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ネットゼロへの道:増え続ける商用航空界のCO2排出量(パート1)


航空会社の総排出量は今年7月に過去最高を更新する見込みです。これはフリートの増加分が、機材の効率性向上による減少分を上回るためです。

Andrew Doyle, Cirium - Senior Director, Market Development

筆者:Andrew Doyle (Senior Director – Market Development, Cirium)

注:これは3部構成の第2部です。第2部第3部をお読みください。

エンジン技術や航空機設計の大幅な進歩が顕著な時代においては、航空関連業界が環境のサステナビリティに向けて、まっすぐに飛躍の道を歩んでいるとの期待があるかもしれません。しかし、現実はもっと複雑であり、懸念すべき状況です。さまざまな技術の進歩にもかかわらず、この業界は重大な岐路に立たされています。温室効果ガスの排出量が過去の水準を超えて急増すると予測されており、グローバル規模で気候変動問題に対処するための道のりに暗雲が立ち込めているからです。

Ciriumの最新の予測によると、定期旅客便に起因する月間二酸化炭素(CO2)排出量は、2024年7月には7,400万トンと過去最高を記録し、新型コロナウイルスのパンデミック前の最高値だった2019年7月の7,300万トンを上回る見込みです。

それでも、良いニュースもあります。有効座席キロ*(ASK)当たりのCO2排出量として測定される効率性は、この5年の期間で3.8%以上改善される見通しです。これは主に、最新技術のエンジンを搭載した航空機の割合の増加によるものです。

2019年7月には、計310万便弱で9,150億ASKが供給され、CO2排出量はASKあたり平均70g強と算出されました。Ciriumの2024年7月の予測では、実際のフリートに紐づけされた航空会社の公表スケジュールに基づくと、計320万回以上のフライトが約9,800億ASKを供給し、CO2排出量は平均68g弱になる見込みです。

プラット・アンド・ホイットニー(P&W)のPW1100Gを搭載したエアバスA320neoファミリーの何百もの機材が現在、エンジン点検のため待機中であり、一方でボーイングの737マックスも2件の死亡事故後、長期にわたる運航停止の影響で納入が制限されました。こうした事態がなければ、排出量に関する効率性の改善幅はもっと大きくなっていたでしょう。また、パンデミック後のサプライチェーンの問題や機体認証の課題もあり、最新世代のワイドボディ機の就航数が、2019年当時の想定よりも少なくなってしまいました。

次週のパート2「航空会社のCO2排出量削減に影響を与える要因」もどうぞお楽しみに。Emerald Skyの詳細については、当社までお問い合わせください


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