By Mike Malik
ゆっくりと、しかし確実に、世界の航空業界は苦境から立ち直りつつあります。とはいえ、人員配置やスケジューリングといったさまざまな課題が山積みであり、その回復の歩みは必ずしも順調とは限りません。
現在、航空会社の定時性はかつてないほどに注目されるようになっています。アメリカでは今秋、ニュースになるような大幅な遅れやキャンセルが発生しているため、なおのこと重要です。旅行者、空港、政府、法人旅行部署やその他のステークホルダーは知りたいと思っています。フライトは定時に出発し、そして到着しているのか、と。
Ciriumは昨年5月、パンデミックが始まってフライトがほとんど運航されなかったために一時的に中断していた定時運航率レポートを再開しました。私たちは、データの正確性や品質管理の最高基準を適用しているこのレポートを、10年以上発行し続けています。レポートでは、航空会社と空港の両方の定時運航率をカバーしています。しかし、私たちは毎月レポートを発行・分析しているだけではありません。定時運航率レビューでは、航空会社と空港における1年間の定時運航率を考察し、業界内の最優秀企業を特定するランキングを作成しています。さらに、当社サービスの一つである定時運航率ワークブックでは、リアルタイムで日単位または時間単位の定時運航率に関するデータや分析にアクセスすることができます。これにより、航空会社のベンチマーキングや比較パフォーマンス分析を行うことが可能です。より幅広く捉えれば、Ciriumの定時運航率に関する製品ポートフォリオは、航空会社や空港の運航パフォーマンスにおける傾向を特定・モニタリングする上で必須のツールだと言えるでしょう。
Ciriumの定時運航率データソースは?
Ciriumの定時運航率データは、フライトのリアルタイム情報に関する600を超えるデータソースから収集・キュレートしています。航空会社からのデータだけでなく、空港、GDS、位置データ、民間航空当局またはANSP、独占的データのパートナーシップ、ウェブサイトも含まれています。 重要なのは、Ciriumの定時運航率データは、航空業界に対してバイアスのない見解を持つ、完全に独立した業界エキスパートで構成される定時運航率取締役によって確認されています。
この取締役は、私たちが提供するすべての情報についての正確性と適切な表現を保証する存在です。
10月のレポートでは、アメリカのいくつかの大手航空会社に暗雲が立ち込める状況を解説しました。同国はこれまで、比較的順調に需要が回復していた市場です。最も注目すべきは、アメリカン航空とサウスウエスト航空の高いキャンセル率と低い定時運航率です。これは、1年以上もの間大きく需要が落ち込んだ後に、スケジュールを急遽増やす難しさに直面している状況を示しています。他の航空会社は、フライトの完了率や定時性といった測定基準において、より良好な実績を示しています。一部のケースでは、どれだけのキャパシティを供給するかという点で、控え目な計画を立てていたことが奏功しました。つまり、優先すべきものをはっきりさせなければなりません。回復に向けて収益をできる限り多く獲得するためにキャパシティを積極的に増やすのか、運航上の混乱を最小限に食い止めるために控え目なアプローチを採用するのか、ということです。
最新の定時運航率レポートから明確に読み取れるのは、レジャー客の利用が多い空港を使った運航の難しさです。こうした空港の一部では今、パンデミック前の最高記録を超える輸送量になっています。典型的なのはフロリダです。CiriumのSRS Analyzerによると、ここの空港では、今年10月の国内フライト数が、2019年10月と比べて2%多くなりました。スピリット航空がこの秋につまずいたことは疑いもなく、フロリダ偏重の路線網と関係しています。
世界的に見ると、定時運航率のランキングが上位の空港の多くは、空港のキャパシティを増やすために多額の投資を行った地域に位置しています。定時出発率における世界上位5空港のうち3空港は、いずれも新しい主要空港を最近オープンしたばかりの都市である北京、成都、イスタンブールに位置していました。上位5空港のうち4位のモスクワも、新しい滑走路と空港ターミナルをオープンしていました。この状況からもわかるように、空港インフラの拡張は、遅延とキャンセルを免れ、貴重な時間を節約することにつながるのです。
とはいえ、定時性は乗客のロイヤルティを高めるのか?
時間に追われている一部の旅行者に対しては、定時性は確かにロイヤルティの向上を促します。例えば、仕事上の出張のために東アジアのハブ空港を経由してフライトを乗り継ぐ必要のある旅行者です。現在、世界の空港の中で定時出発率ランキングの第1位になっているのが東京の羽田空港であることも、その点と関係しています。一方、ハワイに向かう乗客は、ハワイアン航空が一貫して定時運航率ランキングの上位に位置していることを知れば、数千ドル規模のチケット購入を決定する可能性が高くなるでしょう。当然ながら、顧客ロイヤルティは、特にクレジットカードやその他の提携関係を通して収益を生む潜在力により、航空業界に大きな価値をもたらします。
定時運航率データが以前にも増して研究・分析されている理由は、他にもあります。環境の持続可能性が航空会社や空港にとってますます重要になる中、フライト路線網のどのエリアが、コストのかかる遅延が発生する傾向があるのかを知ることは有益です。飛行機がゲートが空くのを待っている間、燃料を消費しながら空中を旋回する状況を考えてみてください。環境意識の高い人々は、そういったことも知りたいと思っている可能性があります。スケジュールと乗務員の管理者はもちろん、空港の状況に応じて計画を立てられるように、どの空港が問題を抱えているかを知りたいと思っています。定時運航率データは、機材使用の最適化のためにも重要です。コスト管理のためにも重要です。また、空港の小売業者や機内販売業者にとっても、定時運航率データが重要になる可能性があります。航空会社と空港はいずれも、競合分析の点で定時運航率データが有用であると理解するでしょう。競合相手と比較した自分たち自身のパフォーマンスについて、ベンチマークするためです。
さらに、世界の気象条件がより厳しくなる中で、定時到着・出発率において優秀な記録を達成することは、これまで以上に重要になります。どの航空会社や空港がそれを最もうまくできるでしょうか?ぜひ今後も、Ciriumの業界最高のデータにご注目ください。