅客機のリース契約(リース期間延長を除く新規契約)の件数は1,000件を超え、アイルランドのリース会社が、この市場回復において重要な役割を担っていたことが判明しています。
当社が作成したグラフを見ると、この期間にアイルランドのリース会社が合意したリース契約は約600件(全体の60%弱に相当)となっています。リース料とマージン(利幅)には依然として押し下げ圧力がかかっていますが、市場指標の数値は健全で、上昇傾向にあります。
リース機材の稼働率にも、明るい兆しが見られます。私たちはAireonと当社のパートナーシップによる衛星追跡データを活用して、世界のリース機の総飛行時間に焦点を当てた分析に取り組み、さまざまなジェット機とターボプロップ機のリース機の機材タイプ別に月平均の総飛行時間をグラフ化しました。
このデータでは、分析対象の機材タイプの月次稼働率が全体的に増加していることが明確に示されています。私たちは、夏場はそれほど顕著ではない可能性があるにせよ、この傾向自体はある程度続くと予想しています。
航空業界の状況として、運賃やロードファクター(有償座席利用率)が上昇してきており、それが出張や休暇時の予約に直接的な影響を与えています。Ciriumの旅客輸送量および運賃のデータは、GDS(予約・発券システム)の当社パートナーを通して収集されているものですが、世界の旅客数と平均運賃の大幅な改善傾向を示しています(コロナ禍に起因する低い基準からの改善ではありますが)。
下のグラフでは、国際線(各地域間)とアジア域内線の輸送量(トラフィック)が前年比で過去最大の増加率となっており、2023年2月の旅客輸送量データをみると、2022年2月と比較して50%以上の伸びを示しています。
全地域の中でも、アジア域内の運賃が最も大きく上昇しており(約33%増)、次いでオーストラリア域内と北米域内(各約30%増)となっています。このうち、アジアおよびオーストラリアのデータは、主に中国とオーストラリアにおけるコロナ禍からの回復の遅れがベースになっています(両国では平均イールドも平均17%増となっています)。
一方、この1年を通して、脱炭素化を目指す航空関連業界の切実なテーマとして、ESG(環境、社会、ガバナンス)をめぐる議論が活発化してきました。
旅への欲求、世界中に散らばる家族や友人とのつながり、そして新しく非日常的な体験は、私たちを人間らしくする要素の一部です。しかし、新たな規制(例えば、ETS、CORSIA、CSRDなど)が、私たちが旅行する際の判断材料の一つとなりつつあることを意識する必要があります。
機材の稼働率が向上し、リース機材数が増え続ける一方で、そうしたリース機フリートからの「スコープ3」の温室効果ガス排出量は、この1年で必然的に増加しました。私たちは当社のグローバル・エミッション・モニターを活用し、MSN(機体番号)ごとの稼働実績(機材のエンジンや構成、運航重量、総座席数、ロードファクター、タクシータイムなども考慮)に基づいてリース機の排出量を測定しました。すると、10%多く機材が稼働し、(稼働率が上がった結果として)30%多くCO2を排出していることが分かりました。とはいえ、より肯定的に言えば、そして恐らくはより真実に近い進捗状況を評価する表現方法を使えば、排出強度(ASKあたり)は2022年1月から5%減少しています。