筆者:Mike Malik, Chief Marketing Officer at Cirium
10年前、イベリア航空はいろいろと問題を抱えた航空会社でした。2013年、このスペイン最大の航空会社は、3年連続で年間営業損失を計上することになります。格安航空会社のライバルたちが、同社の短・中距離路線市場に攻勢をかけてきたのです。(Ciriumの統計によると、ライアンエアー1社だけで、2009年から2012年の間にスペイン発フライトの座席数が60%近く増えているのです!)。イベリア航空はまた、高速鉄道にも乗客を奪われつつありました。燃料価格も高騰していましたし、ユーロ圏の債務危機も需要を押し下げました。
しかし、同社はその後、大規模な合併劇を経て、大きな転換期を迎えました。2009年、イベリア航空は、子会社の格安航空会社であるクリックエアーをブエリング航空と経営統合させ、統合後の航空会社の46%の株式を取得したのです。
さらに重要なのは、2011年にイベリア航空がブリティッシュ・エアウェイズと合併し、インターナショナル・エアラインズ・グループ(IAG)が設立されたことです。
4年後、IAGはブエリングを完全子会社化し、スペインにおけるIAGの地位を強化しました。その後、スペインの長距離路線のローコストキャリア(格安航空会社)であるレベル(LEVEL)を立ち上げました。
この間、イベリア航空は「Plan de Transformación」を発表し、積極的なコスト削減、短距離路線の輸送キャパシティの削減、サービス向上、そしてイベリア・エクスプレスという新しい低コスト航空会社の育成を行いました。IAGの設立により、ロイヤリティプランの強化や、アメリカにおけるワンワールド・アライアンスのパートナーであるアメリカン航空との提携関係に基づく画期的な共同サービスの提供など、より一層の相乗効果がもたらされました。さらに、イベリア航空は、経営的に最も困難な時期であっても、強力な切り札を保持していました。それは、マドリードを拠点とする中南米への強力な路線ネットワークです。
Diio by Ciriumのデータが示すように、イベリア航空は2013年には中南米およびカリブ海地域の16の異なる空港に向けて運航しており、そのうち9つは南米にある空港でした
イベリア航空は2014年に再び収益を上げるようになり、営業利益も年を追うごとに増えていきました。ただしそれは、新型コロナウイルスが出現するまでの話です。世界中のほぼすべての航空会社と同様、イベリア航空は2020年、さらに2021年にも巨額の損失を被りました。しかし昨年は、夏季の利益をほぼ完全に2019年の水準にまで回復させ、経営を軌道に乗せました。実際、昨年度第3四半期の旅客収入は、3年前の同じ時期の実績を上回っています。特に、プレミアムレジャー・クラスの需要が堅調でした。加えて、スペインの航空市場は、好調なインバウンド観光に後押しされ、平均以上に早いペースで回復しています。
このように、2023年を迎えた今、イベリア航空は過去の苦境からは脱出しつつあり、業界での良好なポジションを確保しています。ただし、さらに経営体質を強化するための試行錯誤は、まだ終わったわけではありません。
イベリア航空は現在、同じくマドリードと中南米を結ぶ強力な路線ネットワークを誇るスペインのライバル会社である、エア・ヨーロッパを買収するための最終交渉を行なっているところです。両社は新型コロナウイルスのパンデミックが始まる直前に合併契約を締結していましたが、状況が変化したことにより、2021年末にその契約を解除していました。もし新しい契約が結ばれた場合、一つの障害となり得るのは、競争規制当局による承認の問題です。イベリア航空は、合併によってマドリードのハブ空港としてのステータスが向上し、より多くの路線就航が可能になり、雇用も守られると述べています。
イベリア航空は、エア・ヨーロッパとの提携を進めるとともに、CEOのハビエル・サンチェス・プリエト(Javier Sánchez-Prieto)氏のもと、引き続きフリートの更新と新サービスの拡充に注力しています。イベリア航空は最近、パートナーであるアメリカン航空と同じニューヨークJFK空港のターミナルに共同オフィスを構えました。また、長距離フライトにおけるビジネスクラススイートも新たに追加しようとしています。4発ジェット機であるA340は、もう現役ではありません。
スペイン最大の航空会社が次に目指すものは何なのでしょうか?南北アメリカ路線の増設でしょうか?それともアジア路線の復活でしょうか?業界をリードするエアラインプランニングシステムであるDiio by Ciriumのデータを通して、常に最新の情報を入手しましょう。