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Mike Malik, Cirium CMO

運航

進むグリーン改革―サステナビリティに注力する航空会社

November 16, 2021

サステナビリティ(持続可能性)は今、航空会社の意思決定の中心となっており、資金の投資先から顧客とのコミュニケーションに至るまで、あらゆる面に影響を及ぼしています。

Mike Malik、Cirium最高マーケティング責任者

これはもはや将来ではなく、現在の話です。

航空会社は今、急速な勢いでグリーン改革を進めています。ただ、その努力はあまり気づかれることがなく、正しく評価されてもいません。サステナビリティ(持続可能性)というテーマは、航空会社の意思決定の中心に置かれ、資金の投資先や顧客とのコミュニケーションの方法に至るまで、あらゆる面に影響を及ぼしています。航空会社は、この新たな現実から逃れることはできません。全力を挙げて環境に配慮した未来を目指すしかないのです。

私が直接その状況を目の当たりにしたのは、2020年初頭のパンデミック発生後、対面の会議に出席したときのことでした。その会議は、米国ボストンで開かれた国際航空運送協会(IATA)の第77回年次総会です。そこではサステナビリティが大きなテーマとなり、航空業界は二酸化炭素排出量について、2050年までにネットゼロを達成すると誓いました。

これは、国際民間航空機関(ICAO)が打ち出した短期・中期的な二酸化炭素排出抑制プログラム「国際航空のためのカーボンオフセット及び削減スキーム(CORSIA)」の遥か上をゆく目標です。より長期的に見ると、サステナブルな航空機燃料こそが、排出量削減に向けて重要な位置を占めることになるでしょう。電気、ハイブリッド、水素も、有力な動力源として活躍することが期待されています。さらに、各国政府、空港、航空ナビゲーションサービスを提供する企業、エネルギー企業、航空機メーカー、エンジンの供給業者も、それぞれの役割を果たす必要があります。

確かに、ネットゼロを達成するのは簡単なことではありません。石油をベースにした現在のジェット燃料に代わるような、経済的に導入可能で大量生産ができる代替燃料がまだ存在しないことから、航空業界は排出量を減らすのが難しいセクターだとみなされています。テスラの自動車のようなグリーンな航空機はすぐには出てこないでしょう。その上、航空需要は今後数十年のうちに急増すると見込まれており、航空機の利用はこれからの経済発展にも欠かせないサービスなのです。IATAは、2050年には航空機の旅客数が100億人になると予測しています。この年には1.8ギガトンの二酸化炭素の排出が予想されるため、それ相当量を削減しなければネットゼロを達成できないということです。また、現在から2050年までの二酸化炭素排出量は21.2ギガトンになることが予想され、これも減少し続けていく必要があります。

IATAの事務総長であるWillie Walsh氏は、パンデミック発生前にインターナショナル・エアラインズ・グループ(IAG)を世界有数の高収益を上げる航空会社グループに育てるなど、難しい約束を果たすことで評価されてきました。先ほど述べたように、ネットゼロ達成は簡単な挑戦ではありませんが、Walsh氏は現在、IATAでネットゼロの挑戦を主導し、サステナブルな航空業界の実現を目指して邁進しているのです。

ここでフリートの更新に関するデータを見てみましょう。世界の航空機に関するCiriumの詳細なデータは、航空業界がより新しく、クリーンな航空機への志向を強めていることを示しています。例えば2020年初頭、旧世代機であるA320の運航機材数は10,751機でしたが、現在は22%減少しています。減少した理由は当然ながら需要が弱まったからですが、よりクリーンでグリーンなフリートにしたいという、航空会社の確固たる思いがあったからでもあります。これとは対照的に、A320neoの運航機材数は2020年初頭以降、54%も増加しています。またCiriumのデータでは、ワイドボディ機でも似たようなトレンドが起きていることも示されています。なお、B777の機材数は22%減少したものの、より燃費効率が良いB787には(最近の納入の一時的猶予にもかかわらず)増減の変化がまったくなかったのです。

この傾向は、至るところで見られます。例えばアメリカン航空は、ここ7年間で650機以上の旧世代機を退役させました。IAGは直近の業績発表で、最悪の年だった2020年でさえ、発注した多数の航空機を1機たりともキャンセルしなかったことを明かしています。アメリカン航空の前社長Robert Isom氏は、「あらゆる航空会社が取り組むべき最も重要なことは、旧型機を退役させて、代わりに新型でより低燃費の航空機を導入することです」と述べています。

Global aircraft sustainability chart

では、環境を保護することが、この積極的なフリート更新戦略の唯一のモチベーションなのでしょうか?答えはノーです。しかし、グリーン化を果たさなければならないという熱意こそが今、航空業界を強く突き動かしています。ネットゼロの目標を達成するためには、新しい航空機への投資が不可欠なのです。

しかしながら、重要なのはこの遠い目標だけではありません。世界の一部では既に、旧型機の運航は、規制や税制の面でコスト高になっています。空港においても、特にヨーロッパでは、航空会社に対し、航空機の重量ではなく二酸化炭素排出量に基づいて料金を徴収するという新しいモデルの導入に動いているケースもあります。なかには、二酸化炭素排出の増加量を将来的に正味ゼロにすると誓約している航空会社もあります。同様に、多くの航空会社が排出量削減につながる研究、運航内容の変更、サステナブルな燃料の導入計画、機内サービスの変更に対して、相当な額の資金を投じています。また、一部の航空会社では、サステナビリティ担当責任者を置いています。このほか、サステナビリティへの取り組みをマーケティングキャンペーンの中心に据えている航空会社もあります。

1980~1990年代を思い出してください。この年代の大きな特徴は、燃料費が安かったことです。当時はサステナビリティなどほとんど考慮されず、航空会社は当たり前のように旧式の航空機を取得していました。燃料が安いときに、燃料効率にお金をかける理由はないと考えていたのです。しかし、そのような考え方も変わってきました。2010年代半ばのように市場が低迷していたときでさえ、新しい航空機の需要は堅調に推移していました。パンデミックの初頭に原油価格が暴落した際にも、航空需要が破滅的に落ち込んだにもかかわらず、航空会社はフリートの更新計画を積極的に修正しようとはしませんでした。保留になった発注はありましたが、注文そのもののキャンセルはそれほど多くはありませんでした。では、旧型機への需要は再び沸き起こったでしょうか?それはまったくありませんでした。それどころか、航空会社は、環境面での欠点を意識して、旧型機の退役を大きく加速させたのです。

サステナビリティは、航空会社の運航路線にも影響を与え始めています。例えばフランスは、国民の旅行手段を飛行機から鉄道に転換させることを狙って、国内便の削減を航空会社に対する救済策の条件にしました。

今やヨーロッパのいたるところで高速列車が走っており、航空機旅行の有効な代替手段になっている場合も多いです。各国政府も世論も同様に、航空会社に対して短距離輸送ネットワークを縮小するようプレッシャーをかけています。

北欧では特に環境への意識が高まっており、現地の航空会社は、航空機輸送に異を唱える社会的機運に対応し、自らの運航ネットワークの修正を余儀なくされています。Ciriumの運航スケジュールデータによると、スウェーデンの国内フライトの便数は、2016年から2019年にかけて17%減少しました。これは、環境に対する人々の意識の変化がもたらした結果だと考えられます。

現在、米コロラド州のデンバー国際空港に電力を供給しているのは、ソーラーパネルです。

航空機のメーカーとそのサプライヤーも長期的な視点を持ち、次世代の航空機を設計する際に、サステナビリティについても深く考えようとしています。一部のメーカーは電動航空機の開発を行っており、現時点では超短距離ルートのみでの導入が現実的であるにせよ、この開発に社運を賭けています。また、次世代型の超音速ジェット機を開発中のメーカーは、燃料にはサステナブルなものを使用すると公約しています。空港も環境への配慮を検討しています。投資家も同様で、環境スチュワードシップに熱心に取り組む企業にのみ資金を配分すると決めたケースもあります。

IAG傘下のブリティッシュ・エアウェイズは今年初め、環境分野への取り組みに特化した資金を得るために発行される債券「グリーンボンド」を通して資金を調達しました。ブリティッシュ・エアウェイズは資金の貸し手に対して、時間をかけて運航キロメートル当たりの二酸化炭素排出量を減らしていくことを約束しています。

グリーンボンドは、環境に優しいプロジェクト用に資金を借りるための金融ツールであり、ブリティッシュ・エアウェイズのケースではよりクリーンな航空機を運航するための資金となります。このケースは、サステナビリティを目指す航空業界の真剣度を示す一つの実例です。今は資金調達法でさえ、グリーンになりつつあるのです。

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