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キャセイパシフィック航空のマンパワー需要


キャセイパシフィック航空は資金消費を減らすため、2021年10月、約600人のパイロットを含む計6,000人弱の雇用を削減しました。

Eric Tamang, Ascend by Cirium

筆者:Eric Tamang, Valuations analyst, Cirium Ascend Consultancy

新型コロナウイルスのパンデミックの最中、世界各国の政府が国境封鎖を開始したため、海外旅行は深刻な影響を受けました。香港のような地域は国内市場を持たないため、なおさら大きな打撃を受けました。

Cirium Tracked Utilizationのデータによると、事実上、香港の航空会社であるキャセイパシフィック航空の1日あたりのフライト数(7日移動平均)は、2020年初めに前年同期比で90%減少しています。

キャセイパシフィック航空は資金消費を減らすため、2021年10月、約600人のパイロットを含む計6,000人弱の雇用を削減しました。

また同社は、イギリス、ドイツ、カナダ、オーストラリア、そして2022年末に最後に実施したアメリカを含め、海外のパイロット基地をすべて閉鎖しました。

キャセイパシフィック航空の1日あたりの追跡フライト数(7日移動平均)

ソース:Cirium Core, tracked utilization data filed January, 25, 2024

新型コロナウイルス感染症が風土病(エンデミック)となった今、飛行機利用の需要は回復し、1日あたりの追跡フライト数はコロナ禍前の水準に戻っています。しかし、キャセイパシフィック航空は、パイロットの病欠により少なくとも42便をキャンセルしたため、2023年12月中旬以降は1日の追跡便数が減少していることが確認できます。

Ciriumのデータベースを基に作成したこのグラフでは、キャセイパシフィック航空がなお、同社フリート全体の10%に相当する21機を駐機・保管していることも示されています。

キャセイパシフィック航空のフリート

ソース:Cirium Fleets Analyzer, 25 January 2024

商用航空機が保管されている理由は数多くあります。CiriumのGround Events分析を見ると、本稿を書いている時点(2024年1月25日)では、キャセイパシフィック航空は重整備に入る機材を1機も保有していないことが分かります。それでも、主にパイロット不足の影響により、21機の機材を保管しているのです。

キャセイパシフィック航空のメンテナンスイベント

ソース:Cirium Ground Events Analytics, 25 January 2024

2023年末、キャセイパシフィック航空は、2023年と2024年に、客室乗務員1,500人とパイロット候補生800人以上を含む計5,000人以上の従業員を雇用する計画を発表しました。しかし、従業員の雇用活動は難航しており、結果として2023年のクリスマス以降、フライトを相次いでキャンセルしています。

キャセイパシフィック航空のパイロット組合である香港航空乗組員協会(the Hong Kong Aircrew Officers Association)は、コロナ禍に見舞われた2020年に会社側が下した決断の結果として、現在の上級パイロットの不足が生じたと述べました。あの当時、同社は「現場スタッフの給与の大幅かつ恒久的な削減」を実施しました。

今年の中国の旧正月は2月10日~24日であり、もう間近に迫っています。

この時期は旅行のピークを迎えますが、キャセイパシフィック航空は既に2月末までの期間、1日平均12便を削減しました。今後、さらなる欠航は避けられないようです。

キャセイパシフィック航空は2023年の中間報告で、2024年末までに100%のキャパシティ水準に到達することを「確信している」と報告しています。しかし、これは従業員の採用活動が成功しなければ達成できそうにありません。


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