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燃費向上と二酸化炭素排出量抑制に対するウィングレットの効果

January 25, 2022

現代の航空機のウィングレットは、翼の先端で高圧と低圧の空気がぶつかって発生する渦を最小化することにより、気流の抵抗を減らすことに役立っています。この抵抗が小さくなれば、結果として燃費効率が上がり、二酸化炭素排出量も少なくなります。

分析:David Price(Ciriumデータアナリスト)

ウィングレットとは何か?

ウィングレットは1897年、イギリスのエンジニアであるフレデリック・ランチェスターによって最初に着想されました。ランチェスターはセグロカモメを研究するなかで、飛行中に翼の先端を傾けていることに気づきました。この観察による気づきが一つのきっかけとなって、彼は『The soaring of birds and the possibilities of mechanical flight』(鳥の飛翔と機械的飛行の可能性)という著書を発行するに至りました。

現代の航空機のウィングレットは、翼の先端で高圧と低圧の空気がぶつかって発生する渦を最小化することにより、気流の抵抗を減らすことに役立っています。この抵抗が小さくなれば、結果として燃費効率が上がり、二酸化炭素排出量も少なくなります。サイズと重量の制限や代替翼の形状の制約があるため、すべての機材にウィングレットを付けられるわけではありません。

ウィングレットの影響を測定する

ウィングレット(翼端小翼)の効果は、機材タイプや航空路に大きく左右されます。平均的には、燃料消費量を4~6%削減し、飛行中の騒音を最大6%減らす効果があります。実際のフライトデータを見ると、ウィングレットの効果は、機材タイプと航空路に大きく左右されることが分かります。

ウィングレットの実際の効果は、Ciriumの機材排出量ワークブックに基づいて、個々の機材と航空路の高度ごとに燃料消費量と二酸化炭素排出量を分析することで把握できます。このワークブックを利用することにより、個々の機材・フライト別の二酸化炭素排出量を調べることが可能です。その際には、数十もの変数を使用して、燃料消費量と二酸化炭素排出量を算出します。ウィングレットは、その計算に影響を与える一つの要素です。このレベルの詳細性と正確度(誤差=プラスマイナス1%)を確保することが、機材の排出量をモニタリングおよび報告したり、機材の排出量に基づいて飛行内容を決定したりする上で極めて重要となります。

  • 平均を見ると、ウィングレットから最大の恩恵を受けているのはボーイング737-800です。この機種の効率性は平均6.69%増となっていますが、航空路次第では、燃料節約率が4.6~10.5%の範囲の分布となります。
  •  ウィングレットによる燃料節約と排出量抑制の効果が最も一貫している機種は、エアバスA319シリーズです。
  • エアバスA321シリーズの燃費は平均4.8%向上していますが、航空路と個別機材に基づくぶれ幅が最も大きく、向上率の範囲は0.2~10.75%となっています。
Global emissions workbook - America

ウィングレットは効率性をどれぐらい向上させるのか?

すべての機材や航空路は、それぞれ異なっています。Ciriumのデータに基づくと、ウィングレットは燃料消費量を1~10%の範囲で減少させることができます。12月末に運航された世界中のフライトのサンプルを見ると、ウィングレット付きの航空機は、平均で3.45%少ない燃料消費量でした。

以下のグラフでは、航空路と機材の抽出サンプルを見ることができます。グラフ内の数字は、ウィングレットのない同じタイプの航空機と比較した燃料消費量と二酸化炭素排出量の減少率をパーセンテージで表したものです。

ウィングレットに起因する燃料消費量と二酸化炭素排出量の減少

RouteDistance (km)737-800757-200767-300A319A320A321Average
AER-SVO1403-2.82-6.53-4.68
ATL-MSP1458.53-3.47-3.47
ATL-SNA3079-4.09-4.09
BKK-PEK3316-10.49-10.49
BOG-MIA2436-5.30-5.30
BSB-FOR1691-4.26-4.26
CAN-NRT2945-8.39-8.39
CKG-LXA1521-5.01-5.01
CKG-LZY1190-4.80-4.80
CKG-PEK1464-7.01-2.28-5.20-4.83
CTU-SYX1472-2.89-2.61-2.75
CTU-SZX1318-4.58-2.85-6.34-4.59
DAD-ICN2978-6.59-0.24-3.41
DCA-MIA1483-5.20-5.20
DEL-GOI1503-3.46-3.46
DFW-LAX-.79-4.94-2.86
DMM-GIZ1299-3.12-3.12
DTW-MCO1543-3.20-3.20
DTW-MIA1846-4.39-4.39
FLL-YUL2230-3.33-3.33
GRU-JPA2190-4.67-4.67
HKG-NRT2960-6.03-0.98-3.50
HLP-KNO1416-3.64-3.64
IAH-MIA1550.15-5.18-5.18
ICN-NRT1257-6.67-6.67
LAS-MEX2427-2.61-2.61
LHR-ORD6344-8.73-8.73
LXA-XIY1777-3.23-3.23
MIA-SJU1681-9.71-9.71
MIA-YYZ1990-3.81-3.81
NGB-XIY1300-2.22-2.22
NRT-PVG1797-3.91-3.91-3.55
NRT-TPE2182-7.10-1.72-4.41
PEK-ZUH2032-4.80-4.80
PVG-ZUH1316-4.59-4.59
URC-XIY2106-1.63-1.63
各数字は、ウィングレット付き機材の燃料消費量と二酸化炭素排出量の減少率をパーセンテージで表したものです。

航空機の二酸化炭素排出量と燃費効率についての詳しい情報を知りたい場合や、専門家に相談したい場合には、このページの連絡フォームに必要事項を入力してお問い合わせください。 

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