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Ascend Consultancy, 業界予測, 航空専門家の視点, 航空機投資

2023年の展望:Ascend Consultancyの最新のウェビナーで得られた知見

February 6, 2023

Ascend by Ciriumの今年最初のウェビナーでは、当社の専門家パネリストが、航空機のファイナンスとリースに関する今後の見通しについて検討しました。

Ascend by CiriumRob MorrisGeorge Dimitroffが、今年最初のウェビナーで、特別ゲストスピーカーとしてDick Forsberg氏を迎え、2023年の航空機ファイナンスとリース市場の展望について議論しました。

バリュエーションコンサルタントのLalitya Dhavalaの司会で行われたディスカッションでは、パネリストたちが、2023年の需要回復、オペレーティングリース分野の主な進展状況、機材の価値とリース料の変化傾向について見解を述べ合ったほか、機材への投資家や機材のリース会社、メーカーが今年の目標を維持するかどうかについて議論しました。ライブ配信で行われたこのウェビナーでは、主に以下のような知見が得られました。

中国市場の回復は、一部の予想よりも遅れる可能性がある

Ascend by Ciriumのグローバルコンサルタント統括であるRob Morrisはウェビナーの冒頭、自身が「回復に向けた最後の壁」と呼ぶ中国市場に関するデータを紹介しました。中国政府が2022年末に渡航者の隔離政策から脱却したことは、明るい兆しとなりました。実際、運航スケジュールや飛行機利用の追跡データをみると、キャンセル件数が減り、国内線のフライト数も2019年の水準に近づいています。

しかし、Robは、回復のペースは一部の予想よりも遅いと指摘しました。「他の地域では、既に2020~21年に隔離措置のない渡航が実現していました。それらの地域も、2022年の後半までかかってようやく回復しています」。中国発着の国際線については、2023年半ばには2019年の水準に戻るとの予測も一部で出ていましたが、今夏の定期便に関するAscendの予測は、それほど強気な内容にはなっていません。

「中国への旅行客の信頼が完全に回復するまでには、満たすべき必要条件がまだ数多く残っているため、航空各社は、旅客輸送キャパシティを戻すことに極めて慎重になっています」と、Robは説明しました。「中国市場は復活しつつありますが、そのペースはゆっくりとしています」

Dick Forsberg氏はRobの評価に同意し、突然の変化により悪化しているキャパシティ面の制約について指摘しました。「航空会社は既に今後6~8ヵ月間のスケジュールを組み、制約のある空港のスロット(発着枠)を申請しています」と、Forsberg氏は説明しました。

「これらの航空会社は、自社の中国発着路線に割り当てるキャパシティを確保するために奔走することになります。そのすべての国際便が再び以前のように動き出すのは、2024年に入ってからだと思われます」

中国市場の回復がどれだけ早くなっても、注視すべき点が一つあります。それは、航空業界が世界レベルでの経済的逆風を相殺しつつ、コロナ禍後の回復を持続することができるかどうかということです。その成否が、2024年以降のこの業界の姿を決定付けることになるのです。

価値とリース料の回復までには、より長い道のりがある

Ascend by Ciriumのバリュエーション統括を務めるGeorge Dimitroffは旅客機市場の状況を評価し、シングルアイル機およびツインアイル機市場について、その基準価値(ベースバリュー)に対する市場価値(マーケットバリュー)の比率(MV・BV率)を比較しました。シングルアイル機の加重ベースの機材価値は、バランスのとれている市場であることを示す基準価値を15%ほど上回った2020年初頭、ようやくプラスの比率の領域に戻りました。ツインアイル機も、MV・BV率(市場価値/基準価値)が上昇して「1」に近づいており、新型コロナウイルスのパンデミック時に見られた複数回の基準価値の減損を経て、価値が回復する傾向を示唆しています。

これは市場にとってどのような意味を持つのでしょうか?「シングルアイル機については、必ずしも2019年の水準に戻ったわけではありません。しかし、市場は均衡状態に復帰しており、まだ活発化しているとは言えないにしても、今後そうなっていく傾向を見せています」と、Georgeは説明しました。「そのため、ワイドボディ、ナローボディの両方になお価値上昇の余地があることは間違いないでしょう」

もっと広い目で見ても、価値、リース料ともに持続的な上昇トレンドにあります。Cirium Values Analyzerのデータによると、ここ12ヵ月間、すべての機材クラスのフリート加重ベースの価値、リース料が増大していますが、そのほとんどのクラスが、2020年1月のパンデミック前の基準点への到達に向けてまだ回復の見込みがあります。一部の例外としては、とりわけ貨物専用機と新造機材タイプの価値が、再び2020年の水準を上回りつつあります。金利が高く、新造機材の供給が逼迫しているため、中・低機齢の機材のリース料は、価値よりも上昇の可能性を秘めています。

Georgeは今後の見通しとして、主に供給が制限されていることから、価格とリース料にさらに伸びる余地が生じており、明るい材料になっていると指摘しました。

「新造機の生産規模は3年近くの間、非常に低い水準で推移しています。つまり、かなり長い期間、市場からの機材供給が抑えられてきたことになります。それが既に、より新しい機材や一部の中古機の価値を高めているのです」。

Georgeは、サプライチェーンの混乱が続く中、メーカーはパンデミック前の生産水準に達することができておらず、それによる供給面の制約も、リース料の回復を後押しすることになると付け加えました。

現在、中国市場の再開により需要が回復しており、機材の価値とリース料も押し上げられています。「2023年は、アジア太平洋地域を中心にツインアイル機の市況が引き続き回復することになるでしょう」と、Georgeは締めくくりました。主要な長距離路線市場では、アジア太平洋地域は不可欠な存在であることから、ツインアイル機の高い需要があります。もしアジア太平洋地域が予想通り回復すれば、ワイドボディ(ツインアイル)機の価値も大きく回復することになるでしょう。

統合が進む中、リースの伸びは鈍化している

オペレーティングリース管理における商用旅客ジェット機のシェアは、2020年8月に初めて50%を超えました。この節目は、新型コロナウイルス危機が引き金となり、リース取引へのシフトが進んだことを象徴しています。負債を抱えた航空会社が、Forsberg氏の言葉を借りれば「頼みとする唯一の投資金融会社」として、リース会社を利用するようになったのです。

Robは、市場シェアが60%になることに言及するのは時期尚早との見方を示し、リース会社とコンソリデーション(投資家の合同体)との間の取引レベルが低いことを指摘しました。Forsberg氏はRobのこの評価に同意し、リース会社の役割はこれからも残り、過半数のシェアを維持するにしても、短・中期的には60%というシェアは達成できないだろうと述べました。これについて同氏は、銀行の参入や、プライベート・エクイティ会社を中心としたオルタナティブ・レンダー(代替の貸し手)の増加が、リース会社の市場シェアを制限する方向に作用しているとも指摘しました。

Georgeは、新しい機材のファイナンス手段としてのリース会社の市場シェアが拡大していることは、複数の貸し手が同じ航空会社に同じ機材商品を提供することにより、リース料回復のリスク要因になりうると指摘しました。そうした競争によって、リース料が資本コストを下回る程度まで引き下げられることはあるでしょうか?「世界を見渡した時、私たちの業界では、新造機材が十分に生産されず、供給が減少しているという話ばかりが聞こえてきます。すべてのマクロ要因は、リース料が上昇傾向にあることを示唆していますが、問題は、多くの人が妥協できるラインがどこにあるのかということなのです」

これに対してDick Forsberg氏は、M&Aが数多く完了・進行しているリース会社の統合や、中国系リース会社の国際市場からの撤退について指摘しました。「積極的に価格設定された資本にアクセスできるリース会社のグループは、常に存在すると思います。もしかすると現在の市場には、金利が上昇し始める前に調達した流動性資金を使い切り、戦略的な取引に対して積極的な価格設定を行っている人がいるかもしれません」と、Forsberg氏は説明しました。「時間が経つにつれて、こうした割安な資金プールは枯渇し、より公平な競争の場へと資金が移行していくことでしょう。ゆくゆくは新規参入者は増えるでしょうが、統合が進み、取引価格をより適切に設定する圧力もかかると考えられます」


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各機材タイプの詳細な分析、OEMのプログラムに関する議論、オーディエンスの質問に対するパネリストの回答など、ウェビナーの全録画内容とスライドを見るには、オンデマンドのウェビナーの全体をご視聴ください

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